【1巻/第四話】四川風、預言者殺人未遂事件 その5
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空が明るみ始めると、スコピュルスにも人間の時間が戻ってくる。自然が文明をほとんど
やがて《
「……《シード》のやつらが見えますが」
「じゃあ、ここらで止めな。今更《アラカワ》の縄張りを荒らす必要もないだろう」
「了解です」
リコとウカが車を降りると、
「こんな平和的なやりとりができるなら、普段からそうすればいいのに」
とリコが
「分かっちゃいないね、小娘は。シマの取り合い、利権の争いなんてのはね、一人の意思でどうにかなるもんじゃない。とうに殺し、殺され、いがみ合っているんだ。近づかない方がまだしも争いは起きないもんだよ」
「……でも、あんただって一緒にサンドイッチを食べてくれたじゃないか。オレは《シード》の身内のようなもんだし、カンナだってもとはそうだろう」
「でも、所詮、ようなもん、だ。本当の《シード》じゃない」
「……」
ヤシギはいたって落ち着いた
「いいかい、小娘。勘違いしているようだから、老婆心ながら言ってやろう。うまいものを食べて、うまいと思う、それは人間の本能だ。あたしたちが皆人間である以上、確かにその点は同じだろうさ。でもね、それでもあたしたちは裸のまま、飯を食って喜んでいられるような生き物じゃない。いろんなものを背負って、
「……そんな面倒なもの、脱ぎ捨てればいいじゃんか」
「脱ぎ捨てれば、そこには何も残らなくてもかい」
「……」
「《フェザ》の人間が
「……」
「魂が一度着込んだものを、人間はそう簡単に脱げないんだ。それはきっと、あんたも同じさ。自分が気付いていないだけでね」
それから窓がゆっくりと閉まると、リムジンは走り去った。リコはビルの谷間に消えるその車を、ただじっと見つめることしかできない。
「……リコちゃん、帰ろっか」
「ああ……」
ウカがそっと手を摑むと、リコはその手を握り返し、二人は静かに歩き始めた。
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