第11話 鬼の襲撃! 上
それは…いきなりであった。
「ケイティ!」
馬車上にいたケイティが、大きな音を伴い地面に叩きつけられ、アサトとジェンスはケイティの傍に駆けより、苦悶の表情を浮べているケイティを見てから、頭上で小さな音がしたのに見上げてみると、馬車上から見下ろしている、赤い肌に小さな角が4本生えており、上半身は裸で、大きく開いている裾の半ズボンを履いているモノの姿があった。
「誰ですか、あなたは!」
馬車は止まり、クラウトが飛び降りてきてケイティを治療し始めると、タイロンがアリッサへと手綱を渡してから、馬車を降りて盾を手にして見上げ、手綱を持つアリッサの隣に、システィナが小さく呪文の言葉を唱えながら、アサトらが見ている方向へと視線を向け、セラは黒いロッドを手にして馬車の後方から出て来た。
治療を終えたケイティが立ち上がり、短剣を鞘から抜いた。
「いきなりナニ!」
見上げるケイティ。
赤いモノは、目を細めて小さく息を吐きだすと、馬車から前方宙返りをしながら降りてきて、アサトとジェンス、タイロンにケイティの前に立った。
タイロンが盾を持ち上げると同時に、アサトは太刀を抜き、ジェンスも黒い刃を持つロングソードを抜いた。
細い目で見ている赤いモノが、腰にあるロングソードを抜くと同時に動いて来るのが見え、時間を置かずに金属がぶつかり、鍔迫り合いの形になったアサト、そして、その先にある視線の先はアサトの視線を捉えてあった。
ロングソードに弾かれると、右・左と繰り返される攻撃に太刀を使って合わせるが、重い攻撃ではなく、攻撃の筋から言ってアサトと同じような攻撃であり、身長はアサトより頭2つは大きく、高い位置から振り下ろされる攻撃に対応しているアサトの脇から、タイロンが突進をすると、後方へと退いたそのモノは馬車を背に立った。
いつの間にか馬車から降りていたシスティナが、ゆっくり手をあげて空中に刻印を描くと、高々に手を上げて振り下ろした瞬間に、システィナの頭上から光輝く矢が6本、空気を切り裂く音を伴いながらそのモノへと進み出したが、赤いモノが光の矢を剣で弾くと、矢が砕けて空中に光の破片となって散らばり、6本すべてを砕いたモノは、大きく一歩を踏み出してシスティナへと進み出すが、馬車上から顔を出したアリッサに気付き、小さく驚いた表情を見せて、その場に立ち止まり、周りの状況を見ながら平野方向へと移動を始め、アサトらから距離を取った。
「お前はだれだ!」
剣を突き出して進んだジェンスの攻撃を、ひらりと交わしたモノは、背中を見せているジェンスにむかい、剣を突き立てようとした時に、「おぉりゃぁぁぁ…」とケイティがジェンスの後方から来たのに気付き、2人の側面を通るように交わして間合いをとり、ジェンスに並ぶケイティを見た時に、後方から感じる地面を揺らす感覚と音に振り返り、地響きを伴い進んでくる盾と剣を持っているオークプリンスを確認した。
時間を置かずに前に立ち、剣を振り上げるオークピリンすを見たモノは、瞬時にオークプリンスめがけて飛び込み、前転をして懐にはいると、ロングソードを顎元に突き刺した。
「うっ…」
悲痛な表情を見せるセラ。
アサトとタイロンは、オークプリンスを刺している赤いモノを、ジェンスらと挟む形を作り、クラウトはセラの傍に行くと寄り添いながら馬車裏に移動をし、アリッサは馬車前方から手綱を持って見ており、システィナは馬車上にいるアリッサの傍に立って、赤いモノとの間合いをつめる4人を見ていた。
「ふっ」
小さく笑った赤いモノは、オークプリンスからロングソードを抜くと地面に突き刺し、平原方向へと後退しながら、脇に携えていた棒3本を手にしてつなぎ合わせて、一本の棒にした。
その長さは、180センチくらいであろうか…。
棒を前方で回転をさせると、時間を置かずに動きを速め、その速くなった回転で右側へ移動させ、何度かそこで回転をさせると、前方を通して左に回転させながら移動させ、左側で回転させた動きで、後方を通して右側に移動をした後、頭上へと移動させると数回回転させてから止め、右手で掴むと同時に勢いよく、棒の先をアサトらへと向け、左手をケイティらへと向けた体勢になり、アサトらを見たモノは、小さな笑みを見せながらケイティらへと視線を向けた。
…この人、戦いになれている……。
タイロンの背中に回ったアサトは、小さく弾いて見せると同時にタイロンが突き進む、その動きに瞬時に反応を見せる赤いモノは、タイロンの盾に棒を突き出し、棒が当たった音が聞こえると同時に、脇からアサトが飛び出たが、突きつけた棒を横に払い、アサトの動きと同調するように、アサトの目の前に突き出し、その棒の先端を見たアサトは止まるしかなく、アサトの動きに合わせてジェンスが飛び込むが、アサトを狙った棒は来た方向へと素早く戻り、270度近く回転して、ジェンスの脇を捉え、棒の動きを見ていたケイティが身を屈めてジェンスの脇を通り、赤いモノの懐に入り短剣を突き上げた。
ケイティの攻撃に小さく身を反らせたモノは、何度も突き上げてくるケイティの攻撃に、右足を軸にして左足を上げて、ケイティの腕を蹴り上げると同時に小さく飛び、ケイティの頭を目掛けて回し蹴りを繰り出す。
その動きにケイティは反応を見せて横に倒れ込むと、外した左足をうまく回して地面についた赤いモノへ、今度はタイロンが盾を出して間合いを詰めるが、モノはタイロンの動きを見ているだけであり、盾をちいさく飛ばしたタイロンは、盾の横から飛び出して大剣を突き出したが、瞬時に反応を見せたモノは、その攻撃に対して盾を棒で払うと、再び回し蹴りの体勢に入り、素早く身を回し、タイロンの頭へと蹴りを繰り出そうとしているところに、タイロンの後方からアサトが太刀を突き出して飛び込んだ。
その動きにケリをやめた赤いモノは、小さく横にズレて、タイロンの突きを避けると、棒でアサトの太刀を払った。
太刀の刃が棒に当たるのが分かると同時に、両足をついて太刀を振り始め、何度か棒に当たっていると、今度はモノの後方からケイティが突っ込んできた。
その動きを察知したモノは、ケイティへと向いて、棒を回して対応したのを見たアサトが、モノの後方から太刀を振るが、巧みに体を翻し、アサトの攻撃を防いでみせると、右からアサト、左からケイティの攻撃を、棒を使って巧みに防ぎ、何度か、アサトとケイティの攻撃を棒で防いでいるところに、ジェンスが参入する。
正面にジェンスを捉え、後退しながらアサト、ケイティ、ジェンスの3人の攻撃を対応し始め、アサトの太刀を弾くと、ケイティの攻撃を弾き、一度下がって、1回転してジェンスの攻撃を弾き、アサトの攻撃を弾く…。
ケイティが出した短剣を弾くと回転をして棒を横に振り、アサトへと繰り出すが太刀に当たった瞬間に、大きく繰り出した方向へと回転しながら戻って振りだし、今度はケイティへと棒を振り、短剣に当たった瞬間に、棒を戻しながら一歩回転して後退をすると、大きく棒を振りかぶり、正面にいるジェンスへと振り下ろすが、攻撃を防ぐジェンスの剣に当たった瞬間に、ジェンスのみぞおちに前蹴りをし、蹴られたジェンスは後方へと弾き飛ばされると同時に、アサトが太刀を振る。
それを見ると、棒を腹部の線に合わせて回しながら、自身も回転して後方へと移動をして、再び棒をアサトらへと突き出し、右の手をケイティへ向けた姿勢で、その場にとどまり、アサトとケイティとの間合いをとった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます