第5話 インカ帝国
砂漠に埋まってしまった小さな真実も捜し当てる。
「私が、犯人?何を言っているの?証拠は?」
カチャッとビラコチャがわざとらしく音をたて眼鏡を直す。嫌だ嫌だ。
「そうやってすぐに結果を欲しがるのは犯罪者‥いや、人間の悪い癖ですよ。それに殺人というのは言わば結果なんですよ。色々な原因がありそしてその結果、殺人が起きた。そういうことです」
何がそういうこと、なんだか。馬鹿な俺にはさっぱりわかんねぇな。
「あなたのこれまでの生き様を見れば、おのずとわかってくるんですよ。」
またか、生き様だけで犯人決めるなよ。インチキやろうめ。
「生き様?ふざけないで!そんなくだらない!」
ごもっともだよな、うん。
「くだらない?あぁ、あなたの人生が、ですか。」
最悪だ、こいつ本当犯人相手だと容赦ないな。
「な、それはどういう意味よ!ふざけないで!」
「犯罪者の人生なんてたかが知れていますよ。」
すっと眼鏡の奥で細められた瞳はきっと冷たい。
「どんなに自分を正当化したところで人を殺したことは正当化できない。」
ビラコチャの言葉がズシンと俺の心に重くのしかかる。殺人は正当化できい。どんな理由でも。
「だから、私はやってないわ!」「嘘ですね。」
ビラコチャの視線が俺を捕える。このヘボ警察!
「いや、あんた以外にこの犯行は無理なんだよ。」
突然口を開いた俺にビラコチャ以外の奴が一斉に目を向ける。快感だね。
「な、何よいきなり!」
「あんた、ヘビースモーカーだろ?」「っ!?」
視線を感じながら俺は推理を展開する。いいねぇ。
「こちらは私の助手のコニラヤです。」
助手ね、最高の気分を一瞬にして最悪にさせるなんてある意味才能だよな。
「隠したって無駄だぜ。あんたの歯、黄色いよな?それって煙草を吸うやつにしか出来ないらしいぜ?」
「だ、だから?」
黒い瞳が泳ぐバレバレだ。
「殺された人喘息持ちで煙草は吸えないんだ。」
ぴくりと肩が揺れる。わかりやすすぎだっての。
「それなのに殺害現場には煙草の匂いが残ってた。窓の下には吸い殻も。」
押さえようとしても納まらない口元。ビラコチャが睨んできやがる。へへ。
「それはあの部屋に煙草を吸う誰かがいたってことだよな?」「‥‥っ」
もうすぐだ、もうすぐこいつは堕ちる。あと少し
「私だけじゃないかも、」
きたきたきたっ!リーチ
「それはない。あの時、雪山で遭難しかけた時に火を持っていたのはあんただけだ。つーかよ、」ヤバイ気持ち良すぎだろ。
「煙草吸ってること認めたな?おねーさん?」
込み上げる笑みを消せなくて思わずニヤリと笑った。最高に気持ち良い。
「そういうわけです。」
横から聞こえた声に高ぶってた気持ちが冷めた。本当、こいつは最高の気分を一瞬にして最悪にしてくれる天才だよ。
「ご苦労様です。コニラヤ?」
「いーえ、別に。」
眼鏡の奥の瞳がゆっくりと弧を描いて細くなる。
「次もよろしくお願いします。まだ、終わらせませんよ。殺人鬼さん?」
まるで三日月のようなその瞳は冷たく熱いそれに捕えられたら最後二度と
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