第20話 か、カワイイ!

学校が終わって俺は急いで家に帰った。今日は仕事でテレビに出るから何時もより早く事務所に行かないといけないだけど1回家に帰ると間に合わなくなるから白音用の服を持ってこうと思ったんだけど忘れちゃって今全力で家まで走ってるところだ。


最悪だ何で今日に限って白音の服を忘れるかなぁ!そんなことを考えながら走っていると何時の間にか家の前まで来ていたみたいだ。家に入ると母さんが起きていた。


「あら?そんなに急いで如何したの?」

「白音の服忘れた!」


俺はそう言って自分の部屋に走って行った。俺の部屋は3階にある。こういう時には3階は最悪だと思う。何時もは良いんだけどな。さて、白音の服は何処に置いたっけな?結構ある筈なのにコスプレが多くて何処にあるか分からない。


「見つけた!」


~着替え中~


「あーよし!これでいいでしょう」


急いでいる時はヘアスプレー面倒くさいですね。ボクもウィッグに変えましょうかね?ってそんなことより早くしないと遅刻してしまいます!因みにボクが喋る前に「あー」って言ってるのは声の波長を合わせる為です。これが無くても帰られますけど念のためです。

ボクが急いで部屋を出て玄関に向かって階段を下りているとリビングからお父さんの声が聞こえてきました。


「さっき白音ちゃんの服がどうのこうのって聞こえたけど如何したんだ?」


げっお父さん!さっきのボクとお母さんの会話聞いていたんですか!?如何しましょう?ボクが如何やって誤魔化そうか考えているとまだ玄関に居たお母さんがボクの方を向いて任せてって目で訴えてきます。取り敢えず任せてみましょうか。


「確かに白音ちゃんの話はしましたけど服なんて言ってませんよ?何言ってるんですか?」


何とお母さんは本当の事を言わず誤魔化しました。まぁちゃんと聞こえてなかったみたいですから問題ないでしょう。ボクは急いでるんでさっさと行きましょうか。お母さん達には一声かけておきますから声を戻しましょう。


「行ってきまーす」

「行ってらっしゃい」

「鈴音は何処に行くんだ?」


ボクはお母さん達の返事を聞き流して走って事務所に向かいました。急いできたので今日は帽子をかぶらずに出てきてしまったので走っていると途中で声を掛けられましたが基本は謝って走って行きます。


「すいませーん!サインください!」


ボクが声を掛けてくれる人に謝りながら走っていると向かいから聞いた事のある声が聞こえて来た。前をよく見てみるとボクが通っている学校の制服でした。ここまで情報が揃えば誰が声を掛けてきたか分かります。まぁ声だけで大体は分かるんですけどね。


「ごめんなさい。急いでいるますので」


ボクはそう言って頭を下げてまた走り出した。暫くすると事務所について其処からは社長自らボクと一緒にテレビに出る声優さんをテレビ局まで送ってくれた。


今回一緒にテレビに出る声優さんは女優さんもやっている渡辺楓わたなべかえでさん。年齢はボクの一個上で16歳。楓ちゃんはボクが男だと知っている数少ない人です。楓ちゃんは声優を始めたのはボクとほぼ同じだけど声優をやる前から女優として活躍していました。


「白音ちゃんと仕事出来て嬉しいな~」


ボクはテレビ局に着くまでアニソンを聞いていたら隣からそう聞こえて来た。最近は楓ちゃんとの仕事は結構多い方だと思うんですが?だから何時もとそんなに変わらないと思いますけどね。


「はい。ボクは楽しいですよ?でも、今日はアフレコスタジオじゃないから緊張します」

「大丈夫だよ。何時ものアフレコと同じだからさ。ただ自分が写ってるかキャラクターが写ってるかの違いだよ」


楓ちゃんは簡単そうにそう言ってきます。楓ちゃんにとっては簡単でもボクにとっては簡単じゃないんですよ……テレビに慣れてる人は良いですね。


そんな会話をしていたらテレビ局に付いていた。ボクと楓ちゃんはすぐに楽屋に行った。ボクと楓ちゃんの楽屋は同じでメイクさんにメイクしてもらう事は初めてだったからここでも少し緊張しちゃいました。そんなボクを見て楓ちゃんは笑っていた。そんなに笑わないでください。


今回ボクたちが出るテレビは声優・アイドルに密着みたいな感じのテレビ番組ですね。楓ちゃんは良いですね。緊張してなさそうでボクは緊張でガチガチです。取り敢えずリラックスしましょう。


「凄いね。気持ちを切り替えただけでもう緊張してないなんて」


楓ちゃんがそう言っていましたがボクには聞こえませんでした。緊張しない為に集中していたからですね。緊張が解れたので次はニッコリ笑顔を作りましょう。


「……か、カワイイ!」

「え?何言ってるんですか?ボクはそんなに可愛くないですよ。中身は男ですから」


ボクが緊張で顔が固くなっていたのを解す為に笑顔をつくって鏡に越しに楓ちゃんを見たら頬を少し赤く染めてそう言ってた。そんなに可愛いですかね?ボクは確認のためもう一度やってみました。う~ん?確かにちょっとカワイイですね。


「ところで白音ちゃんは何で鏡で自分の笑顔確認してるの?」


ボクが何回か笑顔を鏡で確認していると不思議そうに楓ちゃんが聞いてきました。何回かやったのでそろそろ解れたでしょう。ボクは楓ちゃんに向き直って理由を話しました。それを聞いた楓ちゃんは頷いていました。そんなことを話しているとボクたちが呼ばれたので今回収録するスタジオに移動した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る