第4話 熱帯雨林のマモノ…アゲイン 上

 目の前に現れたのは、茶色の物体…ってか、またカエルである。


 ゲコゲコと喉を鳴らしている姿に、ジェンスは目の力を無くした状態で見た。

 「またかよぉ~~」

 「はははは。ジェンス!もういっちょやってこい!」

 タイロンが嗾けたが、その嗾けには乗らない。


 「わたしが…」

 道を塞いでいるカエルは、自分のこの姿を見よ!と言わんばかりに、道の真ん中で3メートル程高い場所で喉を鳴らしていた。

 動かないのか?馬車の後方からシスティナが出てくる。


 「まってシス!今度はあたし!」

 馬車を降りて来たケイティがシスティナを止めて、先ほどタイロンが拾った槍を手にした。

 「いい、シキヨックん…よく見ているんだぞ!カエルってのは、斬るんじゃないわよ…刺すのよ、刺す!男でしょ?刺すの得意でしょう?シキヨックん!」

 不敵な笑みを見せながら、槍をクルクルと回しながら進むケイティを、クラウトはオデコに手を当てて目を閉じていて、隣のタイロンは興味深そうに見ていた。


 アサトも見ていると、その隣にシスティナがやって来て、ケイティの後ろ姿を見ている。

 アリッサは…大きなため息をついていて、セラは布で口と鼻を布で覆い、お宝を探す準備を整えていた。


 「さぁ~おいでゲッコ!ゲッコゲッコと鳴くから、お前はゲッコと呼ぶ!!」

 槍を構えたケイティ。

 そのケイティに気付いたカエルは、体勢を細やかに動かしてケイティを真正面に捉えると、顔を上に向けた。

 「ばっかじゃないのぉ?喉ががら空きよ!」

 叫びながら喉へと槍を突き立てると、するすると滑り出し…。


 「え?」とアサト

 「あぁ?」とタイロン。

 「あっ…」とシスティナ。

 大きくため息をついたクラウトの姿があり、アリッサは小さく呆れた表情を見せ、セラは目を見開き、ジェンスは……

 「ぎゃははははは…おっめぇ~~、なんだその姿!ってか…滑ってんじゃねぇ~かよぉぉぉぉぉぉ!ぎゃははははは」

 腹を抱えて笑い始めた。


 そこには、背伸びをして腕を高々にあげ、槍を突き上げた状態のケイティの姿があり、その剣先が、カエルのアゴ?辺りにちょんとついている状態でプルプルと震えて、肌を滑るように小さく降りてきていた…と……。

 カエルは、顔をちいさく剣先から避けると、伸びている槍を顔ではじいた。

 槍を失ったケイティは、背伸びをして腕を高々に上げた状態で止まっている…と…。


 「え?」とアサト

 「がっ!」と口を開けたタイロン。

 「キャっ」と声をあげたシスティナに、おでこに手を当てて眉間に皺を寄せているクラウトがいて、セラは目を覆い、アリッサは大きくため息をついた。

 そして…


 「ぎゃはははははは…」

 腹を抱えているジェンス。

 その笑い声をきいたのかわからないが、ケイティが振り返ろうと首を動かそうとした瞬間に…


 「げ!」とジェンスが声を上げた。

 ジェンスの見た景色には、ダラダラと零れ落ちる涎のような粘膜状のモノが、カエルの口からとめどなく流れてきていて、その下にいるケイティがドロドロのグチャグチャの状態になり…。


 「あっ。食われた。」

 言葉を発したジェンスの目には、程よくよごれたケイティを大きな口でパクっと銜えたカエルの姿があった。

 「え?えぇ~」

 咄嗟に太刀を抜いて走り出したアサト。


 「…わたしが!ヴァルハラに住まわれし、光の神よ…力を!」

 呪文を唱えると小さく輝きだしたシスティナは、腕をカエルに向け人差し指を伸ばすと、印を描き始めた瞬間に…。

 アサトの目の前にいるカエルが大きく膨張を始め、その姿を見たアサトは、急いでシダが覆い茂っている道脇に飛び込んだ瞬間。


 大きな風船が割れるような音と共にカエルが爆発した!…と、ドサッと、爆発したカエルから落ちて来たケイティは、粘液塗れで横になり、なにやらブツブツと言葉を発している。


 「ぎゃはは…おもしれぇ~もん見させてもらった!」

 ジェンスがケイティへと駆け寄り腹を抱えて笑っている。


 …ってかジェンス。君もそうだったんだよ……。


 再び…、お宝を漁っているアサト一同。


 ケイティは、胸当てにショートパンツで、頭に布を巻いてご立腹であり、ジェンスは、上半身裸で七分のズボンを履いて、ご満悦の状況であった。


 熱帯雨林はまだまだ続く。


 しばらく進むと、再び…ドスンと…。


 …ってか、またカエル?


 道を塞いだカエルに向かったのは…、ケイティとジェンスである。

 「いいか貧乳。今回は俺の番だ!そのねぇ~乳でよく見てろよ?」

 「あぁ?いま、言ってはいけない事を、さらぁ~と言ったな?」

 「はははは…言ってねぇ~よ」

 進み出したジェンスは、剣をクルクルと回しながら近づくと…


 「っちぇぇぇぇぇぇぇぇスト!」と大きな掛け声に、大きく蹴られてカエルの弾力ある腹に激突したジェンス…。

 「ったく!なにしやが…」

 振り返り、言葉を発している内に…パクっと再び、カエルの口の中へ…。


 そして…システィナの爆発魔法で助けられて、お宝採取…。


 一行は進む…熱帯雨林はまだまだ続くと…ドサッと…。


 …ってか、またカエル?

 …なんでこんなに?。


 道を塞いでいるカエルは、明後日の方向を見て喉を鳴らしていた。

 「さぁ~、こんどはあたしの番!見てなシキヨックん!」

 威勢よく槍を手にして駆け出したケイティは…、カエルの懐に入ると同時に槍を引き、そして……?

 振り出そうとしてから動きを止めて振り返った。

 そこには槍の石突きと言われる場所…ようは、剣先の逆の方を掴んで、ニカニカ笑っているジェンスがいる。


 「なにすんの!シキヨックん!これ…」

 じゃぁ~~。と降り注がれる涎に塗れたケイティの姿があり…、それをニカニカしながら見ているジェンス、そして、待望の…お食事タイムで、口に含まれるケイティの姿を見上げたジェンスは振り返り馬車へと進む


 「シッスぅ~、ヨロピコ!」

 言葉をかけると腕組みをしながらカエルを見てニカニカした…。

 そして…ケイティは、システィナの爆発魔法で助けられて、お宝採取…。


 熱帯雨林の森の大きさを感じ始めたのは、ケイティとジェンスが食われて助けて、食われて助けてと5回ほど熟した頃であった。

 もう既に、この流れに飽き飽きしていたアサトら一同は、カエルが出てくるたびに馬車を止めて冷ややかな視線で、ケイティとジェンスを見ていた。


 「あぁ~なんかカエルうぜぇ~」

 「そうだ!ウザイし、キモイシ…体中が生臭いし…」

 「じゃ…共闘と行くか?」

 「仕方ないね…で、どうするの?」

 「ギャラリーも飽きてきているみたいだからな…、そろそろやれるところ見せようぜ!」

 「うん…そうだね。なんか…冷ややかだね…ってか…シスが、魔法を撃つ準備している。…ショック!」

 「あぁ~、ここは、俺たちがやれるところを見せなきゃな!」

 「うん…で?どうする?」

 「あぁ~~そうだな……」


 道の真ん中で喉を鳴らしているカエルを見ているジェンス。

 ケイティも槍を支えにして立って見ていた。

 「あっ!いい方法思いついた!」

 ケイティが声を上げる。

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