第5話 『グンガと愉快な仲間達』への依頼 上

 林を抜けて現れたのは、4人の姿に2頭の大狼である。

 オレンはゆっくりと彼らへと近づくと、勢いをつけて追い抜いたグンガとガリレオが、大狼に飛びついた。


 「なんだこいつ!すっげ~でっけぇ~犬だ!犬!」

 グンガがギンに抱きつく。

 「でっけいなぁ~、こいつ!食えばうめぇ~のかな?」

 ガリレオがシルバに抱き着いた。


 「食えばダメだガリレオ!おれはこいつを飼う!」

 「あぁ?何言ってんだ!食うんだよ!食う金が無いから、お宝掘り当てようって言ったのはおめぇ~だろ!付き合ってやってんだから、今日はこいつを食う!」

 「あぁ~?ってか、俺たちが金が無いのは、ミーシャのせいなんだよ!あいつがかんり…」

 「っちぇぇぇぇぇぇぇぇスト!」

 グンガの話しを遮って飛び蹴りを食らわしたミーシャは、大狼と少しだけ小さな人影を見下ろした。


 「あらぁ?ネズミの亜人…ってところかしら?」

 オレンが人影…、老人と子供が2人、そして、その子らの母親へと視線を向けた。

 「ぎゃはははは…、グンガが蹴られた!!ぎゃはははは!」

 「うるさい!お座り!」

 腹を抱えて笑っているガリレオにむかい目を皿にしたミーシャ。

 その目を見ると、お得意の正座を始めたガリレオ、そして、頬を擦りながらグンガが現れるとガリレオの横に正座をした。


 「ねぇ~、これ食べ物?」

 正座をしていたグンガらを見たレディGは言葉をやめて、ミーシャの傍に立ち、それから間もなくフレディとグラッパが現れた。


 「…召喚石…と言う事は、狐の子ね?」

 妖艶な笑みを浮かべながらしゃがみ、青い瞳を持つ『ギン』の視線へと顔をもってくると頭をなでた。

 その手に目を細めるギン。

 その傍に緑の瞳を持つシルバも寄ってくると、鼻をオレンへと向けた。

 オレンは匂いをかがせていて、その向こうに涎をたらしている坊主が2人正座をしていた。


 「フフフ…、さぁ~お帰りなさい。護衛、ご苦労様ぁ~。ここにいたら食べられちゃうわぁ~、食べれないけどねぇ~」

 笑みを見せながら立ち上がると、大狼らはネズミの亜人の一行へと進み、挨拶をするように4人の体に、自分らの体をこすり付けると来た道を戻り始めた。


 「よくできた召喚獣ね…、あの子の意思がちゃんと伝わっているみたいね…」

 「伝わっている?」

 不思議そうに訊くミーシャ。

 「そう。最後に体をこすり付けたでしょう?あれで、外敵には当分は襲われないわぁ~。」

 「そうなんだ…」

 去ってゆく大狼を見ていたミーシャは、涎をたらしながら、去ってゆく大狼を見ている坊主で正座をしている2人を見て、大きなため息をついた。


 「それで?あなた達わぁ?」

 オレンはネズミの亜人へと視線を移すと、ネズミの亜人がオレンを見上げ、事の成り行きを話し始めた。


 「そうなのぉ…向こうではそう言う事になっているのねぇ~。…それじゃ…、わたしが連れて行くわぁ~、セーフ区画へ……。どうせ帰り道だからぁ……」

 話を聞いたオレンは、ネズミの亜人を見て言うとエイアイへと視線を移した。

 「…弁償は?」

 「あらぁ?なんの話ぃ?わたしわぁ~、今から良い事をしようとしているのよぉ?」

 「あなたは、帰ろうとしているだけだろう!」

 「まぁ!人聞きの悪い…」

 驚いた表情を見せたオレンは、妖艶に微笑むとネズミの亜人の子供の手をとった。


 「とりあえずぅ~、アイゼンさんに…」

 「金は出す!」

 エイアイが言葉にすると立ち止まったオレン、そのオレン…より最初に動いたのはフレディである。


 「おい!マスクメガネ!金をくれるのか?」

 「くれるのではない。報酬として渡す。そして…お前たちが壊した、ジープの弁償をしてもらう」

 「あぁ?ジープは俺たちが壊したんじゃない!あの魔女が壊したんだ!」

 指さすフレディ、そして、続ける。

 「あの魔女がジープを弁償して、俺たちは金を頂く。金貨1万か?10万か?」

 「うるさい!」

 ミーシャがフレディの頭をはたき、グンガらの脇に向かって指をさして鼻を鳴らした。

 その行動にしぶしぶ移動を始めるフレディ。


 「なに?どういう事?マスクメガネさん。お金くれるって…。」

 「旅の資金は私が用意する。討伐依頼だと思ってもらいたい」

 その言葉に舌打ちをするフレディ。


 一度ミーシャとオレンは、その姿を見てからエイアイへと視線を移すと、グンガらの後方に、大きな物音を立ててグラッパが横になり、その上にデシャラが覆いかぶさった。

 驚いたネズミの亜人の子はオレンの手を強く握り、その手を小さく見たオレンは優しい笑みを子供に向けた。


 「依頼って…、なに?討伐すればくれるんでしょう?資金出すって、どこに行けって言うの!」

 ミーシャがエイアイに訊いた。

 「リメリア大陸、シントだ。」


 「なぁ?なんだそこ!」

 グンガが声をあげる。

 「リメリアって…。」

 ガリレオが首を傾げた。


 「…いくらぁ?」

 「おいミーシャ。見てわからないか…そい」

 ミーシャの言葉に反応したグンガ。

 「待てグンガ。ここはミーシャに任せよう。」

 悪そうな表情を浮べてフレディがグンガを制止させ、その脇で、なにやら考えているガリレオ。


 「旅の資金として、船と2年分の資金を出す。」

 「2年…って、2年もかかって辿り着けって言う事?」

 「2年以上かかるかもしれない、どうしても見つけてもらいたいものがある」

 オレンが何かを思い出したのか、目を細めてエイアイを見た。


 「あっ!」

 ミーシャの後ろで、正座をしている列のガリレオが小さな声をあげた。

 「それ…」

 「それは…、前に話していた事に関連がある?」

 ガリレオが言っている言葉を聞かずに、オレンがエイアイへと訊いた。


 「あぁ、君は興味が無いと言っていたから、そこで終わらせたが、君のお姉さんには頼んでいたんだ。」

 「あるの?それは…上に…」

 見上げるオレン。

 「あぁ…、確かに…、ゲインツ…私の弟子が信号を確認した…」

 「…リメリアにあるの?」

 視線を移したオレンは、冷ややかな視線をむける。


 「わからないが…その重要性を知っているのは…」

 「マスクメガネ…今…上にあるって言っていたよな…」

 ミーシャは振り返り、正座をしているグンガへと視線を移すと、目を丸くしているグンガは、いつになく真剣な表情であった。


 「あぁ…そうだが…」

 「まてまて…って事は。やっぱ、そこは…アメリカか!」

 グンガの隣のガリレオも真剣な表情になった。


 「…なんだ?知っているのか?」

 「まぁ~、この子らは、私たちと違って、前の世界の記憶があるの…」

 「な…」

 「んな事はどうでもいい!マスクメガネ!あるって…核か!核兵器が、上を飛んでるのか!」

 立ち上がったグンガは握り拳を作った。


 「…あぁ~、核かはわからないが…、戦略衛星が、う…」

 「ダメだ!」

 グンガがうつむき小さく言葉にした。

 その言葉に目を見開いて見るエイアイとミーシャ、そして、オレン。

 横にいたガリレオも立ち上がり、悲痛な表情を見せ、レディGがその面々を驚いた表情で見入り、立ち上がったガリレオをフレディが見上げていた。


 「それは…ダメだ!…戦争は…だめだ…とうちゃんがよく言っていた。この世界で、本当にダメなのは3つだって」

 「3つ?」

 ミーシャが訊くと真剣な表情になってフレディも立ち上がった。

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