第19話 聞こえなかっただけでしょ?怒らないでよ

鈴音の姿に着替えて1階に戻ると玄関に両親が帰ってきていた。両親はとても疲れた顔をしていた。それと眠そうだ。急いで着替えて来てよかったよ。


「お疲れ様。今日はもう仕事無いのか?」

「あー鈴音ただいま。今日はもう仕事は無いよ。明日はあるけどな。じゃあ俺らは眠いから寝るから」


そう言って両親は部屋に戻って行った。俺はリビングに入った。リビングには青葉ちゃんしかいなかった。音夏と姉ちゃんは如何したんだろう?


「あれ?姉ちゃんと音夏は?」

「着替えに行ったよ?」


今日は学校だから制服に着替えに行ったんだろう。俺も制服に着替えてきている。でもそろそろ家出ないと遅刻するんだけど大丈夫なのか?


「そろそろ出ないと遅刻するから俺たちだけで先に行っちゃおうか」

「夏奈さんたち待たなくていいの?」


青葉ちゃんが心配そうにそう言った。心配しなくてもあの2人はすぐに追いかけて来るからそんな心配しなくても大丈夫なんだな。


「大丈夫だよ。姉ちゃん達はすぐ追いかけて来るから」


俺はそう言ってリビングを出た。その後に続いて青葉ちゃんも付いてきた。玄関で靴に履き替えていると階段から音がして見てみると音夏が先に下りて来た。


「あー!何でもう玄関に居るの?!」

「音夏達が遅いから先に行こうと思って」


俺がそう言うと音夏は「すぐに行く」と言ってリビングに入って行った。リビングからはずっと「待ってて」って声が聞こえたけど無視して外に出た。家の中からは姉ちゃんの「待って」って声も聞こえたけどその声も無視して学校に青葉ちゃんと2人で向かった。


「待っててばー!」

「待ってって言ったでしょ!」


俺と青葉ちゃんが通学路を歩いていると後ろから少し怒っているような声が聞こえて来た。後ろを振り向くと姉ちゃんと音夏が走って来ていた。


「待ってって言ったのに何で先に行っちゃうの!」

「家出るとき私の声無視したでしょ!」

「してないよ?聞こえなかっただけでしょ?怒らないでよ」


俺がそう言うと2人は諦めた見たでそれ以降何も言わなくなった。その後すぐに音夏と別れて俺たちは3人で学校に向かった。学校に着くと門にクラスメイトが居て青葉ちゃんと一緒に来た事を揶揄われそうになったけど何とか誤魔化した。


「おはよ~」


教室に着くと青葉ちゃんは速攻で自分に机にカバンを置くと仲の良い子の所に行った。俺は自分の机にカバンを置いていると何時も通り中村達が近づいてきていた。


「今日は如何して一条ちゃんと一緒に登校してきたんだ~?」


中村がニヤニヤしながらそう言ってきた。またか面倒くさい。中村と一緒に居た八神と柴森もニヤニヤしていた。こいつらが期待している答えは絶対に出さないぞ。


「登校中に偶々会ったから一緒に来たんだよ」

「ホントか?待ち合わせしたんだろ?正直に言った方が楽になれるぞ?」


何言ってんだこいつは?俺は取り調べを受けてるのか?そんな事無視しようと思ったら青葉ちゃんが星名と一緒に近づいてきた。


「鈴音ちゃんが言った通りだよ登校中にあったんだ」

「な~んだ鈴音が言った事ホントだったんだ」


おい中村!何で俺の言った事は信じないで青葉ちゃんが言ったことは信じるんだよ。俺の事も信じろよ!それから何時も通り話していた。


「う~ん。やっぱり鈴音は白音ちゃんに似てるんだよなぁ」


皆で話していると星名がそう言ってきた。まぁ星名は事務所ですれ違うから余計そう見えるんだろう。バレなければいいけど。その後ずっと星名は俺の事を白音だと疑っていた。何で性別が違うのに疑って来るんだろう?


「そうだ!今度のゴールデンウィーク如何する?何処か遊びに行くか?」


ゴールデンウィークか俺は仕事入ってるんだよなぁ。まぁでも仕事は最初の2日間だけだからな。大丈夫だろう。


「そうだな。姉ちゃんの事務所がキャンプ場貸し切ってキャンプするんだって、そこでキャンプってどう?」

「私もそのキャンプ行くよ。夏奈さんも白音さんも来るんだって!他にも色々な声優とか事務所所属とアイドルとかも来るらしいよ」


星名がそう言った。そういえば社長がそんなことを言ってたかもしれないな。その時適当に聞いてたから覚えてないけど。アイドルとかも来るなら兄ちゃんも行くのかな?


「マジか!ならめっちゃ行きたいんだけど!でも、参加できるのか?俺ら部外者だぜ?鈴音は関係者の家族だからいけるだろうし星名は関係者だからな。でも俺らは……」


中村達が滅茶苦茶落ち込んでしまった。まぁ多分平気だろう。あの社長だしな。それに青葉ちゃんと青樹と雪野さんは連れてく予定だったし。


「大丈夫だよ。姉ちゃんに頼んで連れて行ってもらえる様にするから」

「私からも言っておくから安心して」


俺と星名がそう言うと中村達が目をウルウルさせて俺に近寄って来た。正直気持ち悪かったから止めて欲しい。キャンプはゴールデンウィークの初日からあって俺は初めから参加出来ないんだけどな。


「OK貰ったら連絡するよ。日程はゴールデンウィーク初日から5日間だ。俺は初日は行けないから2日目の途中から参加だ」


俺がそう言うと皆何でって顔をしたから俺は適当な理由で誤魔化した。誤魔化したけど皆俺を疑っている目だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る