第2話 家族

「う~んやっぱりどの服が良いかなんて分からないですよ。お姉ちゃんに決めてもらいましょう」


ボクはそう言いながら周りを見渡して一緒に来た筈のお姉ちゃんを探してみたけど居なかった。おかしいな~?さっきまでボクの近くで服を見てたんだけどなぁ。


「何処行ったんでしょう?」

「何探してるの?」


ボクが呟いた声に聴いたことがある声で返事が返って来た。振り返ったら予想通りの人が立っていた。


「お姉ちゃん何処に行ってたのですか?」

「え?すぐ近くにいたけど?それより何か用?」


ボクが聞いた事は適当に答えて流されてボクがお姉ちゃんを探してた事が分かったのか探してた理由を聞いてきた。まぁ探す手間が省けたと思って答えようか。


「ボクは服のことはやっぱり分からないのでお姉ちゃんに選んでもらえないかなって思いまして」

「えー!折角連れてきてあげたのにー!」

「ボクは連れて行ってなんて頼んでないんですけど。それに連れてきたんじゃなくて引っ張って来たんじゃないですか!」


ボクがそう言ってお姉ちゃんに向かって指を差すとお姉ちゃんは目を泳がせた。何でボクをここに連れて来たんだよ。


「まぁ連れて来た理由は家で話すよ。それに鈴音……今は白音だったね」

「わざとやってるでしょお姉ちゃん」


ボクがそう言うとお姉ちゃんは「あはは」と笑った。反省するつもりはないみたいだね。反省してよ!ボクが鈴音だってことがバレちゃうじゃん!女装してるときは本名で呼ばないでよ。これは家に帰ったらちゃんと言っとかないといけないかな。


ボクは声優になる時にバレない様に名前を考えたんだけどそれが白音。何故白音って名前なのか。それはボクの本名が白亜鈴音はくあれいねでそこから苗字から"白"、名前から"音"を取って白音しろねにしたんだ。因みに白音の時の苗字も考えたんだ。だからボクが声優の時のフルネームは琥珀白音こはくしろね


別にお姉ちゃんと苗字が同じでもよかったけど念には念を入れて苗字まで考えることにしたんだ。苗字が琥珀の理由は本名にはくが入ってるから"はく"の付いてる色を苗字にしたんだ。


ボクたち周りにいた人たちはボクとお姉ちゃんの会話を聞いていた声優だということに気が付いたみたい。


「最初から気が付いてたと思うけどねー」


お姉ちゃんがなんか言ってたけど分からなかった。それからお姉ちゃんにボクが女装の時に着る服を選んでもらって家に帰った。家に帰ってからボクはすぐに着替えようとしたけどお姉ちゃんに止められて何故かさっき買った服を着せられた。ボクは早く男の姿に戻りたかったのに……


「う~ん。いまいち似合わないな~やっぱりボーイッシュの方が似合うのかなぁ」


ボクはそんな事言われても嬉しくないんだけどなぁ。ボクがお姉ちゃんに着せられた服はワンピースでボクはあまりスカートとか来たくないからボーイッシュの方が似合ってるのは嬉しいかな。


「仕方ないそのワンピースは私が着るかぁ。ボーイッシュの服一緒に買っといてよかったね」

「女装の服なんて今あるやつだけで充分ですよ」


ボクがそう言ったらお姉ちゃんが反応した。取りあえず早く着替えようかな。部屋に戻ろっと。


「何処に行くの白音!」

「え?着替えに部屋に戻ろうと思いまして」

「何言ってるの!そんな事してる暇なんてないんだよ!それに白音の服は少ないじゃない!今あるレディース服だけじゃ足りないの!」


なんかお姉ちゃんが熱くなってるんだけど取りあえずバレない様に着替えて来ようかな?ボクが静かにリビングから出たけどお姉ちゃんは全然気づかないかった。部屋に付いたら速攻で着替えて鈴音になった。



今メガネはかけてない。流石に家でまで掛けたくない。まぁ両親と兄ちゃんには絶対にバレない様にしないといけないけどな。俺はバレたくない。着替えてリビングに戻ると姉ちゃんが俺の事を睨み付けていた。あ~俺が居なくなった事は気づくか。


「鈴音~?何で私が話してる時に着替えに行くのかなぁ?」

「俺を睨み付けないでくれないですか?」

「だ~め」


俺がお願いしたらいい笑顔で返された。そんなに怒らないでよ。それから俺は姉ちゃんにとても怒られた。それから暫くして両親が帰って来た。因みに両親は仕事に行ってたみたい。


因みに今日は日曜日。なのに両親が仕事してるかというと両方ともアニメータだからだ。何か急いで終わらせないといけない事があったみたい。そしてすぐに妹の音夏おとかが帰って来た。


「ただいま~。あれ?お父さんもお母さんも思ったより早かったね」

「ああ、予想以上に早く終わったからな」

「そうね。頑張ったわ」


因みに姉ちゃんは音夏を声優にしようとしてるみたい。この前偶々聞いちゃったんだよな。俺的にはスタジオで会うことがあるとバレるかもしれないから止めてほしいんだけど。それじゃなくても最近疑われてるんだからさ。


奈音なおとお兄ちゃんは?」

「今日は遅くなるってよ兄ちゃんが言ってたぞ」


音夏が言ってる奈音お兄ちゃんとは俺たちの兄ちゃんだ。兄ちゃんは今年俺と姉ちゃんが通っている高校を卒業して近くの大学に進学したんだ。だから兄ちゃんは18歳だ。序でに姉ちゃんは俺が通っている高校の3年生。だから17歳。妹の音夏は俺たちが卒業した中学の3年生。だから14歳。一応俺は高校1年生。15歳だ。


兄ちゃんの説明に戻るけど兄ちゃんはアイドルをやっているんだ。まぁ相当イケメンだし、しかも爽やか系でバスケ部だからめっちゃモテるんだよ。しかも俺と違って身長高いんだよ!俺は女顔で身長も15歳男子にしては低いんだよ。女子と同じくらいから少し低いくらいなんだよ。何で兄弟でこんなにも違うんだろう?俺肩幅も狭いから女子から女の子が男装してるみたいって言われたことがあるんだよ。だから伊達メガネしてるんだから。


「鈴音お兄ちゃん絵教えて」

「何で母さんたちじゃなくて俺なんだよ。本業の人たちに教えて貰えよ」

「えーだってお母さんたちの説明が感覚的過ぎて分からないんだもん!」


音夏は度々俺に絵を教えてと言って来る事があるんだよな。本業の母さんたちじゃなくて。まぁ確かに母さんたちは天才肌だから感覚と直感で描いてるから教えられないんだよなぁ。まぁ俺は両親の感覚的な教え方で覚えたんだけどね。まぁ殆ど我流みたいなもんだろ。俺も大体感覚的な教え方だけど母さんたちと何が違うのだろうか?そもそも兄ちゃんと姉ちゃんは絵描けないし。俺がやるしかないのか。音夏が何で絵を描きたいのか分からないんだけどね。


「分かったよ。風呂入った後でな」

「じゃあ一緒に入ろ!」


俺が風呂に入ろうとした時に音夏がそう言ってきた。まぁ何時もの事だから気にならないけど最初の時はとても驚いたし動揺した。どうせ俺の事を揶揄ってるんだろうけどな。俺の反応を見て楽しんでるだろう。俺には分かるんだよ。


「またか。何言ってんだ一緒に入るわけないだろ」

「えー」


俺が呆れて言うと音夏はとても残念そうに言った。そんなに演技して残念そうに言っても俺は絶対に一緒に入らないぞ?それに俺が「じゃあ一緒に入ろう」って言ってたら如何するつもりだったんだ?流石に俺と一緒に入りたくないだろうし。それから1人で風呂に入ってから着替えるた後に鏡で自分の姿を見てみた。


「やっぱり俺って女っぽいなぁ」


俺の前にある鏡は黒髪に白音の時と同じ髪型だ。まぁ白音の姿は今の姿にヘアカラースプレーを使って茶髪にしてんだ。最初からコスプレ用で持ってたからな。ウィッグだと夏暑いからね。まぁ長髪のコスプレする時はウィッグ使うんだけどね。でも白音はコスプレじゃないからボーイッシュにしないと流石に女装出来ない。


前にこのことを姉ちゃんに言ったら「鈴音のしてるコスプレと女装何が違うの?」って言われた。そりゃあコスプレはキャラの真似だから女子の格好だろうと出来るけど女装はキャラの真似じゃないから流石に恥ずかしい。これも姉ちゃんに言ったら「何言ってるか私には分からないよ」って言われた。


自分の部屋に入ると既に音夏が部屋に来ていた。何で勝手に入ってるんだよ。まぁ何時もの事だから分かってたけどね。何故勝手に入ってくるんだろうか?それよりも俺が気になるのは音夏だから勝手に部屋を漁ってないかなんだけどそこは兄妹だから信じるとしよう。


「あーやっと来た!早速教えて!」

「分かったよ」

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