第19話 みなみちゃん3後 

美代歯科医院のパンダのパンパンと、上野の動物園のパンダのシャシャの日中共同の初対面式の会場の赤坂迎賓館。

「どうぞ。パンパン様。」

黒塗りの高級車からパンパンが降りてくる。地面には迎賓館までレッドカーペットが敷かれてあった。

「キュル。(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

首には赤いリボンをしてオシャレにおめかししていた。どこか毛並みもカットされ整い艶があった。

「パンパカパンー!」

パンパンの登場と同時に音楽隊がトランペットやシンバルにドラムなどを叩いて元気な音楽でパンパンを迎える。

「どうもです。」

続いて、普段は白衣しか着ない美代先生が綺麗なドレスを身にまとって、授賞式モードでやって来た。髪型もロングヘアを後ろでゴムで止めただけのちょんまげヘアから名古屋嬢のように上に盛られた髪型になっている。伊達眼鏡もコンタクトレンズに変え、まったくの別人であった。

「ああ~面倒臭い。この姿になるまで3時間もかかった・・・。」

似合うから仕方がないとでも言いそうな美人に生まれ変わった美代先生だが、性格までは生まれ変われなかった。

「先生、私はどうですか?」

華麗に黒塗りの高級車から降りてきたのは頭に輝くティアラを乗せ、純白ドレスを着てガラスの靴を履いたみなみちゃんだった。

「かわいいよ、みなみちゃん。」

普段、穴の開いたTシャツやジーンズに靴を身にまとっている貧乏ガールには見えなかった。まるでどこかの国のプリンセスであった。

「ありがとうございます。(⋈◍>◡<◍)。✧♡ やっと、みなみにもスポットライトが当たる時がきたんですね!(⋈◍>◡<◍)。✧♡ きっと、みなみを見た世界中の男がみなみにお金を貢ぎたいと言ってくるはず! これでみなみはお金持ち!(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

みなみちゃんは幸せよりもお金を優先するイマドキ女子が共感する女の子だった。

「みなみちゃん、盛り上がっているところ悪いけど、迷彩服とバズーカは持ってきたかな?」

美代先生はみなみちゃんに変なことを尋ねる。

「はい。ドレスの中に着てきました。バズーカは迎賓館の至る所に隠しています。」

みなみちゃんも変なことを答える。

「だよね・・・。私たちの物語で事件が起きずに無事に終わったためしが無い。」

「そうですね・・・シクシク。」

美代先生とみなみちゃんは自分たちのポジションをよく理解している。

「それでもパンパンが上野の動物園のパンダさんにであって、お友達になれるといいなって思います。ねえ、パンパン。」

みなみちゃんはパンパンの顔を覗き込む。

「キュル。(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

パンパンは恥ずかしくて少し照れた。でも自分と同じパンダに会えるのがたのしみだった。

「それではパンパン様、御一行の御入場です。」

黒服の男の紹介と共に歓迎のファンファーレが鳴り響き、美代先生とみなみちゃんとパンパンがレッドカーペットの上を歩いて迎賓館の入り口に歩いて行く。

「キュルキュル。(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

「こんなに楽しそうなパンパンを見るのは久しぶりだな。」

「以前はいつだったんですか?」

「パンパンがみなみちゃんに出会った時。」

「え?」

不意を突かれたみなみちゃんもパンパンのように少し照れて嬉しそうだった。

「やっぱりパンダも飼い主に似るんだな。」

美代先生にはみなみちゃんとパンパンが同じに見えた。

「パンパン、手をつないで歩こう!(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

「キュル!(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

みなみちゃんとパンパンの歩く姿は、飼い主とペットというよりは、兄弟のような、パンダと結婚する花嫁のようにも見えるぐらい2人の中は仲睦まじく見えた。

「パンパン。(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

「キュルキュル。(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

みなみちゃんとパンパンは幸せそうに歩いて迎賓館の入り口にたどり着いた。

「大変だ!?」

その時、迎賓館の中から黒服の男が大声で騒ぎながら駆けてきた。

「何かあったんですか?」

「上野の動物園のパンダのシャシャが正体不明の病気で倒れてしまって死んでしまいそうなんだ!?」

「ええ!?」

「キュル!?」

いつも事件は唐突に。別にみなみちゃんは不幸を呼ぶ歯科助手と不幸を呼ぶパンダではない。

「ほら、きた。」

美代先生は予想通り事件が起きたと呆れていた。

「私は医者です。見せてください。」

「獣医の方なんですか!?」

「いいえ。私は歯科医師です。」

自然の会話の流れだが美代先生は少しセリフが決まったとご満悦だった。さすがにみなみちゃん3まで続いていると細かい修正もバッチリだった。

「こっちは私の助手とパンダです。」

「みなみです!」

「キュル!」

みなみちゃんとパンパンも上野の動物園のパンダを助ける気で満ち溢れていた。

「臨時ニュースです! 上野の動物園のパンダの危篤状態を知り、再び中国が核ミサイルの発射準備に入ったそうです! 予定通り2匹のパンダの初対面式が行われなければ、日本は中国に敵対意志があるとみなし、ミサイルを日本に打ち込むそうです!?」

中国は国宝のパンダの死は何が何でも許さないみたいだった。

「と~う! 戦闘準備完了であります!」

みなみちゃんはドレスを脱ぎ捨て迷彩服に一瞬で着替えた。そして手にはバズーカ砲を持ってミサイルを迎撃するつもりである。

「獣医さんを待った方がいいのでは!?」

「そんなことを言ってる暇はない! シャシャの元へ行くぞ!」

「おお!」

「キュル!」

美代先生たちは迎賓館の中に入っていった。



迎賓館の中の上野の動物園のパンダのシャシャの控室。

「キュル・・・。」

シャシャがベッドで寝転がっていた。

「キュルキュル!? キュル・・・。」

どこか様子が変だ。症状は風邪でも熱でもなく、どこかお腹が痛いような症状に似ている様だった。

「カップラーメン1年分はどこだ!?」

そこに扉を蹴り破り美代先生が入ってくる。

「シャシャはどこだ!?」

みなみちゃんは普通の歯科助手だった。

「キュル!?」

パンパンが寝込んでいる上野の動物園のパンダのシャシャを見つける。

「キュル。」

「キュル・・・。」

パンパンはベッドのシャシャに駆け寄り手を握り心配する。パンダ同士の初対面であり初スキンシップだった。

「かわいい!(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

みなみちゃんは2匹のパンダの触れ合いをかわいく感じた。

「はい~。パンパンどいて。診察しないとシャシャのどこが悪いのか分からないだろう。」

「キュル。」

美代先生がシャシャの様子を見ようとする。普段はズボラな美代先生をバカにしているパンパンだが医者としての美代先生のことは尊敬していた。

「やめて下さい! もしもパンダが死んだら外交問題になります!? ミサイルが撃ち込まれたら我々の責任問題になってしまう!?」

日本の職員は自己の保身しか考えていなかった。

「やめろ! 我々は中国の特別パンダチームだ! 中国の獣医が来るまで勝手にパンダに触ることは許さん!」

中国の職員も口を出してきた。

「は~い。大きく息を吸って。」

「キュル。」

美代先生はシャシャに手を触れて優しく診察をする。

「んん、お腹が痛い訳でもないね。」

「キュル。」

シャシャの病気はお腹が痛いではないようだった。

「おまえ聞いてるのか!? 射殺するぞ!?」

中国の職員が懐から拳銃を出して美代先生を狙う。

「みなみちゃん、撃っていいよ。」

「はい! 美代先生!」

みなみちゃんはバズーカ砲を発射する。

「ドカーン!!!」

迎賓館の壁に命中。

「うわあ!?」

壁が崩れ日中の職員に降り注ぎ、アタフタと逃げ惑っている。

「おまえらうるさいんだよ! 人間でもパンダでも病気の患者がいれば助けるのが医者だ!」

美代先生は医者としての使命を果たそうと言っている。

「う・・・。」

日中の職員が美代先生の言葉を聞いて沈黙する。

「失礼します。」

「なんだ!? バズーカ娘!?」

「プチ!? もう一発撃ちましょうか!?」

「ヒイイ!? お許しください!?」

みなみちゃんがどこでバズーカを仕入れたかって? みなみちゃん2と3の間、国連の医療チームで戦地を彷徨っていた設定だったので、その時、国連公認の戦地のくじ引きで当たった景品としておこう。

「これは美代先生が中国の国家主席の虫歯からパンパンを取り出して、美代先生と国家主席が2ショットで笑顔で握手している写真です。」

ちなみにみなみちゃんとパンパンも秘儀パンダ傘回しでコッソリと映っている。

「さらに国家主席からご褒美にもらったみなみのブラックカードには中国での歯科の治療行為が許されると中国政府から公認されています。」

本当は歯科助手は医療行為をしてはいけません。しかし、みなみちゃんは日本、中国、アメリカ、国連の4つのブラックカードを所持し世界各国での歯の治療が認められている世界で唯一の歯科助手である。しかしみなみちゃんの月給は歯科助手レベルの15万円で、美代先生にこき使われているのだった。

「わ、わかった。我々もあなた方を信じよう。」

日中の職員たちも美代先生たちを信じることにした。

「ありがとうございます。」

みなみちゃんは可愛く微笑んで頭を下げる。

「シャシャの病気の原因が分かりました。」

その時、美代先生がシャシャの病気の原因を発見する。

「虫歯だ。」

なんとシャシャの病気の原因は虫歯だった。

「む、虫歯!?」

日中の職員は原因不明の病の原因は虫歯だった。

「日本にミサイルが撃たれるまでに時間がない。ここで虫歯を取り除きます。」

美代先生は覚悟を決めた。

「みなみちゃんは私の助手を、パンパンはシャシャの手を握ってあげて。」

「はい!」

「キュル!」

美代先生とみなみちゃんとパンパンの息はピッタリだった。

「それでは治療するので、皆さんは部屋から出て行ってください。」

美代先生は日中の職員を部屋から追い出した。部屋に残されたのは美代先生、みなみちゃん、パンパン、シャシャの2人と2匹だけになった。

「うわあ!? 笹味のカップラーメンしかない!? ロクなカップラーメンがないな・・・。」

美代先生はシャシャの治療をせずに部屋のカップラーメンを漁り始めた。

「せ、先生!? 何やっているんですか!? シャシャの虫歯を治療しないんですか!?」

みなみちゃんは美代先生に尋ねる。

「え? 治療するのはみなみちゃんでしょう?」

「えええ!? また私ですか!?」

「そうだよ。私はラーメンにお湯を注ぐのに忙しいんだ。」

「お湯って!? ラーメンと虫歯とどっちが大切なんですか!?」

「ラーメン。」

「ほえ・・・。」

聞いた私がバカだったとみなみちゃんは思った。

「パンパンも分かっているよね?」

「キュル。(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

いつもの展開である。決して美代先生はヤブ医者ではないが、みなみちゃんが治療した方が腕が上だったので、パンパンも美代先生よりもみなみちゃんを信頼している。

「でも、ここには歯科の治療設備はないんですよ?」

「あるじゃない、ほれ。」

美代先生はペンチを指さす。

「えええ!? これでやるんですか!?」

「3分経ってカップラーメンが出来たら、ミサイルが発射されるから、さっさとやってね。」

微妙にもカップラーメンが食べごろになる待ち時間とミサイル発射までの時間が微妙に一緒だった。

「分かりましたよ! みなみがやればいいんでしょう!」

みなみちゃんは覚悟を決めてペンチを手に取った。

「見せてあげましょう! 国連の医療チームで戦地で虫歯を抜きまくって来たみなみの新必殺技を!」

ペンチを持ったみなみちゃんの体が黄金に光り輝く。

「虫歯リムーブ!!!」

みなみちゃんはペンチでシャシャの虫歯を引っこ抜いた。

「やりましたよ! みなみがやりましたよ!(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

一仕事を終えたみなみちゃんの表情は充実感に見溢れていた。

「さすが私の助手だ。」

「キュル。(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

美代先生もパンパンもみなみちゃんのことを信頼している。



迎賓館で日中友好のパンダの初対面式が行われる。

「キュル。(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

「キュル。(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

美代歯科医院のパンダのパンパンと上野の動物園のパンダのシャシャが記者会見の席に座って仲良く会見している。

「キュルキュル。(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

「キュル。(⋈◍>◡<◍)。✧♡ キュルキュル。(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

「キュルキュル。(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

「キュル、キュルキュル(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

パンダ2匹によるキュルしか言わない会見は、人間には分からなかった。ただパンダ2匹が並んで会見している光景は可愛くて全世界から指示された。

「キュル(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

「キュル(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

パンパンとシャシャは幸せそうだった。



パンパンの控室。

「中国のミサイル発射も中止になりましたし、よかったですね。美代先生。」

これもみなみちゃんがシャシャの虫歯をペンチで引っこ抜いたからである。

「これでカップラーメン1年分は私のものだ! ワッハッハー!」

美代先生は世界の平和よりもカップラーメンの方が大切だった。

「失礼します。」

そこに日本の職員がやって来る。

「報酬のカップラーメン1年分は銀行振込でお願いします。」

「そのことなんですが・・・、誰かがバズーカ砲で迎賓館の壁を破壊しまして、その修復に莫大な費用がかかりますので、今回は報酬は無しということで・・・。」

なんと!? みなみちゃんがバズーカ砲で迎賓館の壁を壊して修理にお金がかかるので、美代先生の楽しみにしていたカップラーメン1年分は無くなった。

「なに!?」

美代先生は寝耳に水で絶句した。

「みなみちゃん!? なんてことをしてくれたんだ!?」

「撃てと言ったのは美代先生じゃないですか!?」

「ラーメン! 私のラーメンを返せ!」

「みなみは悪くありませんよ!?」

軽い取っ組み合いのケンカが行われ終わった。

「はあ・・・はあ・・・帰りにラーメンでも食べて帰ろうか?」

「そ、そうですね。美代先生が奢ってくださいよ。」

「いいよ。」

「やった!(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

「餃子もつけていいよ。」

「わ~い!(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

「その代りメンマとチャーシューは没収します。」

「ええ!? 酷い!?( ;∀;)」

「じゃあ特別にみなみちゃんだけマカロンをトッピングしてもらおう!」

「いいんですか!?(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

「みなみちゃん、今日もがんばってくれたから。」

「美代先生、大好き(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

「そんな大げさな!?」

「美代先生、できればみなみのお給料も上げてもらえると嬉しいんですが?」

「それは無理です!」

「ガッカリ・・・。( ;∀;)」

美代先生はみなみちゃんを愛らしく見つめる。

「お給料が上がったら、みなみちゃんがどこかに行ってしまうのが嫌なんだ。」

「え? 先生、今何か言いました?」

「行ってないよ。さあ! 四谷の駅前でラーメンを食べて帰ろう!」

「みなみ、マカロンラーメンが楽しみです(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

「ハッハッハ!」

こうしてズボラな歯科医師と最強の歯科助手は帰って行った。


おまけ。

「なんだこれは!?」

後日、美代歯科医院に笹味のカップラーメンとマカロン味のカップラーメン1年分が届き、美代歯科医院にカップラーメンが溢れ、美代先生たちは歯科医院に入れなくなったので、只管カップラーメンを食べる日々が続いたらしい。


終わり。

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