魔物を救っている者の名は、『ロイド』 下
「なぜ…チームアサトを探しているんですか?あなたのいとこは…」
「あぁ~、君たちの素性が分からい限り、これだけは、どうしても答えれない…」
ロイドの表情は、目を合わせずに雨の中で気を失っているジェンスを捉えていた。
そのロイドは……。
「王族だから…じゃないですか?」
クラウトの言葉に小さく息を呑んだロイドは、しばらくジェンスを見ていると、小さく俯きながらため息をついてクラウトを見た。
「君が…アサトか?」
「…違います。」
即答をするクラウトに、真剣な表情で見ているロイドの姿を見ていたアサトが、小さく言葉にした。
「僕が…アサトです…」
「え?」
その言葉に目を見開いたロイドはアサトを見た。
「ぷっ…ぎゃはははははは…」
ロイドの表情を見ていたケイティが爆笑を始めると、一同も笑い始めた。
…ってか、そろそろ僕も、威厳ってのがほしいな……。
「でも…、ならこいつは?」
クラウトへ指をさす。
「僕は、チームアサトの参謀、そうだね…。あなたが言っている事は間違いでは無いけど…質問の仕方が間違っていた…。あなたのいとこは、セナスティ皇女ですね?」
大きくため息をついたロイドは小さく笑みを見せた。
「合っていて…、間違っていたか…。これはとんだフェイクだね…。君たちは、この地方で生きて行けるかも…。あぁ~、そうだよ。セナスティだ。俺の…」
「だれ!」
ロイドの言葉を遮ったセラの声が森に響いた。
その言葉に一同が立ち上がり武器を手にする。
しばらくすると、ガサガサと葉が擦れる音が聞こえ、その音は、確かにこちらに向かってくるのもわかり、太刀の柄に手を当てたアサトは、擦れる音のする方向を探すと、ケイティが薪を持って動き始めた…と…。
「おい!こいつ死んでるのか?」
後方から声がしたのに振り返ったアサトと一行。
そこにはジェンスを見下ろす男が3人に、亜人の親子と思われる者が3人、雨の中でこちらを見ていた。
「だれ!」
ケイティが進み出す。
「あぁ~、探しているのはあいつらだ!」
ロイドが焚火に薪をくべながら言葉にした。
「え?」
亜人をつれた3人の男とロイド…でも、彼は…。
「あっ!」
アサトは咄嗟に太刀を抜いてロイドに剣先を向け、その行動に一同がアサトを見た。
「なんで…亜人さんらを連れて歩いてるんですか?説明をしてください!」
太刀の向こうのロイドは、小さくため息をついてから見上げ、剣先の向こうにあるアサトの視線に合わせた。
…この人達は、やっぱり奴隷狩りの人…
「ロイド!」
後方から男らの声と武器を手にする音が聞こえ、タイロンが大剣を後方の者へと向け、アリッサはロイドを直視し、システィナは、小さな声で呪文のトリガーを唱えていて、クラウトはメガネ越しにロイドを見ていた。
そのロイドは…。
「まぁ~、なんか勘違いをしているようだ。俺たちは…って言うか、1人足りないぞ?」
「あぁ~、1人はダメだった…父親だ…。弓矢を胸に食らった」
男が答え、その言葉に項垂れたロイド。
「…まったく、どうなっているんだ、この国は……」
アサトはロイドから視線を外さない、座っているロイドを見ていたクラウトが3人に視線を移すと同時に、アサトの手に自分の手を置いた。
そのクラウトを見る。
「これは、僕たちの早とちりだ…、あれを見ろ」
その言葉に振り返ると、3人の後ろにいる亜人が、男たちの背中に隠れてこちらを見ていた。
「こちらが…奴隷狩りだと思っている表情に見えないか?」
亜人らの表情はおびえた表情で、その視線がアサトらへと向けられており、アサトらが奴隷狩りに見えていると思われたのは、子供と思われる亜人の子2人が男の手を握っている姿でわかった。
あの亜人らは…僕たちを恐れている……。
アサトは子供の視線を見ると、太刀をロイドから外して鞘に仕舞った。
「いやぁ~、すいませんね…。」
ロイドは立ち上がり、男3人と亜人らへ手招きをする。
「ごめんなさいね…お嬢さん…あの子らにも、このスープを分けてくれないか?」
システィナはロイドを見てから、向かってくる男3人と亜人…たぶん、ゴブリンのイィ・ドゥだと思う。
薄い緑の肌で、耳が横に長く、目が異様に大きな子供が2人、そして…、肌は緑ではないが、頭に小さな角を持つ女性を見た。
「彼女はジョア…人間とオーガのイィ・ドゥで、その子らはジョアの子…彼女とゴブリンの子みたいだ…。奴隷狩りにあっていた所を俺たちが通りかかり、助けたんだ…、森を通って逃げようと思ったけど…、奴隷狩りは20人はいると思う…それに、森で赤鬼に攻め立てられた」
「赤鬼?」
「あぁ『ミュム』の戦士みたいだな…俺たちが、この子らを連れて歩いているのが気に食わなかったのかも…彼女らに、あの街に行けばいいんじゃないか?って訊いたけど…山を越えたかったみたいだ…」
ロイドの言葉を訊きながら、向かってくる3人とイィ・ドゥの親子を見ていた。
雨の中で気を失っているジェンスを、タイロンとケイティが起こして馬車に放り込み、ロイドの仲間を保護しているロイドの仲間と、イィ・ドゥ達にスープを振る舞った。
ロイドの仲間の話しでは、森へ逃げた時に赤鬼と遭遇したようだが、その時に彼女らへと進言をしたようであり、それを彼女らが断ったようだ。
そこでもめ事になり、戦いが始まろうとした時に奴隷狩りが現れ、20人以上いた奴隷狩りの者らが、ロイドと赤鬼へとわかれたようである。
その内にロイドが急にいなくなり、ロイドを探している内に、イィ・ドゥの父親が矢で射られ、彼をおいて逃げたようである。
赤鬼の方は…、奴隷狩りのモノの悲鳴が森に聞こえてきていたから、難は逃れたと思うらしい…そして、森をさまよっている内に、なにやら楽し気な笑い声が聞こえ、覗くとロイドが女に叩かれていた…と言う事で、敵につかまったと思い、2手に分かれて登場したとの事であった。
…叩かれていたのは…。
その事をロイドは、面白おかしく話していたが、仲間の話しだと、どのチームに会っても同じことをしているようである。
…ってか…この人は……。
「それで、このチームは、目当てのチームか?ロイド…」
ロイドの仲間の者が言葉にする。
その言葉に小さく笑みを見せたロイドは……。
首を横に振って見せ「いや…また違うようだ…」と言葉にし、アサトへと視線を向けたのであった……。
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