おまけ:ベースについて

「たかぴー先生! 助けて! メシュガーみたいな音が出ないんです!」

「出ないぞ」

「えっ」

「あの音はそのベースじゃ出ないぞ」

「——ベースにも種類があるんですか?」

「ああいう界隈のジェンティーな音はかけた金額で変わる。金で作った音だな」

「金で音が変わる」

「まあ、そんな安もんじゃ無理ってことだ」

「ひどい! 騙された!」

「騙してなんかねえわい。そのベースが基本中の基本なんだよ」

「なるほど……?」


「それじゃあベースについて教えていくぞ」

「よろしくお願いします」

「世の中ベースと言ったらこれ。エレキベースだな。Bassという言葉は「低音部」を意味するから、文脈次第で何を指すか変わるが、基本バンド音楽でベースって言ったらこいつを指す」

「合唱とかで最低音域をバスっていうけど発音が違うだけでスペリングは同じBassだ」

「ふむふむ」

「そんでこのエレキベース、基本的には弦が4本で調弦は細い方からG、D、A、E、これは音階の英語表記ね。役割としては主にアンサンブルの土台を支える、ドラムと一緒にリズムを担う、などなど」

「はい先生! どうやったらメタルができますか」

「まずは1年間本気で弾け」

「なるほどぉ……」

「お前に貸したのはジャズベースタイプの4弦だ。ベース界のスタンダードの一つだな。ガンダムでいうジム」

「なんでジャズなんですか?」

「商品名なので特に意味はないです。もともとはジャズプレイヤー向けのモデルだったのがいろんなジャンルで使われるようになって、名前だけ残ってる感じ」

「ふむふむ」

「でも今は世界中いろんなメーカーがオリジナリティを競っていて、それぞれ特色がある。エレキ楽器は本体以外にもアンプとかエフェクター、ケーブルとか、いろんな沼があるから気をつけろよ」

「沼」

「沼の底は深い。正直ついていけない」

「沼の底」

「あいつら沼の底で座禅組んでるからな」

「メシュガーのObzenのジャケットみたいな人がいっぱいいるんですか」

「いっぱいいる」

 もちろんそうじゃない方もいます。


「話を戻すと、基本というからには発展系もある。もともとベースの由来になった楽器はオケとかで使われるコントラバスなんだけど、曲によっては最低音が足りなくなることがあって、それに対応するのに5弦コントラバスがあるんだよ。よっしゃ弦増やしたろ、そんなノリかは知らないけど、エレキベースにも5弦、6弦、7弦、8弦ベースなどの『多弦ベース』が生まれたわけだ。最低音側に弦を足して、低い音域に対応するのが基本だが、たまに細い弦を張るやつもある。これもうわかんねぇな!」

「えぇ……」

「一応4弦でも低いチューニングに対応することはできるんだけど、弾き心地やパワー感、フレージングの自由さから5弦ベースがいろんなジャンルで人気だな。ちなみに弦が増えるとそれだけ楽器も重くなる傾向があるぞ」

「ひえぇ」

「あと、楽器の仕組みとして、『パッシブ』と『アクティブ』があることも忘れちゃいけないな」

「新手の用語がまた」

「お前に貸したのがパッシブ。分かりやすくいうと電源が必要なく、音を加工しないナチュラルでアンサンブルに溶け込む音が特徴」

「アクティブには電気が必要なんですか?」

「そう。アクティブには楽器本体にちょっとした機械が入ってて、それを動かすのに電池が必要になる。その分楽器側で多彩な音色が作れるし、パワーもあって主張が激しい音になりがち」

「音を作るっていうのは、楽器本体についてるツマミで操作するんですよね」

「だいたいあってる。基本的にアクティブの楽器にはツマミやスイッチがいっぱい付いていてカッコいい」

「スイッチいっぱいわかる」

「メタルコアとかやるなら5弦のアクティブが一番使われてるんじゃないかな。まあ、4弦にこだわる人もいるから、これじゃなきゃダメってのはほとんどないよ」

「はえー」

「とりあえず練習&練習だ! 1日8時間弾け! 友達は作るな! 楽器と寝ろ!」

「これが高校教師の発言か」

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