第13話 獣神を纏う『ミュム』との遭遇 上
「ほほほ…ひどくやられたな。メルディス。」
青白い肌に小さな角が4つ頭にある老人が、馬車の荷台に座っている赤い肌と4つの角を持つ男に言葉をかけた。
「けっ、負けた訳じゃねぇ~、ただ、弱いのが徒党を組んだだけだ…それに…」
「ドラゴンは、予想外だったな…」
黄色い肌に角を3っつ持つ男が声をかける。
「まぁ~、でも…ロスが言うのは確かかもな…」
老人の言葉に怪訝そうな表情を見せたメルディス。
「そうか?主の危機が迫っているって…ことか?」
「あぁ~、一人一人は弱い…確かに…弱いが。ドラゴンがなぁ~」
「そうだな…でも、姫は、ドラゴンが街の上空を飛び、炎を吐いて多くの者を焼くと言っていたぞ。」
「マチって言うのが、俺たちの住む『ミュムの街』かはわからないが…。ただはっきり言えるのは、ドラゴンは現れたと言う事。ロスの言う事は満更でもない」
「そういうもんか?」
メルディスが上着を羽織りながら言葉にした。
「まぁ~、お前であれだけだからな…主にとっては、小指で始末できる強さだよ、あれは…ははははは…」
黄色の肌の男が大きく笑い声をあげた。
彼らの乗った馬車の先には、ほんのりと明るい街が見えていた。
『ミュム』の街は、人口が1000人程の街である。
この街を収めているのが、『ミュム』と言う人物で、得体がしれないと言う事であり、一説によると、体内に獣神を宿しているとも言われる。
この者が収める街には、人間族やマモノらが共存しているようで、ほとんどが『ミュム』の加護にあったようである。
例えば…ゴブリンは、『ミュム』が接したマモノの初めての種族であるようだ。
ライカンに村が襲われ、そのライカンの長を討伐したのが『ミュム』のようであり、その後、襲われたゴブリンの村に住み、また、ライカンの残党を面倒を見ることにしたようだ。
これが、この街の初期と言う事である。
その後、この街にいる『ミュム』を、討伐に来たオーガのイィ・ドゥの一団を殲滅し、残った者らを仲間にしたようで、これが、今馬車に乗っているモノらしく、その討伐もなにかの間違いだったらしい…。
王都の状況から逃れた者ら…、人間族の者も含むが、その者らを最近は保護しているようである。
なんの目的で行っているのかは分からないが…。
先日の戦は…。
この『ミュム』の村に押し寄せて来た国王軍が、マモノ主体の解放軍と接触があり、状況を見ていた『ミュム』の戦闘隊が、国王軍と一戦を交えたようだが、解放軍と国王軍がすでに混戦状態であったため、戦況も国王軍が有利とみた『ミュム』は、己の力を使い、同軍を一気に殲滅したようである…。
『ミュム』に住んでいると言うゴブリンのイィ・ドゥが、アサトらへ語っていた。
彼の話である。
このイィ・ドゥは、近くの村から食料を交換して来た帰りのようで、赤鬼と言われる、『ミュム』の戦闘部員と戦っているアサトらを見ていたと言う。
彼と互角に戦っているアサトらと一緒に居れば、夜は大丈夫と思ったようで、彼の他にもオークのイィ・ドゥが2人、護衛で付いていた。
この地域も最近では奴隷狩りが横行していて、『ミュム』の住民も被害にあっているようだったが、そもそもアサトらを奴隷狩りとは思わなかったのは、セラの姿だったようであり、共に『赤鬼』と戦っていた光景は、とても奴隷狩りには見えず、また、何かの使命をもった者らに見えたようだ…。
…使命って…まぁ~ない訳では無いが…。
『赤鬼』と戦った場所で、今夜は休む事にした。
馬車を少し森の中に入れて、馬車から天幕を木々らへと張り、焚火をたいて、夕食の準備をしていると、一緒に泊めてもらうお礼に、肉と野菜を少しだけ分けてもらった。
…ありがたい…。
夜が更ける頃には、イモゴリラを召喚して見張りに立たせると、イィ・ドゥらはイモゴリラが初めてなのだろう…しきりに見ていた。
イィ・ドゥらの話しは続く…。
『赤鬼』以外にも、『青鬼』と『黄鬼』、そして、『紫鬼』に『白鬼』がいるようだ。
彼らは、オーガと人間の合いの子…だけでなく、オーガを母に持つ、他種族の合いの子のようであり、『赤鬼』は、父親が、火の属性のドラゴンの子と自分では言っているようだが、元をただせば、人間を父にもつようである。
赤は…、どうやら特殊な塗料を体に塗っているようだ。
これも『ミュム』の力だと言う。
ほかの者も体に塗っているみたいだ。
現に、『白鬼』は地肌であり、ロスと言う、鬼らの姫も白い肌をしていて、彼女は、以前、鬼らが住んでいた村の姫だったようだ。
その村は、巫女の村と言われ、先祖代々、予知をする巫女が村長をすると言われていたようであり、村長の巫女の娘がロスで、次期村長と言う事であったようだが、この村も奴隷狩りにあったと言われている。
…ただ…。
ほかにも話がある…これは噂だが…。
オークを束ねるモノ、『オークプリンス』がいるように、イィ・ドゥを束ねるモノ、『ジア・ドゥ』なるモノがいると言う。
その『ジア・ドゥ』の一団が鬼らの村を襲い、他種族の街を作っている『ミュム』の噂を聞いた鬼らが、襲ったと思ったという、うわさ話があるみたいだ。
現に…、鬼らの村を襲ったのが『ジア・ドゥ』であるのかは定かではないが、その集団は、確かにマモノの集団であったと言う。鬼たちは多くは語らないが、鬼たちと共に逃げたした者らの話しでは、殺しても死なない…。とても生き物とは思えない集団だったと言う事である。
どう言う仕組みなのかはわからないが、これが『ジア・ドゥ』の能力なのかと思ったと言う事であり、その能力で勢力を広げ、仲間を集っているのではないかと言う事であった。
赤鬼らが、『ミュム』の街を出ているのは、『ジア・ドゥ』と思われるモノを探しているのかもしれない…。と言うのも、『ジア・ドゥ』自体、存在を確認した者がいないからであるようだ……。
『ミュムの屋敷』
長いテーブルに用意された椅子に座る赤鬼のメルディスの隣に、白鬼の老人に青鬼、そして、黄鬼が座しており、その向かいには、体の大きなゴブリンが座り、上半身裸のオークのイィ・ドゥがいて、その傍には、体がきゃしゃで、緑を基調とした服を着たエルフが座り、分厚い毛を纏ったライカンが座った。
「それで…何があったメルディス。火傷なんかして…」
テーブルの上座に人間…、黒く長い髪に幼く女性のような表情をした男が座り、その右端には、白い肌に鮮やかなピンクの髪をして、おでこに小さな角の生えている少女が座り、左には、胸の谷間をさらけ出し、キツイ目をして、おでこに角の生えている女性が座っていた。
「主、どうやらロスの言っている事は本当のようだ」
白鬼が小さな笑みを見せながら言葉にする。
「え?…」
「こいつはドラゴンに焼かれた…」
「ドラゴン…」
ピンクの髪をしている少女が小さく言葉にする。
「…それは、主を危機に陥れ、尚且つ…街を焼くドラゴンをも所有する者らか?」
胸の谷間をさらけ出している女性が声を上げる。
「…まぁ~コウレナ。そんなにいきり立つ事じゃ無いだろう…それに…」
隣のピンクの髪の少女を見る。
「ロスの予知も。この街をドラゴンが焼くとは言っていない」
「ミュムさまぁ~~」
上目使いで見上げるロス…。
ミュムは腕組みをして、少し考えてから、小さく無邪気な笑みを見せる。
「とりあえず…明日、会って見よう!」
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