第15話 選択をする予知 上

 ミュムの屋敷で宴を催してもらう。


 ミュムに、ロス、コウレナ…。

 赤鬼のメルディスに青鬼のフェレスト、黄鬼のポワレアに白鬼のロジアン。

 紫鬼は姿が見えなかった…。

 ほかに精霊の森の長、エルフのラローネと巨大なゴブリンのデアンタ。

 ライカンのフラロにオークのイィ・ドゥ、ゲラチェア。

 そこにアサトらが入っての宴会となった。


 ミュムの隣にアサトが座り、その隣にクラウト、システィナが座る。

 ミュムの隣にロス、コウレナが座り、向かい合った席には、ロジアンとフェレスト、タイロンとアリッサ、ジェンスが座って、その隣には…。


 …まぁ~いいか……。


 長いテーブルに見合う形で座ったミュムの民とアサトら一行は、目の前にある食べ物を食べ、飲み…会話をして、ひと時を過ごしていた。


 「そう言えば…紫の人がいると聞きましたが…」

 アサトの言葉にミュムはロジアンを見た。


 …なんだろう…。


 「彼は…『ジア・ドゥ』を追っている……」

 ミュムが小さく言葉にした。


 その内容は…。


 『ジア・ドゥ』は、ルヘルム地方から来たようである。

 幻獣『リベル』のお供をしていたと言う話であり、知性があり、言葉も話すと言う事である。


 『オークプリンス』の一団にいたが、彼らが村々を襲っている内に『オークプリンス』が討伐され、やむなく『リベル』と同行をしたようであり、『リベル』が消えた後、ルヘルム地方で仲間達と居城を組もうとした時に奴隷狩りにあい、兄弟を無くしたようであった。


 悲痛に打ち出された彼は、なんらかの作用がある秘宝を口にしたようで、その秘宝とは…『ハルクの涙』と言う、古の秘宝と言われる薬のようであり、怒りや憎しみを体全体で表す事が出来るようで、体型も性格も変わり、獰猛で強靭な肉体を持つ者に変化したようである。


 その薬をどこで手にしたのかはわからないし、この話が真実なのかもわからない…と言う事であった。


 話は続く…。

 黒鉄くろがね山脈を単身で越えた『ジア・ドゥ』は、自らをマモノを解放する者と言い、多くのマモノが住む村を訪れては、仲間を募っているようである。

 現在、『ジア・ドゥ』の勢力は、10000になるとおもわれると言っている。


 紫鬼が、その動向を探っているようで、このルフェルス地方を縦断しているような話であり、今は東を進軍し、彼が目指しているのは王都であるようだと言う事であった。

 ただ、その中には、そのような容姿の者の存在は確認されていなく、紫鬼の報告だと、『ジア・ドゥ』の軍と軍が進行しているとの報告であり、いまだに『ジア・ドゥ』の存在自体を確認できていないと言う事である。


 国王軍は100000以上はいるが、体力と精神力には差があり、国王軍の勝機は無いのではないかと言う事である。

 彼らは、解放軍の名を名乗って進行しているようで、いずれ王都では、大きな戦になると思われる。


 そこで…。


 ロジアンがアサトに訊いた言葉がでたのであった…。

 「君たちは、王都へは行くのか?」


 ロスの予言では、ドラゴンが多くの者を焼き殺す風景をみたそうである。

 それが、どの街なのかはわからない。

 一番近くの街、『アルフェルス』なのか…それとも、大陸のヘソと言われる街『エルフェルス』…、一番東の街『オルフェルス』…、そして…王都『キングス・ルフェルス』なのか…。

 多くの者を焼き殺す風景は、『ジア・ドゥ』の勢力なのか、それとも国王軍なのか……。


 ロス自体、鬼の村とこの街以外に行った事が無いので、はっきりは分からないが、彼女がみた風景は、高い壁の外にいる者らが焼かれる…、と言う事だけのようであり、街の上を飛ぶドラゴンの姿が、門の外へと出ると……。


 そのドラゴンが、セラの召喚したドラゴンとは限らないが、確認をしたいとの事であった。

 「僕らは行きません。行ってみたいけど…行けるような状況ではないようなので…」

 アサトは答えてクラウトを見ると、その答えに満足したのか、大きく頷いて見せ、その言葉にため息をつくロジアン、しかし…ロスはセラを見ていた。

 ケイティと一緒に、口の中に食べ物を頬張っている姿は、確かに……。


 その後、アサトらの話しを訊いて来たミュムらだったが、クラウトがうまくごまかしながらここまでの経緯を話していた。

 説明しても分からない所は沢山あると思う。

 白血病や『ファンタスティックシティ』、そして…、クレアシアンに『アブスゲルグ』、帰還のオーブ、『オークプリンス』等々…。


 考えて見れば、人に大きな声で言えるようなことは、何一つしていないような気がしており、『ギガ・グール』を討伐したくらい?かな…。

 ギルドの教育の事を話していると、ミュムらも感心していた。

 この街でも戦闘の訓練をしているが、そこまでであって、それ以降は、一緒に戦う的な感じであるようだ。


 一人一人の能力を付ける為には、強い者が傍にいてはいけないのでないか…、また、補佐するような戦闘訓練の方が良いのではないかと言う事であり、ミュムもこの話には納得をしているようで、鬼たちに戦闘の訓練の方法を考えるようにと話をしている。

 その為には、アサトらから詳しく聞く事と付け加えていた。


 …ってか、クラウトさんなんだけど……。


 しばらく飲み食いをしていると、アサトの傍にロスがきて、その動きを見ているミュムは瞳を細めて見ている。

 黙ってアサトの瞳を覗くロスは、アサトの手を握った。


 「わたしは…予知をする巫女の一族に生まれたけど、それは確実に当たる事ではないのです…、だから…はっきりは言えないけど…」

 「ロスは予知しているんじゃないんだ…、選択をしているんだと思う…」

 ミュムが小さく言葉にした。


 「選択?」

 「そう…こうなると言うのは見ないけど、こ…」

 「いえ…今回ははっきり見えた…。あなたの瞳に見えた…。」

 じっと見つめる瞳に吸い込まれるような感覚が走るアサトは、目をどこに置けばいいのかがわからない、ただ…、ロスは見ている。

 瞳ではない…瞳の奥の…なにかを…。


 「近い未来と…そんなに遠くない未来…全部は、鮮明に見れないけど…あなたは選択をしなければならない時が来る…、それまでに多くの選択をするけど…。雪…の中で…あなたは、で、選択しなければならない時が来る…」

 「雪?」

 「そう…それがどこかはわからない…、炎が見え、氷が見える…、炎を見ているあなたは…選択をし、選択を要求する…」

 「炎…」

 「そう……それは…、あなたがの大きさ……」

 「強さ…」

 ミュムがアサトを見ており、クラウトも…そして、タイロンにアリッサ…システィナも…。


 「それ以降は…見えない…。それ以降は…普遍的な未来が入れ替わっている…。それは…あなたの未来ではないから…。」

 「どう言う事?」

 「たぶん…選択の結果で未来が変わると言う事だと思う…」

 ミュムが小さく言葉にし、カップの飲み物を口に含んだ。

 ロスは手を離すとアサトへ小さな笑みを見せる。


 「でも…近い未来、あなたは最良の選択をするわ…それは…。多くを救う選択を…」

 言葉を残したロスは、席へと戻った。


 奇妙な感覚の中で、席に就くロスを見ていたアサトの姿があった……。

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