第5話 音夏!天才か!

ボクは声優なのに原画作業してるのには理由があるんだけどね。この前のアフレコの途中で暇だから台本に落書きしてたら社長にバレて原画作業をやらされたんだよね。それから原画作業をやってるんだよね。


「白音ちゃんお疲れ様。今日は音夏を事務所に連れてきてくれてありがとね」

「いえ。ボクは社長から連れてきてくれるように言われていましたので」


因みにボクが担当してるのは主人公が居るから適当に描けないんだよね。何でボクがこんな重要なカット描いているんだろうか?これはボクが描いちゃいけないカットだよね。それにボクが声優だからって原画マンさんたちはボクの事を好奇の目で見ないでほしんだけどなぁ。止めて欲しいな。


「ねえねえ。白音ちゃんって描くの早いよね。如何やったら早くなるの?」


ボクがお父さんと話していたらボクの後ろで描いていた女性がボクに聞いてきた。この人はボクが声優になった1年前に入って来た新人さんらしい。それでもこの人は絵が上手くて事務所の平均より早いからボクに聞かなくても十分だと思うんだけどな?


「ボク声優ですけど?それに一条いちじょうさんは十分早いですよ?」

「私は早くないよ!白音ちゃんの方が早いからそれくらい早くなれるようになりたいんだ」


一条さんはボクに向かって夢を語るように言った。まぁ確かにボクより早くないけどボクもあんまり早くないからボクを目標にしない方がいいとおもうけどなぁ。それにボクは声優だから専門外なんだけどな?


「一条ちゃんは事務所内でも早い方だし、うちに所属してる原画マンと白音ちゃんは比べちゃいけないのが暗黙の了解だから」


ボクと一条さんが話していたらお父さんが話に入り込んできた。お父さんが言ったことを聞いて"?"って顔をした。ボクもそう思う。何で?


「何でですか?」

「白音ちゃんは速度が可笑しいからね。一条ちゃんも見てるから分かるでしょ?」

「確かに早いですけど目標にすれば私も早くなるかなと思いまして」

「白音ちゃんを目標にして教えて貰っても描く速度は速くならないよ。絵は上手くなると思うけどね。娘も私たちが教えても上手くならなかったけど白音ちゃんが教えたら上手くなったからね。まぁ息子も教えてるけど」

「そうなんですか!?」


お父さんと一条さんの話をボーっと聞いていたら2人がボクの事を見てきた。ボクに何か用ですか?そういえばまだ原画作業終わってないんだった!早くやらなきゃ。2人がなんか見てくるけど早く終わらせたいから原画作業終わらせますか。


ボクが原画作業を再開するとお父さんが自分の机から椅子を持ってきてボクの邪魔にならない位置に座って一条さんは邪魔にならない様にボクの手元を見てきた。まぁそれくらいじゃあ気は散らないから平気だけど2人して何してるの?


「あの、何ですか?」

「あ、私たちは気にしないで続けてください」


何か知らないけど一条さんが敬語なった。何でかな?まぁ気にしていられないか。それからボクが描かなきゃいけない5カット中2カット終わってて残りの3カットを昼休憩までの2時間で終わらせた。その間の1時間ずっと2人はボクの手元を見てた。って終わった後で隣で作業してた人に教えて貰った。1時間ボクの作業を見た2人は負けてられないって自分の作業に戻って行った。これもお隣さん情報だけど。


「やっと終わりましたー!」

「お疲れ様」

「お疲れ様です」


ボクが原画作業を終わらせるとお姉ちゃんがボクにミルクティーを渡してくれた。何時の間にお姉ちゃんはボクの横に来たんだろうか?気づかなかったんだけど。


「何時からここに居たんですか?」

「1時間くらい前かな?」


因みにお姉ちゃんから聞いたことだけどお父さんと一条さんはお姉ちゃんが来た時に自分の作業に戻って行ったらしい。それまでの2人はお隣さんに聞いたらボクの原画作業をずっと見てたらしい。ボクが原画描いてるところ見て上手くなるかな?それにボクはそんなに上手くないしね。


お姉ちゃんはボクが終わるまでの1時間何やってたんだろう?ボクの原画作業見てたって時間潰せないだろうし。


「ずっと白音が原画描いてるところを見てたよ」

「そんなの見てて面白かったですか?」

「面白かったよ?」


ボクが原画描いてる所なんて面白いのかな?まぁお父さんと一条さんなら分からなくもないんだけどお姉ちゃんは理由が分からない。音夏のところ行ってたってよかったのに。


それからボクとお姉ちゃんは音夏と合流してお昼ご飯を食べに外に出た。因みに音夏は色々な原画マンさんに絵を教えて貰ってた。勿論原画マンさんは原画作業をしながら教えてたんだよね。お母さんは何も教えてなかった。


「お姉ちゃん何時終わったの?原画室に入って来たこと気づかなかったんだけど?」

「1時間くらい前には原画室に居たよ?」

「ボクが思ったより作業しちゃったからあまり案内できませんでした。ごめんなさい音夏」

「大丈夫だよ。色々な人から絵を教えて貰って楽しかったからね」


良かった。原画作業を途中で止めて事務所の案内をしようと思ったけど集中してやってたら3カット終わっちゃったんだよね。因みにボクたちが今居る所は事務所近くのファミレスだ。


「ボクはこの後ラジオに出るのですがお姉ちゃんは如何しますか?」

「私もこの後アフレコあるかな?今日はそれが最後だけど」


料理を待ってる間にお姉ちゃんとこの後の事を話してたら話終わる前に料理が運ばれてきた。ボクが選んだのはハンバーグでお姉ちゃんと音夏はステーキ頼んでた。しかも結構高い奴を。ボクは払いませんよ。


「なら、先に帰っててください。ボクはその後にアフレコが少しありますから」

「分かった」


1時間くらい喋りながらゆっくり食べて事務所の戻った。それからすぐにボクは事務所内のスタジオで今やっているアニメの主要キャラの声優さんたちと合流した。その中には愛華さんも居た。ラジオの収録が終わったら今度は残っていたアフレコをして家に帰った。


「ただいま~」

「お帰り~」


ボクがリビングに行くとお姉ちゃんが寛いでいて音夏が夕ご飯を作っていた。それからボクも今日は疲れたからそのまま寛ごうとしてたらお兄ちゃんが帰って来た。


「何でお兄ちゃんが!?」

「やっば!如何する?着替えに行けないよ!」


まさかお兄ちゃんが帰ってくるとは思わなかったから着替えずにリビングに来てしまった。如何しよう!お姉ちゃんが焦ってバレない様にしようと考えてるけどもう間に合わない!


「じゃあ白音お姉ちゃんはお姉ちゃんが連れてきてお泊りって事にして鈴音お兄ちゃんは今日は友達の家に泊まりに行ってるって事にしよう!」

「流石音夏!天才か!それでいこう白音!」


ボクは頷いて肯定しているとお兄ちゃんがリビングに入って来ました。白音はお兄ちゃんとは会ったことない筈だから間違えない様にしないと。間違えるとバレるからね!


「ただいま。ってあれ?その子声優の白音ちゃん?」

「そうだけどお兄ちゃん知ってるの?」


お兄ちゃんが入って来てボクに気づくとそう言ってきた。お姉ちゃんが以外そうに聞くと頷いてくる。まさかボクの事知ってるとは思わなかった。


「あ、そうだ白音は初めてだよね。この人は私と音夏のお兄ちゃんで奈音って言うの。アイドルやってるから聞いたことあるんじゃない?」


お姉ちゃんの紹介に合わせてお兄ちゃんは会釈した。白音とお兄ちゃんは初対面だからお姉ちゃんが気を利かせて紹介してくれた。助け船出してくれて助かった。如何すればいいか分からなかったからね。それにこの流れだとお姉ちゃんにボクの紹介もしれくれるしね!


「はい。聞いたことはあります。ボクはあまりテレビ見ないですけど」

「で、この子は私の友達で仕事仲間の琥珀白音ちゃん。まぁ知ってるみたいだけど」


ボクもお兄ちゃんがやったように会釈した。お兄ちゃんはボクを知ってた理由を話してくれた。如何やら最近見たアニメの声優がボクで調べたらイベントの司会してた写真を見つけたんだって。


「今日は私が誘ってお泊り会することになったの。因みに鈴音は友達の家で泊まるって連絡来たよ」

「そっか」


お姉ちゃんの説明を聞いて納得したお兄ちゃんは自分の部屋に戻って行った。音夏は一言も喋らなかったね。お兄ちゃんがリビングから出て行ったらボクたち3人は溜息を吐いた。


「危なかったぁ」

「バレる所だったね」

「音夏の御陰でバレませんでした。天才ですね」


ボクがそう言うと嬉しそうに笑った。

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