鬼の襲撃! 下
腹を擦りながらジェンスが現れ、アサトとケイティの間に立ち、剣先をモノへと向け、タイロンも盾を手にしてアサトの脇に立った。
赤いモノは、目の前に並んだタイロン、アサト、ジェンス、そして、ケイティを見ると、突き出していた棒を大きく振り始めて進み出してくる。
最初にタイロンの盾に棒を当てると右回りで回転をして、ケイティへと棒を繰り出すと同時に、アサトが踏み込み、ジェンスが踏み込むが、その間合いを考えているのか、後退しながら太刀と剣を棒で交互に弾く流れから、大きく弾いて、アサトとジェンスの間合いをとると、左周りで棒を回転させてタイロンへと振り出し、タイロンの盾に棒が当たると戻るように回転して、今度は突っ込んできたケイティに、膝を折って姿勢を低くし、棒を振り出して勢いのままにケイティの足を払い、綺麗にケイティが空中で浮いたと同時に、ジェンスの足元まで払った。
2人がシンクロするように浮いている横でアサトが間合いを詰め、その勢いのままに棒がアサトまで来るが、咄嗟に飛んでみせたアサトであったが、モノは素早く棒を回し、アサトが着地する前に振りかぶりだしたところに、タイロンが大剣を突きだして行く、その動きに体を翻しながら後退をするモノに向かって、着地したアサトは、再び間合いを詰めに踏み出し始め、転んでいるジェンスとケイティは、立ち上がると武器を手にしてモノへと進み出した。
突き出しているタイロンの剣を、右に左に体を反らせながら後退をしているモノ。
タイロンの後ろについたアサトは、いつの間にか、目の前にキラキラとした輝きが感じられた。
クラウトの防御の魔法であろう…。
光を纏っているタイロンの背中からモノの隙を探るが、その隙を感じられない。
…ホンと、戦い慣れしている、この人は…。
タイロンの盾に当たる棒の音と共に飛び出すアサト、その瞬間に剣を突き出したタイロン。
後退するモノの傍に進み出したケイティにジェンスの姿が…、モノに集まった。
同時に仕掛けられた攻撃に…。
モノは動く。
タイロンの盾を襲った棒が水平に動き、背中へと進んできたケイティを払うと、ケイティは短剣で防ぐが、腕を棒に叩かれてしまい、モノは棒を大きく振りながら、突っ込んできたアサトの頬を殴り、その勢いのままに、左足を軸に、タイロンの盾に回し蹴りをして見せると、むかって来たジェンスに、膝を折って姿勢を落として棒を突きあげた。
腕を叩かれたケイティは肩から横に転がり、アサトは右側へと転がる。
盾で防いでいるタイロンだが、歯を食いしばり、みぞおちに突き立てられたジェンスは、剣を大きく振りかぶった状態である。
動きが止まった…のではない。
まだ!
転がったケイティは、転がっているままに勢いをつけて立ち上がると短剣を拾い、アサトも一度背中を地面に付けたが、ケイティの動きに、身を起こして太刀を握りなおして進み出し、タイロンも目を開けたが、ジェンスは…気を失っていた。
ジェンスから棒を外したモノのそばで、重い音を立ててジェンスが地面に落ちると、その後方から進むケイティへと棒を繰り出したが、その攻撃を交わしてケイティが間合いを詰め、アサトも傍に来ると、ケイティに繰り出した棒を、アサトへと移動をさせて防がれるが、動きを止めずに、間合いを詰めたケイティに棒を水平に振り、その攻撃も短剣で防がれた瞬間に、勢いをつけて後方へと引くと、背後から迫っていたタイロンの盾を大きく弾いてから、近くにいるアサトへと向けて水平に振り、太刀で防がれると、繰り出された方向へと素早く動き、体を右回転させてケイティへと水平に繰り出した。
大きく飛び込んだケイティの頭上を棒が過ぎ、ほぼ一回転をしてアサトの場所までくるが、再び太刀で防がれた時に、懐に飛び込んだケイティがしゃがみ込み、勢いをつけて、上へと短剣を突き立てながら飛び上がるが、大きく体を反って攻撃を逃れ、その勢いのままに後方回転を一度、二度…三度とやりながら、3人との間合いをとった。
息の上がるアサトとケイティに、しっかりと盾を持ち直したタイロン。
赤いモノは棒を使って、地面に生えている草を払い始めた。
右に払い…、左に払い…。
何をしているのかはわからないが、何度も往復させている。
太刀を向けているアサトに、短剣を前に突き出しているケイティ、盾を持ち上げたタイロン。
後方では、ジェンスの治療を始めたクラウトに、馬車に歯止めをしているアリッサがいて、システィナは険しい表情でいた。
…そして…セラは……。
!
アサトの後方から…いや、頭上を風が通りぬけたと思った瞬間に、真っ黒い毛で覆われ、体長も1メートル50センチはある獣人のような、顔は真っ赤な皮膚で目は青、眉間には赤い召喚石か付いており、頭には金色の輪が付いていて、金色の地色に赤で縁取りされている鎧と小手、膝あてと長い棒を持っているソンゴが現れ、その者へと棒を繰り出し始めた。
棒と棒のぶつかり合い。
お互いが同じように動いている。
ソンゴが棒を短い軌道で振り下ろすと、短い軌道で防ぐモノが、ソンゴの攻撃を弾くと短い軌道で振り下ろし、攻撃を受け止めるソンゴ。
棒を弾くと回転を見せるソンゴに、同じく回転を見せるモノの姿があり、その遠心力を使ったソンゴの攻撃を棒を立てて防ぎ、当たった瞬間にソンゴの棒を大きく上へと弾く、弾かれたソンゴは、棒の先が最高点に達すると勢いをつけて振り下ろし、腰を落として棒を水平にして防ぐモノの姿があった。
両者の戦いに入る隙が無く、アサトらは武器を構えて戦いを見ている。
ソンゴの攻撃は、水平に出された棒に当たると同時に振り上げ、手の中を小さく滑らして棒を落とすと握り直し、大きく振り上げ、その攻撃に仰け反るモノは、後方回転をして間合いをとり、着地と同時に棒を突き出し、棒を交わしたソンゴは、水平に払うと、膝を折り姿勢を縮めると回転をして、同じく水平に棒をソンゴに振り出したが、棒を立てて防いだソンゴは、後方回転で移動して小さく飛んでみせた。
間合いを詰めるように進み出したモノの前に、ソンゴの体がうっすらと消え始めると、消えたソンゴの後方の地面に金色の輪が見え、立ち止まったモノは輪を見入る。
アサトらも輪を見ていると…。
大きな咆哮が輪の中から聞こえ、時間を置かずに、大きな鼻と灰色を纏っているような白く小さな鱗を付けた顔が出てくる。
その姿が輪からゆっくりと出て顔全体を見せると、金色の輪の淵に黒い鍵爪を突き立て、輪をこじ開けるように体を出し始めると、腕に翼がついた白い鱗の爬虫類が現れて、翼を広げながら、地面と空気を揺るがすような咆哮をし、翼を羽ばたかせ始めた。
その風圧に手で目を覆うモノの姿に、同じ状態で見守っているアサトらの姿もあった。
翼を大きく、しっかりと振りながら浮き始めた体は、低空でホバーリングを始める…。
顔にある白い召喚石の中で揺らめく白い炎…。
ホワイトクロウである。
翼を広げた大きさは、ゆうに20メートルはあろう…。
あの時に遭遇した紅きドラゴンと同じ大きさであるように思えた。
その翼からは大きく重い風圧を発して、ホバーリングをしているホワイトクロウは、少しずつ動き、赤いモノを視線に捉えながらアサトらへの前で止まると、大きな音をたてて地面に着地をした。
…声が聞こえる…
「
セラの声である…。
その声に、かぎ爪のついている腕を前にだして、大きく頭をひいて息を吸い込んだホワイトクロウ。
目の前にいた赤いモノは目を大きく見開いて、後方回転を見せ始めると同時に赤と黄色を伴った炎の柱が、赤いモノへと発せられた。
その轟音と熱に、再び目を覆ったアサトらの姿がそこにあり、ひと時吹いた炎が止むと、真っ黒に燃えたまっすぐな線が数十メートル延びていたが、そこには赤いモノの形は無かった…。
辺りをじっくりと見渡しているホワイトクロウ…。
それを見ていた体の白いモノは…小さく口角を上げていた……。
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