第20話 みなみちゃん4  

「どうも。どうもです。」

 歯科医師の美代先生は、久々の出番に照れていた。

「はい! いつもより多く回しております!」

 最強の歯科助手みなみちゃんは、パンダを番傘で回す職人に成長していた。

「キュル!」

 パンダのパンパンも、いつもより多く回っている。

「それではみなさん、よろしくお願い致します。」

 2人と1匹は、深々と頭を下げて冒頭の挨拶をするのだった。

「なんじゃ、そりゃ。」

 この書き足しは、軽い編集をすると10万字に約1400字、足らなかったからである。

「なんだか、私たちらしいですね。」

「キュルキュル。」

 美代先生は呆れているが、みなみちゃんとパンパンは納得して頷いていた。

「そもそも、私が現代ドラマでテレビ化されないのは、パンパン! お前のせいだ!」

「キュル?」

 美代先生は、自分の不幸をパンダの性にするが、パンパンにはまったく身に覚えがない。

「作品にパンダなんか出るから、異世界テイスト過ぎて、現代ドラマにならないじゃないか!?」

「キュル!?」

「先生、パンパンが言っていますよ。八つ当たりはやめて下さい。ただの濡れ衣ですって。」

 みなみちゃんはパンダの言葉が分かる。

「それだ! どうして人間のみなみちゃんがパンダの言葉が分かるんだ!? そこからして、良くてもアニメにしかならないじゃないか!?」

 美代先生は、ズボラなアニメオタクである。

「諦めましょう。潔く諦めれば、このダラダラお仕事モノの地位を確立できるんです。」

「キュル。」

 既に歯科助手とパンダは、美代先生がドラマにもアニメにもならないと諦めている。

「そ、そんな!? 私の出演料が!? 私の人気が!?」

「もういいじゃないですか、美代先生は世界を最近から救って、国連の名誉歯科医師になったんですから。」

「おお! そういえば、そんな設定があったな! 私は偉いのだ! ワッハッハー!」

「なんて立ち直りが早いんだ!?」

「キュル!?」

 美代先生は、気分屋なので、直ぐに元気になる。


「助けてください!?」

 そこに飛び込みの患者が現れる。

「どうしましたか?」

「歯が痛いんです! 歯を見てください!」

 患者さんは、歯が痛くて歯科医院に飛び込んできた。

「先生、どうしますか?」

「時間外だから帰ってもらって。」

 美代先生は、仕事に厳しい素晴らしい先生であった。

「分かりました。残念だな。国会議員の息子さんなのに。」

「直ぐにお通ししなさいー!!!!!!!」

「え?」

「キュル?」

 美代先生の態度が豹変した。

「鴨が葱を背負って来る~! バン! バン! バン!」

 美代先生の十八番。「鴨葱の歌」である。

「相変わらず美代先生は権力に弱いのでした。」

「キュル。」

「私は、セレブになるのだ! ワッハッハー!」

 美代先生の開業医になった理由。それは安月給の大学病院の勤務医をやめて、開業してお金持ちのセレブになることだった。貧乏人のお客さんはお断りである。

「既に美代先生はセレブになったと有名ですよ。」

「キュル。」

 美代先生は、日本の総理大臣、天皇、中国の首席、アメリカの大統領、国連事務総長などのVIPの患者を多数抱えている。テレビや雑誌にも登場し、まさに人生を成り上がったのだった。

「お金持ちの息子さんを治療して、お金とコネを手に入れるのだ! ワッハッハー!」

「私の給料も上げてくださいよ!」

「キュル!」

「パンパンもエサの笹を上質のものに変えろと訴えていますよ!」

 みなみちゃんの給料は、月給20万円からベースアップすることはない。世間知らずのみなみちゃんは、美代先生に都合の良いように扱われている。悪い男にひっかかった、バカ女みたいなものだ。

「さあ! 患者さんを見てこよう!」

「ああ!? 逃げた!?」

「キュル!?」

 やっと患者さんの歯を見ることになる。


「はい、口を開けてください。」

「あ~ん。」

 患者の口の中を見る美代先生。

「あ、口の中に鴨が挟まってますね。」

「鴨ですか!?」

「何か、鴨料理を食べましたか?」

「鴨ラーメンを食べました。」

「それが原因ですね。」

 なんと患者の歯に鴨が挟まっていた。

「先生、歯に鴨が挟まっているのに冷静ですね!?」

「よくあることですよ。」

「え!? よくあるんですか!?」

「そこのパンダ。あれも歯から抜いてペットにしたんです。」

「え!? そういうものですか!?」

「安心してください。うちには、歯から鴨を取り出すプロフェッショナルがいますから。」

「プロフェッショナル!?」

「みなみちゃん。」

 もちろんプロフェッショナルは、最強の歯科助手みなみちゃんである。

「え!? また私がやるんですか!?」

「仕方がないだろ。2000字でいいのに、気が付いたら、もう1900字だもん。」

「しょうがないですね。」

 こうして、みなみちゃん患者の虫歯を治療することになった。

「私にできないことはない! 必殺! クリーニング波動砲!」

 みなみちゃんは、一撃で患者の歯から鴨を引き抜いた。


「ありがとうございました。」

「どういたしまして。」

 患者は、虫歯が治って笑顔で帰って行った。

「グワグワ!」

「お前の名前は、カモカモだ!」

 新しい仲間、鴨のカモカモが仲間になった。

「マジか!? うわあ~!? エサ台が2倍になってしまった!? 」

 ケチな美代先生でした。めでたし、めでたし。

 終わり。

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最強の歯科助手のみなみちゃん 渋谷かな @yahoogle

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