第493話「マリカエル修道院の戦い・前編」 ランスロウ

 二つの偵察部隊が二つの異なる地点で、一つの敵部隊を観測した。騎兵、駱駝、荷駄駱駝、騾馬に引かせた車の長蛇の列。補給部隊だ。

 その観測日時の差と偵察部隊間の距離から行軍速度を割り出し、待ち伏せ位置を決める。この偵察部隊とその結果を補助するために飛行船が追加で航空偵察を行いつつ、通信の中継も担当している。

 敵地内での長距離行軍は辛い。行路は時間と体力と物資を計算し、予定を組んで動くもの。全てにおいて余剰は乏しく、追い詰められながら集団は動いている。これが出来ないようなら大規模作戦など実行出来ていない。

 行軍は低強度戦による妨害、天災と言わずとも荒天との遭遇で予定が狂って伸びる。短縮出来ることなどあるだろうか? 立てた計画が劣悪だった場合にはあるか。

 移動時間がそのような不幸で伸びれば人と家畜の水と食糧の消費量が増える。友好勢力が道中で支援してくれれば良いが、敵地ではそうもいかない。略奪するにしても奪う手間があり、抵抗を粉砕する手間がある。時間が掛かればまた水と食糧が減る。

 水と食糧が不足すれば家畜を手放すことになる。売るか放逐するか解体して食べるか選択肢はあるが、運べる補給物資は減ってしまう。

 補給物資が減ると、届け先の軍が弱る。餓えたり、弾薬が尽きたりして遂には撤退や敗退、自殺同然の突撃に追い込まれることもあるだろう。

 夏のエスナル内陸部は砂漠の手前。南大陸からの乾いた熱風が吹く。暑いだけではなく乾燥が酷い。布を巻いて顔を隠し、唇を重点的に肌に香油を塗らないとひび割れを起こす。

 乾いた荒野で野山羊が草を食っている姿が見られる。または、血の一滴も地面に零した痕跡も無く、脂肪までしっかり削がれ剥がれた皮、骨髄と軟骨を抜かれた骨、未消化の草、糞になった草が一か所に転がっている姿で発見される。野良と化したペセトト妖精が解体して食った後だ。

 ……繁殖して定着しないよな?

 南大陸出身で我々よりこの暑い乾いた環境に慣れている敵部隊はどれだけ苦しんでいるだろうか。湿潤なロシエを懐かしみながら待ち伏せ位置に陸戦部隊を向ける。

 待ち伏せ位置には、敵補給部隊が先に到達しない速度を出せる装備で向かう。今回は戦列機兵と野砲以上の重装備を本拠地にしているマリカエル修道院要塞に置いて出動。強化外骨格は車に乗せて四脚輸送機で引けば問題ない。

 余裕を持って待ち伏せ位置に到着。地形の陰、涸れ川の溝、藪の中、擬装網の下に隠れて待つ。

 敵補給部隊の行列の到着を待って迫撃砲による催涙弾砲撃開始。白い瓦斯が広がるように、風向きを考えて着弾。敵兵はその場に留まる気合を見せても家畜にそんな堪え性が無い。鳴いて暴れて逃げる。荷物を落とし、引きずり、衝突し合う。車両に縄で繋がれたまま走って兵士を轢く、足を潰す。絡まって倒れる。

 自制心のある敵兵の一人が火箭を空に向けて三つ発射した。空中で炸裂、色付きの煙が赤赤黄、信号弾。あちらの暗号は解読していないが、救助要請以外に無いだろう。

 敵の行列の横合いから、隠していた歩兵部隊を前進させて射撃開始。

 荷駄馬代わりの四脚輸送機に機関銃を搭載したまま歩かせて、適切な射撃位置に素早く移動して射撃する手法を採用。砲兵のように待ち構えることなく、積極的に前へ出られるようになって火力は先の戦争より向上。

 敵補給部隊の戦闘部隊は踏み留まる。防毒覆面を着用して反撃の姿勢を整え、銃兵が銃口、弓兵が石鏃をこちらに向けて反撃開始。

 こちらの歩兵は、まずは密集隊形で上向きに反らす磁気結界装置を起動する。戦闘用陶製鏃の弩兵が結界の裏から非金属射撃。

 互いの非金属武器が通る。虫人騎士の豪弓が、こちらの隊列に対して斜めに矢を射って二人、三人とまとめて胴を貫通、腕を切断してくるのが脅威。熟練兵でもその様を間近にすると腰が引ける。

 弩兵が矢を再装填する中、金属弾を防ぎながら小銃兵は、上に反れる動きをする小銃を手と肩で支え、結界が解除された瞬間に出される射撃号令で統制された一斉射撃をしてから短時間連射。機関銃が弾倉を、正味半分撃つまで発射した後に結界再起動。

 機関銃兵が豪弓で装備毎破壊、殺害される。機関銃兵は雑兵よりも虫人騎士に射撃を集中して動きを牽制するように動き出す。

 磁気結界作動中に矢、解除中に銃弾を放つを交互に繰り返す。

 次に別動隊、ヴァンロット大佐の強化外骨格部隊が敵補給部隊の先頭集団に向かって矢避けの木盾を構えて疾走、突撃。連発銃と擲弾銃を撃ちながら接近し、撃ち終わってから磁気結界を起動して陶製の斧槍を持って打ち掛かり、蹴り飛ばす。騎兵隊を持たない我々の、突撃騎兵の代替。

 敵の荷役は我々がいない、東と南に向かって荷物を捨てながら逃げる。

 荷物は後で回収することが出来る。人も後で集まることが出来る。ヴァンロット隊は即座に荷役への追撃に移って理術式拡声機を使い降伏勧告を出す。

《降伏しろ、死にたくなければその場に座れ! ロシエ皇帝、エスナルの守護者に忠誠を誓う者は我々が助ける!》

 魔王軍はエスナル南部を征服し、現地人を徴用しながら北進してきている。先のアレオン戦争、聖戦も含めて、ロシエに忠誠心を持ちながら敵方に残留してしまった人々が数多くいる。彼等のような不幸な者達の解放は人手を愚かに消耗するエスナルの助けになり、それ以上に敵軍の分断を招く。場合によってはこの場で協力者を獲得できる。

 敵補給部隊の戦闘部隊は劣勢へ傾く。車両、荷物、殺した家畜を盾にして、勝ち目が消えている。

 上空を大回りで旋回しているせいで時折存在を忘れそうになる飛行船からの信号を信号員が受け取って暗号解読して報告する。敵にも見える位置から発するので暗号表が必要なようにしてある。

「司令、南方から街道を北上して来る敵騎兵隊が接近しています」

「ご苦労」

 中東街道沿いの占領拠点間を巡回している騎兵隊が信号弾に反応して来たのか。

 敵戦闘部隊の劣勢状況から、歩兵部隊から戦力を引き抜いて敵巡回騎兵隊に対応する射撃陣形を取らせる……前に、状況の変化を悟らせる前に、降伏勧告を理術式拡声機で出す。まずは射撃停止命令を出して、撃ち止んでから。

《こちらはロシエ帝国独立戦略機動軍司令ランスロウ・カラドス=レディワイスである。武装解除して降伏せよ。諸君の敢闘には敬意を表す。我々は決してベルリク主義者のような殺戮をただ望む残酷な者ではない。抵抗を止めたのならば身の安全を保障する。また捕虜交換の場が設けられたのならば誠意を持って対応すると約束しよう。既に諸君の補給任務は失敗している。そこに置かれた物資を運ぶ手段は無い。そちらの指揮官には、もう役目を終えた非戦闘員をこれ以上不幸にしないための賢明な判断を望む》

 敵指揮官、虫人騎士が家畜の死体の陰から、布を槍先に付けて降伏旗にしながら立ち上がった。降伏確認。

 荷役である非戦闘員はヴァンロット隊が集結中。

 歩兵部隊を三つに分けて仕事を分担させる。

 一つはその場に止めて警戒。

 一つは前進させて敵戦闘部隊の武装解除をさせる。

 一つは敵巡回騎兵隊を待ち構える南向きの防御陣形の構築を急がせる。地形の起伏を利用し、浅い塹壕を掘らせる。放棄された荷物で壁を構築。

 捕虜となった敵指揮官と面会する。こちらの防御陣形の構築を見て、降伏旗の竿にした槍の柄を殊更握りしめる。分かりやすい奴のようだ。

「先ほど降伏勧告を出したランスロウ元帥です」

「騎士エスルキア、この隊を指揮していました」

 この虫人騎士の恰好は金糸銀糸の刺繍入りの絹装束で、布巻兜には南国鳥の飾りと宝石。甲冑、刀にまで細工彫りである。そしてそれらには銃弾が当たって裂かれ、穴が開き、へこんだ跡が見られる。

 重傷にはとても見えない。出血も確認できない。虫人の外骨格は適切な角度と勢いが無ければ銃弾も滑らせ、強靭な体力は分厚い兜甲冑を装備出来る。こんな時代錯誤の者の、狙撃された間抜けな死体が見たいと思う。

 軍服は細かな階級章の違いだけで指揮官狙撃を防ごうというのが現代軍の流行だが、彼等はまだ中世のままで派手で重装甲。古い連中を率いる古い軍隊ならこれが正解なのか?

「英断に敬意を表します。降伏はお辛いでしょう」

 騎士エスルキアは南方を、左の上の大きい腕で、無言で指差す。

 こちらは陽光に向かって手でひさしを作りながら、南へ針路を取り始めた飛行船を見上げる。

「そちらには竜がいないのですか」

 いないと分かって言ってみれば、虫の顔が下を向く。表情筋は無いものの、悔しい心持ちを隠し切れていない。彼は意外に若いような気がする。もしかしたら年下?

 魔族は老成してからなるものという常識が変わってきているという話があったが真実か。

 陣地を固めて、武装解除を完了させ、捕虜を一か所に集めて監視をつけてと準備を整え終えてからようやく、敵巡回騎兵隊が双眼鏡で確認出来る位置まで来た。

 あちらもこちらを確認出来る距離で、単眼鏡を構える虫人騎士と望遠鏡越しに目が合う。それからその騎士が何か指示を騎馬伝令に出し、その一騎だけ馬首を返した。増援を呼びに行ったか?

 あちらはこちらを遠巻きにしたまま攻撃をして来ない。

 その待機している敵巡回騎兵隊に飛行船は針路を合わせた。風に弱い上に旋回能力が驚くほど悪いのに、周辺情報を発信しながら航空攻撃までの流れを一日内で出来たのは素晴らしい技術だ。

 飛行船の下から、陽光に反射して光の筋が幾つも見えて、敵巡回騎兵隊は散開を開始、地面に刺さる。投下矢をほとんど避けてしまった。反応が素早いな。

 攻撃する物体を火薬で飛ばすのが大砲、運んで落とせるのが飛行船。同じ結果を目指しても経過の違いから上手くいかないこともあるな。

 その投下矢を落とし終えた飛行船から旗流信号が出る。信号員が受け取って暗号解読して報告。

「北西方向から敵と見られる集団が接近中とのことです」

「ご苦労。応援要請を出せ」

「は」

 挟撃されると辛い。対応能力を越している可能性は常にある。

 次に騎馬斥候を出して示す北西の方角を見に行かせる。先の虫人騎士が出した伝令の方角とは違う。信号弾に反応したにしては時間が掛かり過ぎて、遠過ぎる気もする。

 防御陣形を方形にして全周対応出来るように再構築させる。巡回騎兵隊と新部隊、どちらが脅威か?

 騎馬伝令が戻って報告。

「”野良”ペセトト兵です。指揮官に亜神は見当たりませんでした」

「ご苦労」

 血と火薬の臭いを嗅ぎつけたか。

 水上都市襲撃で上陸して生き残り、行き場所を失った”野良”ペセトト兵はエスナルを彷徨っている。移動する狩猟民のように人も家畜も襲って、不足すれば仲間も食べながら動き回る。勝利を目指しているというより殺人と食人を目的にしている。

 行動の規則性も皆無。夜行性、昼行性、縄張り意識がある等の特徴を持つ野獣の方が秩序立っている。軍律は不明で己の死を厭わず、不眠不休で動くこともあるので起床してからの行動限界時間もよく分からない。

 妖精種族は基本的に持久力に優れているので、人間の感覚で彼等の体力を考えると読み間違える。古代エーラン帝国では長距離追撃部隊として妖精部隊を最後まで温存していたという戦例もあるし、妖精解放前のロシエ軍でも似たような運用をしていた。

 敵巡回騎兵隊がペセトト兵の接近に気付くまで少し時間が掛かる。

 迫撃砲部隊にはペセトト兵への砲撃準備をさせ、先制攻撃用意。

 ヴァンロット隊に機関銃部隊の移動を補佐するため、荷物持ちとして付かせて北西方向へ移動させる。

 ペセトト兵の呪術投石は恐ろしい殺傷力を持っている。ほぼ必中、旧式小銃の時代にはまず間違いなく撃ち負けた。

 先制攻撃部隊とペセトト兵の距離が射撃可能範囲に到達してから催涙弾を優先して砲撃させる。苦痛に関しては麻痺しているような連中だが、防毒覆面を持たず、目と鼻が使えなくなって呼吸困難になれば足が鈍って進行方向を誤って、肺が病んだ状態で走り続けるから直ぐに疲れ果てる。

 足が止まってから、攻撃的な機関銃射撃を実施してペセトト兵を掃射。今の銃弾なら射程外から先に殺せる。至近距離で森の中というような条件が揃わない限り、現代軍は呪術投石相手だろうと撃ち負けない。

 ペセトト兵への勝利がほぼ決定してから双眼鏡で敵巡回騎兵隊を覗く。また単眼鏡を構える虫人魔族と望遠鏡越しに目が合う。

 来るか、来ないか?

 あちらが胸に手を当て礼をしてきて、撤収を始めた。あれこそ昔ながらの古い魔族の仕草だろう。

 次は捕虜を連行する用意と、下した補給部隊の物資をどれだけ回収して焼いて破壊するかを決めないといけない。

 戦闘員も非戦闘員も、ロシエ皇帝か魔王か、どちらに忠誠心を置いているか聞き取り調査をしないといけない。こちらに忠誠があっても養う家族が魔王軍占領下にあって、簡単にはロシエに帰順出来ない者だっている。

 後は捕虜交換名簿の整理をしないといけないな。


■■■


 戦況。ロシエ軍は春に、南エスピレス戦線から全面後退を強いられた。理由は単純、エスナル兵が無茶な戦闘を繰り返して減り過ぎて防衛線が穴だらけになって各個包囲撃破されて壊滅したからだ。

 物的損耗が無敵の精神を凌駕する。馬鹿かあいつら。

 モズロー元帥の軍は後退に成功している。チタク猊下には傍にいてもらい、エスナル人の真似をして馬鹿みたいな消耗戦に巻き込まれないようにして貰った。あの人にはこの地で通じる神通力がある。

 呼び方は定まっていないが――敗残兵と民兵と協力的な住民全世代、老人はともかく子供も愚かに戦う――軍民集合体は、排除された主街道沿い以外では苛烈な抵抗をしながら暫時後退と前進を繰り返して出血多量である。

 春からの戦線後退で急激な変化が無かったのは彼等の命知らずな低強度戦闘のおかげとも言える。だが、この馬鹿共が粘るせいでエスナル正規兵も引くに引けない。正規兵が引かないなら軍民集合体も引かない。間抜けな意地の張り合いがあった。

 ”魂は腐らず、心は折れず、骨が砂になるまで滅びない”。平時に唱える奴は馬鹿だし、戦時に唱えるのも馬鹿で、実行するのは本当に馬鹿だ。

 せめてアラック人程度に”魂を燃やせ”ぐらいで止めておけばいいものを。競争意識を燃やして具体的にして実行するのだから馬鹿もいいところ。

 エスピレス地方を縦貫する主街道は西岸道、東岸道、中央道、中東道に分けられる。

 西岸道はエスナル湾から海軍が見張り、完全封鎖ではないが魔王軍の利用を限定している。再編中で新兵ばかりのエスナル正規兵と新規派遣したロシエ正規軍が守る。

 東岸道も西岸道に準ずる。鉄道が走っているので、列車機動で作戦展開可能なモズロー軍が加わり優勢。

 中央道は半ばまで、中東道は北エスピレス中核手前まで魔王軍が掌握。

 中央道は内陸の貧しい地域を縦貫する道である。この道半ばにあるマリカエル修道院を中心に我々独立戦略機動軍は要塞を建築し、ここを無視して北上しようとする敵補給部隊を優先して狙っている。先の戦いが正にそれ。

 抵抗激しく補給も難しいエスナル内で、陸運するしかない補給部隊を切られた敵軍は戦えなくなって作戦を延期するか、逃げるか、餓えるか、討ち死にするしかない。

地上と空からの三角偵察で待ち伏せしては潰すを繰り返して侵略を食い止めている。

 中東道では、前線司令部が設置されているプエルドス市より南にあって盾の役割を果たすメルヴィラ市近郊にまで魔王軍が到達している。

 我々が一撃離脱を繰り返している補給部隊の行く先は、このメルヴィラ市近郊にいる魔王軍主力だ。魔王親征、直率部隊と目されている。

 メルヴィラ市の規模は大きい。ここが陥落すると大量の人命と物資が失われ、また魔王軍の強力な前進基地となる。陥落は賢く避けたい。

 前線司令部から手紙が来ている。

 チタク猊下から”ランスロウ将軍は戦場がまるで地上から鳥のように見えておられるかのようです。まるで獅子公シアドレク、大略奪公シャルカード=テルクバザルのようですね”と、戦果報告に対するお褒めの言葉から始まって、エスナル軍内の事情を事細かに伝えてくれる。

 具体的に欲しいのは、我が独立戦略機動軍の作戦に乗ってくれる実働部隊指揮官がいるかどうかという情報だ。どの時期にどの程度の戦力をあてに出来るかということは常に把握していなければならない。把握出来ていれば、電信一つでチタク猊下に出撃を依頼出来る。

 エンブリオ枢機卿チタクともあろう聖なる方に内偵めいたことをさせているのは流石にどうかと思うが戦時故仕方が無い。使えるものは使う。

 チタク猊下はこのマリカエル修道院、最前線で戦いを学びたいと言っていたがそれは拒否し、前線司令部から応援して貰うことにした。そちらの方が実利的で、きっと将来の猊下の仕事はそういう方面であると思う。白馬に跨って鞭で指揮する姿は似合わない。

 このマリカエル修道院は、いつでも捨て石の一つに出来るようにと考えている。ここは心臓でもなければ脳でもなく、傷つくためにある盾だ。

 向上心は若く情熱的で立派だが、やはりチタク猊下は前線に居られると困る高貴な方だ。その辺で横死でもしてろと見捨てたくない人柄がある。そのように困らせることによってモズロー元帥に無茶をさせないという裏技を使えたわけだが。

 モズロー元帥からは、自分のエスナル将校からの評判が悪いことを伝えてきている。何やら事細かに、隣り合って小便している間に喋ったような言葉まで拾い上げたぐらいに書いている。記憶力の良さと筆まめさは好ましいところ。

 ”同性愛野郎は我々が剣を握っている間に穴を掘っている”という言葉があって、それは現実の揶揄だ。下らない南エスピレスでの消耗戦は無視して、独立戦力機動軍はマリカエル修道院の要塞化工事に当たっていたことを指す。救援要請は”戦線の立て直しをすべし”という助言で終わりにしている。従えば状況は今より良かったはずだ。

 前線司令部にもモズロー元帥にも独立戦略機動軍への指揮権は無い。我々は”独立”を冠するように独立して動いているのだ。何を勘違いしたのか命令文書まで送付してきたこともあるがそのまま返送している。

 これに加えて、独立戦略機動軍がメルヴィラ市に入って魔王軍と直接対決しないことを批判しているエスナル将官がいるそうだ。流石にこの点に関しては満場一致で批難はしていないようだが。

 あとは、独立戦略機動軍は人命を守っていないという批判で、ややその通り。我々はロシエ国家を守ることが目的で、それは国民を守ることと同義ではない。エスナル人の気分次第で揺れる人気など気にしない。

 我々は”戦術”機動ではなく”戦略”機動だ。どこかの将軍の手駒ではなく、政治戦略の分野に干渉して状況を変える――そのような努力――目的で動いている。目線が違う。

 他には、ベーア帝国では春にマウズ川の上流域を帝国連邦軍に突破されて内部に食い込まれ、ゼーべ川の線まで追い込まれつつあるという話が別紙で送られてきた。エグセン中核部まで猶予は少ないということ。

 遠い話だが、今の世界を考えるとそことここが繋がるのも遠くない気がしている。戦略機動であるから、あちらに派遣ということも有り得る。あちらとの外交関係はにわかに敵対関係のままだが、政治外交で対処不能な程に深刻とは思わない。

 マリカエル修道院の物見台から、捕虜交換の使者が来たと伝令。門前にて単騎、非武装の虫人騎士が白旗を掲げて待機中とのこと。

 城壁から覗きに行くか? 一人相手にこそこそとするのは癪だが、いきなり通して会うのもな。

「お待ちください」

 ギスケル卿が自分の肩に手を置いてから外へ行く。

 何とも嬉しい気配り。この身に余って心に染みる。

 触れて貰った肩を触ろうかどうか卑しくも考えているとギスケル卿が、先程より上機嫌とまでは言わないが、何かあった目付きで戻って来た。

「アリル卿は敵ながら信頼出来る方です」

「ご存じで?」

 アルベリーン騎士団の古参となれば魔族との面識もあるだろう。

「ロセア元帥が参加したアレオンでの戦いで面識があります。ハザーサイールの代表を務める程の高級職ではありませんでしたが、今日のような小さい交渉では誠実に対応していた記憶があります」

「……なるほど」

 何十年前の話だ? 前のアレオン戦争の前の、先の聖戦のアレオン戦線の前の、その前は……小競り合いを入れて、最低で三十年より前。いや、探ろうとするなど淑女に対する紳士の態度ではないな。

 もしもに備えてヴァンロット大佐には使者と別の”お客様”が暴動を起こさないように監視して「必要なら催涙弾を撃ち込んで鎮圧するように」と指示しておく。

「司令が変な冗談を言わないのは分かりますが、本当にそれでいいんですね」

「命令文書と署名が必要かね?」

「いえ。了解」

 安全を確保してからアリルという者を、修道院の中には目隠しをした上で招き入れることにした。それでも魔族なら音だけでとんでもないところまで把握しかねないので軍楽隊に練習演奏をさせる。また兵士達には全員、言葉を発するなと厳命。雑談から漏れる弱点もある。何もかも堂々として足を掬われては間抜けだ。

 応接間で虫人騎士アリルと面会。

 虫人魔族は外骨格の大きさと形、色合いが個々人で微妙に異なるらしい。はっきり判別出来る程見慣れていないその顔だけでは分からないが、衣服と雰囲気から、望遠鏡越しに目が合った者ではないか?

「マフキールの息子、アリルと申します。先の戦いはお見事。そこで捕虜となった者達を、交換条件にて解放して頂きたい」

「独立戦略機動軍司令ランスロウ・カラドス=レディワイス元帥です。慣例に倣うならば応じましょう」

「それでは……」

 互いに捕虜交換名簿を突き合わせる。駐在のエスナルの連絡将校と、民間人と兵卒、将校と要人を比べて価値の等価を行う。基本は人と人の交換だが、要職に就いていない者なら身代金で応じることも可能。これが聖戦以来の慣例で、戦争が終わったら無条件全解放ということになっている。

 交換する者を決めてから、次に地図――地形情報をどれだけ把握しているか把握されないよう、手描きの簡略図――を見ながら交換場所と日時を決めて、アリル卿から出した手に握手して妥結……く、これではこちらが傲岸不遜のようではないか。

「身代金での解放ですが、今日この場、先払いでお願いしたい。軍役期間を間も無く終える者達がおります。一人目は……」

 アリル卿は鋳造所と重量が刻印された金塊を並べ、それから個人名を三十七名、それも端役のような者を諳で挙げるので名簿の名前を指でなぞりつつ確認。

「……以上です。職務が終わったのに捕虜のままでは哀れだ」

 エスナルの連絡将校も感心したように頷いている。エスナル人め、せめて腹芸くらいしろ。

「誠意の証として応じます」

 先に出した握手で、格好つけさせられて”応じる”と言わされている気がしてきた。あれが無くても応じたが。

 先払いで解放した捕虜三十七名、門前で会わせればアリル卿を見て泣き崩れる。エスナルの連絡将校などは貰い泣きしている。腹芸ぐらいしろ。

 人徳がある。殺すべき時と場所ではないが、ここで逃すのは失敗ではないか? いや、それは発想がベルリク主義だな。

 アリル卿と解放した捕虜一行が去った後で、飛び出しかねないから一か所に、強引に閉じ込めていた”お客様”を解放。厄介なものを押し付けられた。

 ヴァンロット大佐が何か言い訳したそうな顔でやってきて、その肩を押し退けてキドバの摂政女王ガンベが地面でも揺らしそうな勢いで自分に詰め寄ってくる。馬鹿らしい。

「復讐の機会を何故与えてくれないのですか」

 これは捕虜交換と、修道院の要塞化以来、戦闘に連れて行かなかったことに対する複合的な抗議だ。祖国が虐殺誘拐略奪の惨禍にあったというのに、何故お前らは……という押しつけがましい感情が丸出し。

「キドバ兵の士気の高さは買います。それ以外は評価しません。我々に、あなた達の暴動を鎮圧させるような真似はさせないで下さい。女性を害したがらない兵士は多いですが、それを逆手に取って甘えるのは止めてください。邪魔をしに来たかと言わせないでくださいよ。強引に戦場に出たがっているのはそちらです」

 女王は黙るが、不満を隠す腹芸など教わっていない顔をしている。目と鼻の穴が膨らんで大層ご立腹だ。

 全く視線と鼻息で人が殺せるなら習得したいものだな。


■■■


 後日、日時を合わせた捕虜交換を約束通り終えた。エスルキア卿がアリル卿に対して申し訳なさそうにしている姿を見て嗤いを堪えるのに大変だった。昔の己の姿の一つ。

 その翌日に敵軍四万が攻めてくる姿が飛行船により確認される。マリカエル修道院の戦いが始まる。

 こちらの戦力、陸戦兵力五千、キドバ軍一千。各種理術兵器により一万と一千と勘定して、守備側三倍力と言われる言説をつけ加え、数を比べて足りぬ七千は気合と工夫でどうにかする。

 正々堂々と正面から入って来た潜入工作員としてアリル卿が要塞の情報の一端でも流していると思う……いやそこは正々堂々と伝えていない? 何故か信用したくなっている。古い魔族の人徳か。

 魔王軍はマリカエル修道院を無視する方針を改めたらしい。脅威度は低いはずだったが我々が高めた。魔王は偵察と解析が足りていないな。

 メルヴィラ市攻略前に魔王軍が全力でこちらに攻めて来たら辛かった。しかし間抜けにも主力をあちらに残しながらこちらも同時に陥落させようと画策するとは侮られたものだ。兵も物資も無限に有るわけでもあるまいに。

 飛行船の偵察情報から侵攻して来る敵軍の編制を解析しつつ、手立てを用意して要塞の最終整備点検をさせる。

 偵察、斥候部隊の撤収、潜伏部隊再配置。

 前線司令部、特にチタク猊下へは状況を複数想定して事前に書いておいた指示書に、手直しを入れて送る。

 敵軍四万、包囲陣形の構築開始。障害物も視界を遮る地形も何もないここから、物陰に隠れられない敵砲兵へ対砲兵射撃準備。

 こちらは直ぐに長射程の重砲から使える。あちらは持ち運びやすい野砲主体。

 待ち構えた状態で重砲を撃つ。敵はこちらの有効射程圏内に入って対砲兵射撃に耐える陣地を組んで、照準を調整して観測射を行ってからと手順が多い。まずその準備が出来ないように砲弾を撃ち込み砲兵、大砲、弾薬を殺傷破壊。

 砲撃を続けながら昼から夜へ。夏場の乾燥は雨も雲も遠ざけて、新月だろうと星明りが強い。夜陰に隠れられる程に暗くない。

 敵砲、次々と破壊。潰しきれないだけの大砲を無数に用意して、次々補充出来るなら話は別だが、そこまでの門数も輸送能力も確認できない。

 包囲を完成させるにはこの平原要塞は広い。戦列機兵に工兵装備を持たせれば人間や馬が使う鋤など玩具と呼べる作業量を叩き出せた。春季を丸々、馬鹿なエスナル人共が死んでいる間に築城したのだ。そう簡単に落とせるものか。

 この修道院要塞は複数の城門を備えて、一見城壁に脆い箇所が幾つもあるように見える。しかしこの門を抑えないと、要塞の逆襲部隊が出てきて、薄く広がって局所的に弱体化している包囲軍の一角を攻撃してしまうのだ。

 門全てに、逆襲部隊の攻撃を跳ね返せるだけの部隊を配置するとなると包囲軍の規模は極端に大きくなる。

 大きくしなければ、要塞に守られながら背後と退路を気にすることなく逆襲部隊は各個撃破を繰り返して遂には包囲軍を圧倒してしまう。

 一つに絞って城門突破を狙うという手もある。これだと要塞に対する補給は切断できないし、封鎖されていない門から逆襲部隊が好き勝手に出入りする妨害行為に気を揉み続けることになる。

 敵軍はこの要塞に対してどうしたか? 全方位から縦の攻撃塹壕を掘って進んで、時に横にも掘って蜘蛛の巣を外側から張るように進んできた。

 どうにかこちらの要塞に砲弾を撃ち込もうと砲兵部隊の配置を昼夜、移動したり欺瞞したり偽大砲を用意したりと工夫してくる。

 しつこく、掘って進んでくる幾つもの塹壕を、砲兵陣地を、毎度砲弾で叩き潰して回っては備蓄が心許ない。戦闘を長引かせ、野良ペセトト兵を呼び集め、自軍の兵士に捨て身の突撃をさせてきたなら備蓄は底をついて工夫の無い血塗れの白兵戦になるだけ。

 こちらも工夫する。包囲陣の一角へ逆襲開始。

 塹壕に隠れている敵に榴弾は利き辛い。逆襲準備射撃には榴弾を混ぜるが催涙弾主体で砲撃して煙で埋める。視界を奪ってこちらの逆襲部隊の発見を遅らせる。

 ここでキドバ軍に突撃先鋒を切らせるか迷ったが、統制が利かない連中を繊細な作戦に入れたくない。駄目だ。

 戦列装甲機兵主体の逆襲部隊を城門の一つから出撃させる。催涙瓦斯で防毒覆面の着用を強制されて統率と戦闘能力が弱体化した包囲部隊の一つへ機関銃掃射を加えながら突撃し、火炎放射器と白兵戦で一掃。

 この逆襲部隊には敵迎撃部隊が復讐に出張ってくる。そこで戦列装甲機兵の重装甲を生かし、中央に兵士が逃げ込める方陣を組んで荷車ならぬ機兵要塞と化して待機。逆襲の、攻撃姿勢で無防備だった姿を変える。

 マリカエル修道院、この要塞の外、平らで隠れる場所も敵が掘っている最中の使いづらい塹壕しか無い中で、脆い姿を見せる逆襲部隊そのものを一瞬にして城にした。

 機兵要塞が逆襲から転じて防御戦闘をしている中、砲兵が支援射撃を開始して敵迎撃部隊を撃退してから後退させる。

 こちらの重砲の射程圏外には敵の宿営地、物資保管所が設営されている。それを飛行船で狙う。使用兵器は集束焼夷弾で親弾と子弾に分かれる。

 親弾は容器で、空中投下後に風圧で羽が回って一定回転数に達すると開く。開けば内部に納められた複数の子弾が広範囲にばら撒かれる。

 子弾は六角形の細長い鉄筒で腕一本程度の長さ。接触信管を採用し、信管が地上に当たるよう頭に錘、尾に吹き流しをつけて横倒しにならないよう姿勢を安定させる。

 焼夷爆弾として火薬と混合油脂を採用。爆発すると油脂が散ってカスになるまで燃え続ける。

 この油脂は管理が難しいので長期飛行が見込まれる時には積まず、時間のかかる先の補給部隊襲撃には使っていない。空気に触れて自然発火することがあるのだ。

 油脂は、普段は冷暗所で金属缶に分離して保管することになっている危険物。この夏の猛暑と乾燥から自然発火の危険性は高いらしい。親弾に封じ込めるのは火災事故を防ぐ目的がある。

 マリカエル修道院の物見台から爆撃の様子を双眼鏡で眺める。投下された親弾がしばし降下してから二つに割れ、子弾が散らばって落ちる。信管が作動する前に早くも油脂が自然発火し、一部が誘爆した。燃える油脂、焼ける吹き流しを火の雨のように見せて降る。そして彼方に赤い炎、黒い煙が幅広く昇った。乾いた草原に野火をもたらして更に広がる。人や家畜が混乱で暴れまわる。延焼、火災が頻発。

 弾薬庫を焼いて誘爆する様を見せて貰いたいが……初回は見えなかった。狙撃するようには攻撃出来ていない。見た目は派手だが精密攻撃からは程遠い。

 時間を掛けて旋回して戻って来た飛行船の船長から戦果報告を聞けば「何らかの物体を焼いたことは確信しますが」という程度。大規模運用しないと駄目そうだな。

 低空飛行で狙って爆撃すればはっきりとした戦果が上がるはずだが、飛行船には装甲が無い。ましてや敵軍には虫人騎士が複数いる。あの豪弓の矢で射られれば底が抜けて人に機械に気嚢も壊れてしまう。

 何にしてもマリカエル修道院の周辺は、せいぜい山羊や羊を放す程度の生計しか立てようのない貧相な荒野。乏しい水源から細々と農業が営まれるが一軍を養うことは到底不可能。人口も少なく蓄えなどあったものではなく、略奪で補給するような中世的なやり方も不可能。焼き討つ程に相手は餓える。

 ここは難攻の要塞。これを不落にしてしまうとしたら敵指揮官の無能さ、魔王軍の能力限界、つまり魔王が無能であることが原因。イバイヤースめ、二度勝ってみろ!

 昼夜通して包囲部隊の一角への逆襲と機兵要塞による手堅い一撃離脱を繰り返す。

 飛行船には物資を焼かせ続ける。人と砲の数が大量に必要なこの要塞を、十分な数を維持出来ないようにする。

 飛行船からにわかに野良ペセトト兵が、ほぼ全周から集結中との報告が上がる。奴等は補給物資を持ち込むような上等な真似をせずに共食いすら始める獣以下の蛮族と評するのも蛮族に失礼な害虫。魔王軍と餓えから同士討ちでもしてくれればいいが。

 順調。マリカエル要塞には時間を掛けて物資弾薬を集積済み。水は地下水脈から湧き出る泉があって無制限。

 順調な中、ガンベ摂政女王が「逆襲部隊に参加させてください」と陳情しに来た。秩序を乱そうと言うのだ。

「無駄死にしたいなら自由にどうぞ、などと司令官である私が言うとでも思いますか。無断出撃には私はきちんと、命令違反で無様に突っ込んで無駄死にと報告を上げますよ。同情して貰いたいなら敵に言ったらどうですか。どうか、我々の突撃を受けて壊走するような陣形を組んでくださいと」

 女王に殴られそうになり、ギスケル卿が拳を掴んで止めた。

「お立場が無ければ顔を潰してますよ」

 ギスケル卿がそう言うと女王は唸るのみ。

 全く躾がなっていない。南大陸に派遣されていた軍事顧問団は一体何を教えていたんだ……ああ、訓練された連中は全滅したんだったか。

 近衛隊の皮を被った女民兵とは、改めて感想を思い浮かべても使いづらいとしか言いようがない。ポーリ宰相め、これも”戦略”か。

 敵がペセトト兵という増援を得るように、こちらもチタク猊下によって派遣されてきたエスナルの騎兵隊が到着し始める。

 マリカエル修道院を金床、騎兵隊を鉄槌に見立てるという、基本的で非常に攻撃効率の良い布陣が完成する。

 逆襲部隊が敵包囲部隊の一角を攻撃して拘束、騎兵隊がその背後を襲撃し、砲兵が全般的に支援射撃を実行。

 その間にも飛行船が、命中精度は悪いが集束焼夷弾を物資や敵兵、敵砲に直接投下して火炎で焼き払う。

 敵軍の包囲戦力が削れ、遂には全周を囲むような包囲陣形を維持出来なくなって、陣を撤去し、こちらの重砲の射程圏外に砲兵陣地を設置し、追撃を受けても十分に迎撃出来るような形で撤退を始めた。慌てている様子は無い。

 追撃部隊の編制と出撃を考えたが、ペセトト兵が依然として周囲をうろついている。敵軍の撤退の仕方も慎重で、あれを追いかければ野戦に引き込まれると判断。二度目の包囲を実行する余力を削ぐために集束焼夷弾爆撃を続けながら彼等の姿が消えるまで警戒を続けた。

 最後まで油断せず、敵包囲軍が去ってからもペセトト兵の掃討を各個撃破の形で繰り返す。

 ここでようやくキドバ軍を出撃させた。叫び声ばかりは派手で、能力はまあ、訓練は腐らず続けてきたと言える程度には働いていた。

 駄目な要塞とは、金ばかり掛かって無視されるもの。四流とすら呼べない。

 三流の要塞とは立て籠もって陥落を凌ぐぐらいしか出来ない。

 二流の要塞は能動的に敵の行動を阻害出来る。マリカエル修道院要塞はこれ。

 一流の要塞はそもそも相手国に戦争をしようという気すら起こさせずに経済的繁栄を享受させるもの。理想的過ぎて実現困難。

 独立戦略機動軍としては今からでも準一流くらいのことをしたい。そのためには要塞で防ぐ以上に敵を撃滅させるぐらいの策を講じたい。魔王軍に北進を諦めさせる致命打のような何か。

 ……簡単に思いついたら誰も苦労しないな。

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