第11話 三度、細菌娘

「どうもです~♪」


美代先生が着物を着て、ひな人形のお雛様の姿でやってくる。パシャパシャっと、取材のカメラがシャッターを押す。


「美代先生、今年のお雛様に選ばれた感想をお願いします。」


取材陣の問いかけに、美代先生は答える。


「私みたいな、おばちゃんが選ばれて、申し訳ない。」


美代先生は、18才から6年間、大学生で24才。1年間の研修医で25才。そこから勤務医でお金を貯めて、開業したとなると・・・30才は超えているだろう。


「美代先生、今年で何才になったんですか?」

「んん、いわゆる一つの、どうもでしょう~♪」


女性に年齢を聞くのは失礼だと思うが、記者の質問を上手にはぐらかす美代先生。その会場に一際、おかしな光景がある。


「プヒャ~♪ 甘酒おいしい(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

「キュルキュル(⋈◍>◡<◍)。✧♡」


会場の片隅で、ひなあられ、菱餅をひたすら食べ、甘酒を飲んで酔っ払っている、女の子とパンダがいた。


「どうもです~♪」


この物語は、もらえる賞は、何でももらうガメツイ美代先生と、食べ物で簡単に釣れる最強の助手のみなみちゃんと、笹団子が大好きなパンダのパンパンの、心温まる物語である。



美代歯科医院に朝がやって来た。


「青い空~♪ 澄み切った空気~♪ なんて素晴らしい1日の始まりなんだ~♪」

「先生、無理の楽しそうにしないでください。」

「キュル。」


美代先生は、今日も絶好調を装っていた。


「来るなら来い! 細菌娘!」

「今日の新しい綾ちゃんの細菌はなんでしょうね? また、先生の学会にのレポートのネタが増えますね。」

「キュルキュル。」


美代の歯科医院は、綾が通院してくれる間は、学会に提出する「新種の細菌を発見!」レポートの題材に困らない。後に、みなみちゃんが作成する、美代先生のレポートは、新種の細菌に支配されそうな世界の人々を、虫歯から救うことになる。


「綾ちゃんのお母さんが、ネット通販で、チョコキノコを販売して、世界中に新種の細菌をバラまいたら、地球は新種の細菌で、歯からチョコキノコが生えた人間ばかりになるだろうな。」

「ダメですよ、先生。そんなことを言ってると本当になってしまいますよ。」

「そうなの?」

「キュルキュル。」


綾の虫歯は、「おかずおやつ」という新しい料理作りが好きな、綾ママによるところが大きい。世界の細菌の出所は、綾ファミリーなのである。


「美代先生、私たちリニューアルしたんですから、こんなにパロディにこだわらなくてもいいんじゃないですか?」

「それはもう、手遅れ。」

「ガクン・・・。」

「キュル・・・。」


いくらでも書けるけど、不正しないから、読者選考にもかからないな。2まで、考えて書く必要はないか・・・。


「美代ちゃん、遊ぼう~♪」


綾ちゃんの声が聞こえてきた。美代歯科医院には緊張が走る。


「出た!? 細菌娘!?」

「綾ちゃんの襲来だ!?」

「キュルキュル!?」


美代先生は、クマではないが死んだふりをする。


「みなみちゃん、後よろしく。」

「先生!? ここは先生の病院でしょ!?」

「まだクマに食べられたくないんだ!?」

「私は食べられていいんですか?」

「うん~♪」

「先生・・・。」

「キュル・・・。」


みなみちゃんは、諦めて、お客さんを迎える。


「はい。綾ちゃん、おは・・・あなたたち!?」

「みなみちゃん、友達を連れてきたよ~♪」


綾ちゃんは、1人ではなかった。以前に美代歯科医院に遊びに来た、友梨、麻美がいた。


「こんにちわ。」

「また、来たぞ。」

「私の歯も見て。」


友達は2人しか見えないが、声は3人分した。


「ミクちゃんもいるのね!?」

「そうだよ。」

「みなみちゃん、ミクちゃんが見えないなんて、心が汚れている証拠だよ。」

「グサ!? って、綾ちゃんには言われたくない。」


そこに美代先生が、様子を見にやって来る。


「みなみちゃん、生きてる? ・・・うわあ!? 綾ちゃんの他に見覚えのあるのが、2人もいる!?」

「先生、綾ちゃんの友達は、3人ですよ。ミクちゃんが見えないなんて、心が汚れている証拠ですよ。」

「あのプロレス娘か!?」


心の汚れている美代先生には、ミクちゃんの姿は見えなかった。そして、いつものように美代先生は、誰もいないのに、コブラツイストにかかる。


「イタタタタ!?」

「ミクもいるよ。」

「ごめん!? ごめん!? ギブ!? ギブ!?」

「勝者、ミクちゃん!」

「うおお~♪」


勝ち名乗りを受けるミクちゃん。美代先生には、やはり綾ちゃんが関係がある日は、厄日である。


「先生、大丈夫ですか?」

「し、死ぬかと思った。」


美代先生よミクちゃんの相性は悪い。麻美ちゃんが、パンパンを見つける。


「この前のパンダ~♪ 続きをしようじゃないか? おいしそうなパンダ~♪」

「キュルキュル!?」

「ダメ! パンパンを食べてはいけません!」


麻美ちゃんは、なんでも食べる大食いモンスターなので、前回登場の時も、パンパンの頭を丸飲みしているのを救出した。


「はあ・・・はあ・・・この物語は歯医者の話だったはず!?」

「はあ・・・はあ・・・先生、歯を治療する前に体力が持ちません!?」

「キュル・・・キュル・・・キュル!?」


そう、これでもメインは歯医者の話だ。そこに友梨が助け船を出す。


「この3人の相手を、真面目にしていると疲れますよ。」

「そうだね。虫歯の無い、友梨ちゃんだったっけ?」

「はい。」

「よく、この3人と友達でいられるね?」

「適当に流していますから~♪」

「ははは・・・賢いね。」


美代先生は、さっさと流して終わろうと思った。


「みなみちゃん、まず麻美ちゃんの歯が1週間でどうなったか、確認して。」

「はい。」

「その後で、綾ちゃんの歯を見てね。」

「先生、ミクちゃんは?」

「私がやる。」

「美代先生が燃えている!?」


珍しく美代先生がやる気なのだ。


「歯科医院に来て、歯科医師に暴力を働いたことを後悔させてやる!」

「そういうことか・・・。」


みなみちゃんは、美代先生に呆れる。


「麻美ちゃん、診察室にどうぞ。」

「しょうがないな。」


みなみちゃんと麻美ちゃんは、診察室に消えていく。


「こい、プロレス娘。」

「もう来てるよ。」


美代先生は、姿が見えないミクちゃんをどうやって治療するだろう?



「麻美ちゃん。お口を開けてください。」

「はい。」


みなみちゃんは、麻美ちゃんの口の中を見る。


「え!? 歯がボロボロ!?」


麻美ちゃんの歯は、ガタガタになっていた。


「何をどうやったら、こんなことになったの!?」

「前の時に歯をコーティングしてもらったので、試しに地面や岩石を食べてみたんだ。そしたら、こうなったのさ~♪」

「笑顔で言うな!」


さすがのみなみちゃんも歯科に関わるものとして、麻美ちゃんの行動は、許せない。自分の歯を何だと思っているのだろう?


「私に治せない歯は無い!」


みなみちゃんは、決めゼリフを自分に言い聞かせるように言う。


「もう! これじゃあ、差し歯に、インプラントに、歯を削ったりしないといけないのよ! プンプン!」

「大丈夫だよ。」

「なにが大丈夫なのよ!?」

「歯が全部抜けて、歯が生えてくるから~♪」

「おまえはサメか!?」


麻美ちゃんのガタガタの歯が一度に抜け、真新し歯が一斉に生えてきた。万国ビックリショーもびっくりの麻美の歯である。


「麻美ちゃんは、これで終わり。次の綾ちゃんを呼んできて。」

「わかった。みなみちゃん、ありがとう。」


みなみは思う。普通にしてくれていれば、みんないい子なのになっと。



「見えない・・・。」


美代先生は、ミクちゃんの歯を見て、虫歯を削りまくってやると思ったが、歯が見えないのでは、どうしようもない。


「先生、ミクの勝ちだね。」

「(ΦωΦ)フフフ…」


美代先生は、不敵に笑う。


「なめるなよ! 小娘!」

「何!?」

「歯科医学の力を見せてやる! ラムネを上げる。」

「ありがとう。」


ミクちゃんはラムネを口に放り込む。見る見る内にミクちゃんの歯が真っ赤になっていく。


「なんだ!?」

「さっきの薬が歯石染色剤だ。」

「騙したな!?」


ミクちゃんの全身の姿は見えない。しかし、口の中だけ真っ赤という、透明人間状態であった。美代先生には、口の中が見えれば十分である。


「コブラツイストは痛かったぞ、プロレス娘。」

「え!? そんなことしましたっけ!?」

「私は、歯の歯石落としは得意じゃないんで、手が滑ったら、ごめんね~♪ へへへ~♪」

「ギャア!? やめろ!? 人殺し!?」


美代先生は、みくちゃんの歯石落としを始めた。会話の運びには、問題があるが、美代先生は真面目に治療をしていく。



「綾ちゃん、口を開けてください。」

「はい。」


ついに細菌娘の綾ちゃんとの戦いが始まるかに見えた。


「ああ!? 綾ちゃんの歯に虫歯が無い!?」


今まで、歯からチョコバナナ、イチゴ、虫歯ランド遊園地を建設してきた、綾ちゃんの歯に虫歯がないのだ、前回、歯にフッ素コーティングをしたおかげである。


「歯科助手をしていて、こんなに良かったと思ったのは、初めて。」


みなみちゃんは、目から涙をこぼして、感動している。


「みなみちゃん、そんなに綾の歯のことを思ってくれてたんだね。」


綾も、今までの自分のおやつばかり食べて、歯磨きをしないで寝る不摂生を反省した。自分のためにみなみちゃんが涙を流してくれているのだから。


「みなみちゃん!」

「綾ちゃん!」


2人が抱きしめ合おうとした時だった。ピキピキっと歯を覆っていたコーティングに亀裂が入る。


「コケコッコー!」


綾の歯からニワトリが生まれた。


「え!?」

「うそ!?」


みなみちゃんと綾ちゃんは、驚く。


「コケコッコー!」

「どうして、ニワトリが!?」

「そういえば、昨日の晩御飯のメニューが、チョコチキンだったような!?」

「チョコチキン!?」


綾の口の中で、小さなニワトリが鳴いている。理由が、チョコチキンを食べたからだった。


「綾ママは、魔法使いか!? 新種の細菌を作り出す魔女か!?」


綾ちゃんのお母さんの趣味は「おかずおやつ」を作ること。野菜嫌いの娘のために、材料をおやつにして、料理を作っているのだ。


「ほほほほほ~♪」


みなみちゃんと綾ママは、全話、大学病院で会ったので、面識がある。そして、みなみちゃんは思う。


「綾ママを止めないと、綾ちゃんの虫歯は治らない!」

「みなみちゃん、カッコイイ~♪」


しかし、綾は、余計なことを思いだした。


「あ!? 昨日、お母さんがチョコチキンの出来が良かったので、インターネットで全世界に販売するって言ってたよ。」

「なんですって!?」


綾ママが世界中に、新種の細菌を拡散しようとしている。現在、新種の細菌を治療できるのは、美代歯科医院だけである。


「ああ!? 先生が言ったことを綾ママが、本当にやってたよ!?」

「みなみちゃん、大丈夫?」


みなみちゃんは頭の中がパニックである。綾も心配する。


「まず、綾ちゃんの歯を治療しましょう。」

「無理しないでいいよ?」

「大丈夫。私は最強の歯科助手なんだから。患者さんの歯を治療するのが、私のお仕事なんだから! 歯科助手だけど、シークレットライセンスも持ってるんだから!」

「みなみちゃん、カッコイイ~♪」

「ありがとう。それに綾ちゃんが呑み込んじゃう前に、ニワトリさんも助けてあげないとね。」


みなみちゃんは、綾ちゃんの歯の治療をする決心をする。


「みなみ! いきます!」


みなみちゃんの綾ちゃんの口の中の、ニワトリ救出作戦が始まった。


(そういえば、パンパンを助けた時も、こんな感じだったな。もしもペットで飼ったら、名前は、チキチキか、ニワニワになるのか・・・あんまり可愛くないから、引き取るのは止めておこう。)

(じゃあん~♪ ピンセット~♪ パンパンの時も強制的に摘み出した方が早かったのよね。えい! あ!? コラ!? 逃げるな!?)


「コケコッコー!」

「捕まえた!」


みなみちゃんは、ニワトリを摘み、綾の口の中から取り出した。ニワトリは助けてもらったので、みなみちゃんにペコペコ頭を下げている。微笑ましい光景だった。


「もう捕まっちゃあダメだぞ。」

「コケ!」


ニワトリさんは、診察室から去って行った。


「ふう。これでニワトリさんはOKっと。」


みなみちゃんは、引き続き、綾ちゃんの治療に取り掛かるために、他にニワトリなどの胃生物や新種の細菌がいないか、を確認しようとする。


「綾ちゃん、一度起き上がって、うがいしてね。そしたら、レントゲンを撮ってみましょう。」

「はい。」


みなみちゃんは、綾の歯のレントゲンを撮る。幸い他に新種の細菌は発見されなかった。


「よし、今日も歯をコーティングして、虫歯を防ぎましょう。」

「はい。」


綾ちゃんも、みなみちゃんが自分の歯のことを、大切に思ってくれているのが伝わっているので、みなみちゃんの言われることに素直に従っている。


「みなみ! いきます!」


治療を始める、みなみちゃんも仕事にやりがいを感じている。普通の虫歯じゃないけど、それでも困っている患者さんの歯を治せることがうれしい。


「綾ちゃん、終わったよ。」

「ありがとう。みなみちゃん。」

「綾ちゃんも、よくがんばったよ。」

「えへへ~♪」


患者さんから、感謝の言葉を言ってもらえることも、この仕事が好きな理由の1つである。金の亡者の美代先生とは、かなり違うのだ。



「おお!? 光ってる!?」


存在感の無く、姿が見えないミクちゃんの歯が、歯だけが光り輝いて見える。それを全員が驚いてみている。


「歯に蛍光塗料を塗ったんだ。これでどこにいてもミクちゃんがいると分かる。」


透明人間のプロレス娘は、口を開ければ、歯が光る女の子になったのだ。恥ずかしい時は口を閉じればいいのだ。


「美代先生。」

「ん?」

「これでミクも、みんなに存在を認めてもらえるんだね。」

「わ、私はただ、プロレス技を掛けられたくないから、やっただけだよ。」

「ありがとう。」

「どうもです。」

「みんな~♪」


照れ屋の美代先生は、営業用の口癖で、その場をしのぐ。ミクちゃんは、仲間たちの方へ、笑顔で駆けていく。


「ギャア!? 歯が襲って来る!?」

「怖い!?」

「みんな、どうして逃げるの!? ミクだよ!?」

「見えない方が怖くなかった!?」


光る歯が襲って来る。ポルターガイストも真っ青なホラーさ。


「あれ、そういえば、綾ちゃんの歯から生まれたニワトリさんがいないね?」

「キュル、キュル。」

「なに? パンパン。」

「キュル、キュル、キュル。」

「なになに、診察室から出てきたニワトリさんは、麻美ちゃんが食べた・・・。」


みなみちゃんは、ゾオっとした。見つめた、麻美ちゃんの口の周りには、チョコレートがべったりと憑いていた。


「ギャア!?」

「大丈夫? みなみちゃん。」


みなみちゃんは、恐怖のあまり悲鳴を上げ倒れ込む。それを支える美代先生。


「む、これは!?」


綾ちゃんが、壁に飾ってある。写真と表彰状に目が留まる。日本の総理大臣、中国の国家主席との写真と感謝状。国会議事堂の非常勤歯科医、渋谷大学病院の名誉教授の任命書である。


「もらったんだ。病院の宣伝になればと思って、飾ってあるんだよ。」


いかにも、セレブになりたい美代先生の考えそうなことだ。


「私も、ここに写真を貼る!」

「え?」

「私の写真を貼った方が、いい宣伝になるよ!」


綾は、自分の写真を総理大臣の横に並べたいだけである。(ΦωΦ)フフフ…。


「ワ~イ~♪ みんなで写真を撮ろう!」

「おお!」


綾ちゃんの提案で、全員で記念写真を撮ることになった。


「誰がシャッターを押す?」


しかし、次の問題が発生する。当然ながら、シャッターを押すと写真には写らないのだ。みんなで考え込んでいる。


「みなみちゃんは、ダウンして寝ているしな。」

「パンパンでは、肉球が邪魔して、ボタンが押せない。」

「ニワトリは麻美ちゃんが食べちゃったし・・・。」

「美代ちゃん、シャッターを押そうか~♪」

「いいよ~♪ ・・・て! ここは私の病院だぞ!?」


このメンバーでは、なかなか物事は決まらない。


「美代、遊びに来たぞ。」


そこに、渋谷ハチ太郎が、やって来た。


「誰?」

「美代の旦那です。」

「こら!? 違うだろう!?」

「美代ちゃんみたいな、ズボラな人間でも結婚できたの!?」

「そっちか・・・。」


こいつらは、私のことを何だと思っているんだ!? と思う美代先生だった。


「はい。」

「なに?」

「シャッターを押せ。」

「ええ!? 俺も写りたい!?」

「ハチ太郎、シャッターを押すか、ここに出入り禁止になるか、どっちがいい?」

「シャッターを押します~♪」


美代先生が好きな、ハチ太郎に選択肢はなかった。


「いきます! 3,2、1、パシャ。」


こうして、全員集合の記念写真が撮れた。


「また来週、写真の出来具合をチェックしに来るね~♪」

「歯の治療のためだろう・・・。」

「美代ちゃん、バイバイ~♪」

「もう来ないで・・・。」


こうして綾ちゃんたちは帰って行き、本日は無事に解散することができた。


「美代も大変だな・・・。」

「疲れた・・・。」

「さっさと俺と結婚すると、大学病院の御曹司の奥様として、悠悠自適に優雅に暮らせるぞ?」

「それも、イヤだ・・・。」

「ガーン!? 俺は、さっきの女子高生たちよりもダメなのか!?」

「桜吹雪、掃除しといてね。」


美代先生も、みなみちゃんの横に倒れるように寝転がった。歯科医師と歯科助手の2人は仲良しさ~♪


「みなみちゃん、後でラーメン食べに行こうか?」

「はい~♪ いきます! (⋈◍>◡<◍)。✧♡」


みなみちゃんは、目がパッチリ開き起き上がる。


「生き返った!?」


ほうきで掃除している八太郎は、ゾンビを見ているようだった。


「今日はチャーシューを2枚にしてもいいですか? (⋈◍>◡<◍)。✧♡」

「いいよ。」

「ゆで卵なんかも足してもいいですか? (⋈◍>◡<◍)。✧♡」

「いいよ。」

「お店のもやし、全部お持ち帰りしていいですか? (⋈◍>◡<◍)。✧♡」

「いいよ。ハチ太郎おごりだから。」


みなみちゃんは立ち上がり、桜吹雪を掃除しているハチ太郎に近づく。


「手伝います~♪」

「・・・ありがとう。」

「これも、もやしのためです! (⋈◍>◡<◍)。✧♡」


現金なイマドキ女子のみなみちゃんだった。


つづく。


おまけ。(⋈◍>◡<◍)。✧♡


みんなが気になる写真の構図はこうだ。


中央でカメラ目線で、美代先生と綾ちゃんが笑顔で握手している。まさに総理大臣・国家主席クラスの綾である。


後ろから、友梨と、口の周りがチョコレートだらけの麻美と、歯しか写らないミクが桜吹雪を舞い散らしながら、しっかり女子高生らしく写っている。


写真の端っこに、待合室の長椅子に寝転んで、目をグルグルさせている最強の助手みなみちゃんと、それを団扇で仰ぐパンダのパンパンが写っている。


もちろん八太郎はカメラを持っている指が、写真の隅に奇跡的に写っているだけである。


おわり(⋈◍>◡<◍)。✧♡

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る