第15話 ちゅーる

 吾輩はネコである。

 名前はちび太。



「よーし、ちび太。今週のちゅーるをやるぞー」


 ご主人様のその声に、吾輩は年甲斐もなく走り寄っていった。


 尻尾をふりふり、ご主人様の足にすりすりアタックを何度も敢行する。


 「ちゅーる」とはペット業界で最も有名かつ評価の高い液状キャットフードである。


 吾輩も例にもれず「ちゅーる」が大好きで、ご主人様はそんな吾輩に週に1回ちゅーるをたべさせてくれるのだった。


「お前は本当にちゅーるが好きだな。ふふ、俺が有名になったら毎日でも食わせてやるからな、楽しみにしとけよ!」


 ご主人様の心やさしい言葉はしかし――もう何年も聞かされているお決まりのフレーズなのだった。

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