荒野で襲われる皇女 下

 セナスティが振り返った先には、大きく吹き上げているローレンの血と赤く染まり始めた体が、なんの抵抗も無く地面に倒れ込む姿であり、ローレンの首がどこにあるのかはわからない、すでに土煙に隠れ始めている体が、小さく、小さくなってゆく…そして…。


 一団がセナスティに近づき、馬の蹄が土を蹴り上げる猛々しい音が聞こえてくる。

 数は減ってはいない。

 セナスティは身を屈め…、森は…目指す森は…まだまだ先にある。


 …もう少し、頑張って……。


 馬の息も限界のようであると思った瞬間に、馬が立ち上がって走るのを辞め、その瞬間に投げ出されたセナスティは、土に叩きつけられ、土の上を転がり、小さな土と土煙を吸い込み、そして、肺を圧迫された痛みに、体の中にある酸素と吸い込んだ土らが、一気に口から出て来たような痛さと息苦しさで咳き込み、怠く苦痛な状況の体が仰向けで無防備に空を仰いだ。

 太陽が空に小さく見え、もう既に動かない体は反応が無い……。


 通り過ぎて行く馬の蹄の音、向かってくる蹄の音が遠くに感じる…。

 意識は失ってはいけない…でも、体が動かない、言う事を効かない…。

 かすかに擦り切れていると思われる頬が、ひりひりする感覚があり、足も痛いし手も胸も背中も…神経はやられてはいない…。

 少し休めば動けるが、動く気力が無い…。


 もう…終わりなの?


 蹄の音がセナスティの周りを歩み始め、その音は、金属が重なり合う音も交えて聞こえてきており、目を開けなくても状況が分かった。

 言葉は聞こえないが、仰向けで寝転がっているセナスティを、見下ろしているのはわかる…そして…。


 声が聞こえる…こえ…。

 声は…遠くに……。



 どの位眠っていたのであろう。

 セナスティは、体に残っている打ち身の痛さに目を開けると、そこはテントであり、聞こえてくるのは、笑い声を伴った陽気な声であった。


 時間は…夕暮れであろうか…、夜であろうか…。


 宵闇が近付いている雰囲気がセナスティにも分かり、痛さに声が出るが、我慢をして体を起こし、テントの外を見ると、焚火を囲んでいる数人の姿が見えた。


 その数は……5人。

 そして…。


 酒でも飲んでいるのか、上機嫌な笑い声をあげているのが見え、背中を見せている者は、どういう者かはわからないが、焚き火の向うにいる者は、口いっぱいに蓄えた髭の男で、その顔の半分には大きなアザがあり、その隣には、少しばかり若く見える男がいて…、横顔しか見えない男は、無精髭に耳が半分無い…のではなく、耳が無く、耳の穴があるだけの男…。

 そして…。


 焚火の向こうに座っていた少しばかり若い男が、セナスティの行動に気付いたのか、こちらを見て何かを言い、その言葉に背中を見せていた男2人がこちらを見た。

 その男らは、眉が細く、口につまようじを銜えた男と、もう一人の男の顔には…、左の目を黒い布で覆っていて、顔に無数の傷のある男であった。


 顔に無数の傷のある男は、セナスティを見ると、ニンマリとした表情でコップの酒を口いっぱいに含み、音を立てて飲み込むと立ち上がった。

 彼は鎧を着ていなく、布の服を着ているだけの簡単な格好である。


 ほかの者も同じような格好であり、脱いだ鎧は辺りに散らばっていた。

 そして…。

 ほかにも散らばっている…のではない…。


 セナスティは、彼らの後方にある木に何かがある事がわかり、視線を移すと、そこには、真っ裸で足から逆さに吊るされている男たちの姿があり、その姿は…。


 左の目を黒い布で覆っていて、顔に無数の傷のある男、ダーレインは、焚火を囲んでいる者達に小さく愛嬌をみせると、ズボンを上げながらセナスティに近づいて来た。

 「殿…捜しましたよ」

 ニンマリとした笑みを見せている。

 小さく後退をするセナスティを、うっとりとした表情でみながら近づくダーレインは、テントの入り口へと腰を落とした。


 「エールでもいかがですか?」

 「わたしは…」

 「えぇ~、助けましたよ…。殿を捕えようとは…。」

 振り返り、吊るされている男たちの遺体を見るダーレインは、ゆっくりセナスティへと視線を移した。


 「わたしを助けたのですか?」

 「えぇ~そうです…。そうですよ…殿…、あそこに吊るしているのが、あなたを襲った不届き者ですよ…。」

 「そうですか…あり…」

 セナスティは辺りを見渡すと、着ていた外套が脱がされ、テントの隅に置かれていたのに気付き、胸元へと手を持ってきて、服が乱れていないかを確認した。


 「気を失い、苦しそうでしたから、重いマントは脱がせてもらいました…あぁ~、大丈夫です。何もしてません………」

 「え?」

 「ふふふ…」

 にんまりとした笑みを見せながらダーレインがテントへと入り、その動きに同調するように後退を始めるセナスティ…。


 「殺すのは惜しいですね。寝ていた時に事をしていてもよかったけど…皇女がどういう仕草をするのかが!」と覆いかぶさったダーレイン。

 そのダーレインにむかい声を上げるセナスティ。

 「やめて!わたしは皇女です!こんなこと」

 「えぇ~、何日か前まではね。今は、ただの…そして…死刑囚です…。死ぬ前に女の喜びを味わっておいた方が」

 胸を押さえている腕をとるが、セナスティは抵抗をする。


 何度も抵抗をするセナスティの頬を叩くと、倒れるように横になった。

 そのセナスティの胸元に手を当て、荒々しく服と下着を破り捨てたダーレインの前には、形のいい胸がさらけ出され、小さな乳首が恥かしいようにピンク色を伴ってそこにあった。

 その乳首を見たダーレインは、ニンマリとした笑みを見せる。

 片腕で胸を隠す格好になったセナスティは、目の端に涙を見せながらダーレインの視線から逃れていた。


 なすがままにさせるセナスティは、強く目を閉じ、唇を強く結んだ。


 ピンク色の乳首へ口を当て、舌で転がし…、そして、吸い付くダーレインのいきり立ったモノが、セナスティの太ももを感じると同時に小さく腰を押し付けて、いきり立ったモノを、太ももに押し当てながら強く乳首を吸うと、セナスティはイヤながらも吐息を発し、その吐息が可愛かったのか、ダーレインはニンマリと笑みを見せ、後ろで鑑賞していると思われる仲間へと視線を移す……。


 と……。

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