第9話 ギリシア神話
ガチッと相手の牙が鳴った。ヤバイと思った時には遅くて腹に強い衝撃を感じた。
「バッカだな、使えよ武器!それとも呼べないのか?」
舐めたように言われた言葉にキリリと唇を噛んだ。
「うるさい!お前には関係ないだろう?」
叫んだら腹に力が入って涙が滲んだ。くそ、情けない。
「そっか、武器が使えないハデスってのも情けないな。俺が楽にしてやるよ?」
カチリと構えられた刀、こんな3流下っ端にやられるなんて情けない。悔しくてまた涙が流れた。
「へーぇ、泣いてるハデスってのも珍しいね。」
場に不釣り合いな陽気な声。俺よりも断然高いその声が楽しそうに笑う。
「ポ、セイドン‥?」
痛む傷を抑え振り向くと近くの水溜まりから半分だけ体を出したポセイドンの姿があった。学校帰りなのか水溜まりから出ている服は学生服だ。
「ヤッホー‥あれ?今ピンチ?俺っちもしかして最高にKYなカンジ?」
ハラハラと無邪気に手を振り、それからしまったと顔をしかめた。
「なんだ?キサマは、まさかポセイドンか?」
「YES!はっじめまして!ポセイドンです!どうも家の弟がお世話になりまして。あ、ちょっと待って!KYついでに、」
チャプンと水溜まりに消えたと思ったら巨大な戟と兜を抱えて飛び出した。
「ほいさっ、これ兜ね。直ったからってヘパイストスが。良かったね。」
ニコリと微笑み渡された兜は確かに傷もなくなり新品のように輝いていた。
「さすがは、ヘパイストス。宜しく言っておいてくれ。ポセイドン。」
「ラジャー!」
「キサマら俺を忘れて話を進めるな!?」
キンッと透き通った音がして振り下ろされた相手の刀とポセイドンの鉾とがかちあった。
「あっぶないな、早く兜被れよ。俺忙しいんだからさ。」
「わかってる。」
そういって兜を被る。付け心地はむしろ前より良いと言える。さすが、ヘパイストス。今度あいつが好きなケーキを持って行ってやろう。
「な、何っ!?」
「ん!バッチリみたいだね。じゃ、俺っち帰るから~。バイチャ☆」
何処までもマイペースな奴だ、なんて心の中で独りごちて俺は目の前で見えなくなった俺に怯えているアレスへとナイフを構えた。さぁ、ティタン側へ寝返ったことを後悔させてやるさ。
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