第9話 魔物を救っている者の名は、『ロイド』 上

 腹を擦りながら2杯目のスープを飲む男は、アリッサを見てご満悦であった。


 彼曰く、セラはまだ子供で、そう言うのは趣味では無く、ケイティは…言わない方がいいのではぶきますと言うか、彼が腹をこすっている所でわかりますよね…。

 んで、システィナとアリッサは…甲乙つけがたいようだったが、システィナは幼妻でそそられたが、引っ張っていくタイプではないので、どうせなら引っ張ってもらいたいと言う事で…アリッサになったようだ。

 年も同じくらいだし、それに…精悍な瞳にやられたと言う事だが……。


 「ところで…あなたは?」

 「あっ、すいません…、すいません…。おれは、怪しそうで怪しくない男。ロイドって言います」


 …って、かなり怪しい、それに……。


 「森で何を?」

 クラウトが訊く、その傍ではセラがスープを飲み、その隣のケイティは目を鋭くして男を睨んでおり、ジェンスは…何故か気を失って雨に打たれている…。


 …まぁ~いいか……。


 「あっ、探しモノですよ」

 「嫁か?」

 タイロンが訊く。


 「そうそう…って、それじゃないですよ…ってか、それも捜していますけど…、っていやいや…。でも、彼女が良いって言うなら…」

 ニンマリした表情を見せる男に向かったアリッサ。

 「ムリ!」

 「えぇ~、ならとりあえず…婚前交渉をしましょうよぉ~~」

 「婚前交渉?」

 アサトが男に訊く


 「うんうん婚前交渉…。結婚を前提とした…お体の…」

 「わりゃぁ~~」

 男の後頭部を、息を荒げているアリッサが平手で叩きつけた。


 …あ…アリッサさん?…。


 彼が言いたい事は…ようは、結婚を前提とした~な事のようであるが、本人からは聞いていないけど……。

 アリッサの一面を今日は2度見た気分がしていたアサトは、目を見開いてアリッサを見る。


 …アリッサさんって…そう言えば、今まで、みんなを見守っていた立ち位置だったけど、今日はジャンボさんにしつこく剣を突き立てていたし、目の前にいるロイドには……。

 もしかして、アリッサさんて…Sな人なんじゃ…。


 「もう…おれ、案外そう言うの好きですよぉ~~」

 「ところで…探しモノとは…」

 冷静に訊くクラウトのそばで、ケイティとジェンスが爆笑していた。


 …まっ、いいか……。


 「あ…っすみません。実はですね…」

 ロイドの話しでは、彼は仲間とこの森ではぐれたそうである。と言うか…。

 後方をあるいていた彼をカエルが食ったようであり、彼の仲間は…散り尻になったと思われる…との話であった。

 「後ろから食うって卑怯だと思いませんかぁ?」

 「そう言えば、ジェンスも『あぁ~~~』って声を上げて、振り返ったら…カエルの口に………。……ぎゃははははははは……」

 思い出したケイティは爆笑を始めた…ってか、ジェンスは、まだ雨の中で気を失っている。


 「仲間となにを?」

 「あんまり訊かないでください…、なら、俺もあなた達に3つ訊きます…。それを答えたら…訊きたい事にすべて答えますよ…」

 急に表情を凛々しくした男はクラウトを見た。

 クラウトはメガネのブリッジを上げてアサトを見ると、その動きに、再びケイティが爆笑をしていた。


 …って、姫はなにか悪いモノでも食ったのかぁ?


 クラウトの視線に小さく頷いたアサト。

 「いいでしょう…。あなたは何を訊きたいんですか?」

 クラウトの言葉に凛々しい表情のままアリッサを見た。


 「何人の人とかんけ…」

 「わぁりゃぁぁぁぁぁぁ!」


 その後はケイティの笑い声が森に響き渡っている……。


 「君たちは、この地方の者じゃない…それに…君たちのリーダーは…」

 視線がクラウトへと向けられる。

 「…アサトというんだろう?」

 その言葉に一同に緊張が走った…。


 見合った仲間らは、この事に対してどう動けばいいのかを、クラウトへと訊いている表情に変わり、視線をクラウトへ向けると、そのクラウトは黙ってロイドを見ていた。

 「なぁ~アサト君…。君たちがチームアサトだって言う事は分かっているんだ…」

 真剣な視線である…。

 その視線に向かうクラウトは小さく言葉にした。


 「違う…」

 その言葉に「え?マジ?」とロイドの表情が崩れ、頭を掻きむしり始めると、天を仰いだ。

 「あぁ~、また違ったぁぁぁぁぁぁ」


 …って…え?…。


 その行動に目を見開いた一同は、再びお互いを見合い、クラウトへと視線を向けると、真剣な表情のクラウトは、ロイドの行動を注視していたが…、そのロイドは、いきなり直ってアリッサを見た。

 「今ので惚れなかった?ね、ねぇ~」


 …ってこの人、どこまで本気なの?


 しつこくアリッサに纏わりついた後に、平手打ちを後頭部に食らったロイドは、クラウトを見た。

 「俺が察するに、君たちはルヘルムから来たことはわかる、これはあっているよネ?」

 ロイドの言葉に頷くクラウト。

 「そうだよね、でなきゃ…イィ・ドゥをつれて行動するのは考えられないし、その子も…このチームの一員ってところなんだよね?持っているモノを見ればわかる」

 ロイドの言葉に頷くクラウト。

 「それで…」

 「もう3っつ訊いた。」

 クラウトが低い声でロイドに言うと、ロイドは驚いた表情を見せた。


 「今度は僕が訊く番だ」

 「いや、まだ2つだよ!」

 「いや3つだ。ルヘルムから来た、セラが仲間だ…そして…アリッサの関係…」

 「いやいやいやいや…だって答えて…」


 「3人よ…これでいい?」

 アリッサが答えると言うか…3人?え?…。

 ケイティも目を丸くしてアリッサを見ている。


 「おれは5人とやった…」とタイロン。

 そのタイロンをケイティが見る…。


 「僕は…キャシーだけだ…」


 …え?これって…なに?


 アサトは一同を見渡している…と…。

 「あたしは人!」

 急に立ち上がったケイティが、指を2本立ててロイドに向け、引きつった笑みをみせていた。


 …ってか…、なにこの流れ…というか、姫はなんで張り合っているの?。


 「あっ…わたし…わ…」

 システィナが小さく俯いて頬を赤らめ始めている。


 …いいよ、システィナさん…聞きたいけど……。


 「これでいいでしょう!クラウト訊いて!」

 システィナの言葉を遮るようにアリッサが入って来たのに、ほっと何故か胸を撫でおろすアサトはクラウトを見た。


 「チームアサトを探していると思っていいんですか?」

 クラウトの声にロイドは意気消沈した表情でクラウトを見た。

 「まぁ~、そのチームが存在するかしないかはわからないけどね…。でも聞いたんだというかなぁ~。」

 空を仰ぐロイド。


 「俺のいとこが、そいつらを探しに行くってね…」

 「いとこ?」

 「あぁ~」

 訊いたアサトへとお視線を向けたロイドは、小さく首を傾げた。


 「君は、奇妙な武器を持っているね…なんて言うの?」

 「え?」

 アサトは腰の太刀の柄に手を当て、クラウトを見ると小さく頷くクラウト。


 「太刀って言います…。」

 「タチぃ?…聞いた事ねぇ~なぁ~、と言うか…、今回は当たりかなって思った。」

 「当たり?」

 「そう…そのチームアサトのファイターは、奇妙な武器…、細身で片方にしか刃を持ってない武器を持っているって…」

 「…」

 アサトを見たロイドは首を傾げていた……。

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