第169話「帝国連邦総統」 ベルリク
「推薦状が四つ。大図書館館長とシャクリッド州総督からの影響力の行使、大袈裟ですね。だが若者らしくてよろしい。可愛げの無い年寄りと違って好きですよ」
「大袈裟、ですか」
「己の影響力は自覚された方がよろしい」
「登録前ですが」
「何十万もの軍を既に動員出来るあなたですよ」
「いえ、二百万は確実ですが」
「尚更です……二百万?」
「防衛用の民兵の動員なら、ですね。攻撃用ならその何十万です。まだ発展復興と訓練、組織の整備の途中なので日々数値が変わっておりますので、明確な数値は確かに言えないのです」
「なるほど」
政治の意志決定の場でもある大宰相邸に赴き、赤茶の革鎧に身を固めた昆虫のような姿でいてしかし頭良さげな官服が似合っている魔族、アークブ・カザンの息子ダーハル大宰相と直接”帝国連邦”の、魔神代理領共同体への加入申請手続きを行っている。
帝国連邦の構成国、勢力範囲図、官と軍の組織表を記載した書類。連邦の法律と構成国の法律と各部族の慣習法等の、つまりは俗法を記した書類。イスタメル州から割譲された地域を記した書類。イスタメル州総督の推薦状と領土割譲に関する書類。メノアグロ州総督の推薦状。ヒルヴァフカ州総督の推薦状。大内海連合州総督の推薦状を提出した。ルサレヤ館長とベリュデイン総督には口を利いておいてとお願いしてある。
「帝国連邦構成国がバシィール直轄市、スラーギィ特別行政区、マトラ共和国、ワゾレ共和国、シャルキク共和国、ユドルム共和国、東スラーギィ軍管区、西トシュバル軍管区、ダルハイ軍管区、西イラングリ軍管区、上ラハカ自治管区、中ラハカ自治管区、下ラハカ自治管区、東トシュバル自治管区、ムンガル自治管区、ヤゴール王国、フレク王国、チェシュヴァン王国、ヤシュート王国、ダグシヴァル王国、ウルンダル王国、チャグル王国。正に帝国で連邦という構成ですね。固有名詞がありませんが、それで正しいのですね?」
「はい。一括りに出来る名称がありませんでした。それに拡張予定です」
「レスリャジン朝ではいけませんか? レスリャジンの大王、これが世に広まっています」
「世襲ではありませんので」
「失礼。しかし書類上固有名詞があると便利です」
「どうしても必要ならばセレード語で帝国、大いなる勢力”アチツォツク=イリァシェヴド”と当てて頂ければ」
「アチトトゥク=イラシャヴド? アチツォーツク=イリアシェヴド、アチツォツク=イリァシェヴド。言えた」
「よろしいですか」
「帝国連邦で問題ありません。わざわざつける必要性はないですね」
「長いのは嫌われますか」
「書類書くの、面倒ですよ。その程度のことです」
「止めましょう」
大宰相の、こちらが提出した書類を繰る手が止まった。読み終わった様子。
「魔神代理領共同体、どう思われますか?」
「巨大な屋根。柱や壁は思うように動けませんが、軒下の者達は結構自由に動き回ります。私の行った拡張が、イスタメル州総督の魔なる法での対処だけで中央に確認を取らなくても非難も何もされない」
「そうですね」
「良い方向に行けば良いですが、悪い方向にも、光があって影があるようにある」
「そうですね」
「アソリウス島事件のような国体に関わる大事件すらある」
「そうです」
「中央の方から内務省軍を派遣しても構いませんよ。こちらの内務省と連携して頂かないと、相当に命の保証が出来ませんが」
「その確認が取れて良かったです」
「国家領域が広いので、私が心配することではありませんが、人数が足りますか?」
「足りないでしょう。現地雇用をさせて頂きたいですが、そちらの内務省と衝突しますね。今はそちらも人材確保の只中でしょう」
「その通りです。こちらの内務省と連携を取って下さい」
「分かりました」
眼球のように動くはずのないダーハル大宰相の複眼が自分の全身を隈なく捉えた感覚を覚える。一挙一動から言葉の嘘を見抜く構えでもしたのだろう。
「帝国連邦の対外政策に関してお聞きしたい。まずは交戦中のバルリー共和国に関してお願いします」
「マトラ妖精達の失地回復と、聖王領中部との境界線をこちらに有利な形での制定を目指します。傭兵を派遣はするものの、基本的に今まで中立政策を取ってきたことがかの国では仇となっており、戦災からの復興途上で余裕の無い聖王領諸国からは有効的な支援は受け取れていないようです」
「中央からは、この件に関して一切の支援は不可能です」
「ウラグマ総督からもそのように聞いております」
ここで嘘を吐かれて大変な目に遭うのは共同体全体である。大宰相だって神経も使おう。
「停戦中の龍朝天政に対してお聞きします」
「魔神代理領中央の意向には基本的に追従出来ます。前線は常に臨戦態勢にあります。攻撃命令を今、出して貰っても構いません。流石に今ならば全力発揮とはいかないですが」
「それで結構です。現在、海上では小競り合いですが、戦闘が散発的に発生しています。タルメシャにおいても支援という形で抗争中です。決戦は遠くありません」
「それはそれは」
ヘラコム山脈以西どころか、ハイロウへの侵攻までは計画が出来ているし、情報も集めてある。
「アッジャール朝オルフ王国とは友好的ではあまりないそうですね。所感をお願いします」
「先の内戦で非常に疲弊しているが、歴戦の古参兵部隊が数多く残存していて侮れません。ランマルカ製の最新兵器も持ち合わせております。エデルト=セレード連合王国とも深い友好関係にあり、援助体制も長年の経験で強固に組み上がっており、単純な国力だけでは測れない潜在能力が、今あります。只今、無人地帯でアッジャール朝の事実上管理外となっているメデルロマ領南部の荒野に入植を行って実行支配を固めています。またアッジャール朝が自然と休戦関係になったランマルカ革命政府とは非公式に協調関係が成っております」
「戦争の火種をわざわざ抱えられましたね」
「人工の緩衝地帯。将来の攻撃時の橋頭堡。政治的な引き換え券。そしてこちらに都合の良い戦場に成りえます。取り返したい土地に軍を進めないことは無いでしょう」
ちょっと怒られると思っていたが、何だか反応が静かで不気味である。
「エデルト=セレード連合王国とは良好な関係を築いておられるようですが、正確なところが聞きたいです」
「先方が雇用主、こちらが傭兵として戦うという関係と、アソリウス島に関する条約での第十四条項に基づく共闘関係があります。ヴィルキレク王子と王女の第十六聖女ヴァルキリカ、シルヴ・ベラスコイ元帥との交友、セレードでの地縁血縁などもあって確かに友好的ではあります。しかしエデルト議会がセレードでの民族意識の高揚を嫌がることしばらく過去にさかのぼり、セレード独立派閥が私を英雄視していることに繋がって嫌われております。そして王妃筆頭に私の首を切りたいぐらいに恨んでいる者達がおります。それからアッジャール朝との関係、特にゼオルギ=イスハシル王とエデルトの王女との婚約が成っている以上は、年齢的にも数年内に血縁同盟が成ります。ここに同君連合であるセレード王国の独立機運を加味すると、口で説明すると変になりそうですが、あらゆる意味で微妙な関係であります」
「恨み、とは」
「連合王国軍時代に私がリシェル王子を殺したことになっています。軍務上の成り行きで死なせた、と言われたら否定しません」
その恨みのせいか何か知らないが誕生したのが五人目の王子と二人目の王女だというのだから……まあいいか。
「ランマルカ革命政府との関係について興味深いのですが、ご説明を」
「同盟関係ではありません。ですが条約を結ぶまでもなく、目的が一致しての協調関係です。共和革命派については色々、神聖教会圏を中心に騒がしていますが、要するに妖精種族の生存圏を拡張することを目的にした行為なのです。その行為、手段が今までに無い恐ろしいものであるというだけでしょう。我が帝国連邦の拡張は、半数弱の人口を占める妖精種族の拡張と同義となります。従ってランマルカと我々の目的は、手法こそ異なりますが求める結果が同軸線上にあります。なお共和革命派によって発生しうるであろう帝国連邦内での内乱工作ですが、思想に拠るランマルカ公認の”正道な革命”はありません。民族主義と結びついて変質したものは別なので摘発中です」
「反抗しなければあらゆる体制を容認する帝国連邦ということですね」
「固有名詞も無く、元首号を総統にしたものそういうことです」
帝国連邦には共和革命思想の者が、妖精を含めれば人口の半分近くになる。しかし妖精を団結し、人間を分離する思想である。妖精主導の共和革命思想以外を認めない方向で行くしかない。
「聖皇及びその影響下の勢力とはどうでしょうか。並々ならぬ関係と見受けますが」
「今現在、聖戦軍の召集の呼びかけに応じる諸国との関係は、表面上は神聖教会を通して割りと良好です。聖戦軍での功績があるので、先の戦争での勝者側は友好的です。敗者側は負けて殺されたなりに敵対的です。とは言っても直接利害に障ることも現状ありません」
「蝗害、地震に聖戦軍と言います。油断をしてはなりません」
「聖皇が交代しただけで方針が変わる組織ですからね」
かの神聖教会は雰囲気以上に上位下達の組織だ。前聖皇が聖戦を仕掛けてきたと思いきや、現聖皇になったら突然に魔神代理領との友好的な態度と、同じく聖なる神を奉じる者達への攻撃である。前代の方針を踏襲するという感じが全く無い。
「さて、魔神代理領共同体の一員として、こちら中央とはどのように考えておられますか?」
「領土拡張に関しては容認を続けて貰いたいと考えます。そして中央が命じる敵には攻撃を行いましょう。火力筋力に練られた共同体の剣を志向しております。共同体には我々への物質的な後援をお願いしたい。共同体諸国には耐えられない強力な戦争組織を作り、これからもっと強力になります。これはまるで優勢な遊牧民と劣勢な定住民との貢納の関係に似ていると思われたかもしれませんが、我々が軍事力を朝貢する形であります。それと私の代はともかく、そこが切れた時にその古い関係が復活するやもしれません。だからしっかりと剣の柄を握っていて頂きたい」
「勝手に動き回って辻斬りをする剣をですか?」
「だからです。島国ではないのですから、触れる国境全てに刃が当たるものです」
「狂犬、と言い表せます」
「いえ、猟犬です。可愛がって下さいね」
「魔神代理領は収入も多いが支出も多く、支援するにも限度はあります。そちらは収入に対して軍事費が異常に高いと思われますが、資金源に当てはどの程度おありですか?」
「黄金を鉛に変える錬金術師がいます」
「錬金術……師?」
「ナレザギー王子です。物好きでして、儲けるために戦争をするのではなく、戦争のために儲ける男なんです」
「かの王子と、あの会社ですか。それは心強いですね」
大宰相が白紙を二枚取り出して文書を二つ、同じ文面で作る。
”魔神こそ全てである。魔神代理は唯一である。魔神代理より俗なる法の執行を託されし大宰相が御威光をお借りして承認する。承認するは、元首ベルリク=カラバザル・グルツァラザツク・レスリャジンが総統号の下に創設した帝国連邦の、畏れ多くも魔神代理を頂く共同体への加盟である。以上の事を魔神代理より俗なる法の執行を託されし大宰相が承認する”
そして両方に花押と年月日を書く。
「署名を」
自分も同じく、練習していた花押と年月日を両方の文書の、大宰相の名の下に書く。貰って以来何年経ったか、赤い羽根の筆で。
「これで承認致しました。帝国連邦総統ベルリク=カラバザル・グルツァラザツク・レスリャジン殿、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「片方はそちらで控えとして持っていてください。明日の朝には広報局が魔神代理領内全土にこの報せを広めます。各種お祝いが届き始めるのは明日以降になるので、今日は早めに寝た方が良いでしょう」
「訪問客、凄そうですね」
大宰相の獣人奴隷が額縁を持ってきたので、自分の承認文書をそれに入れ、控えているアクファルに渡す。アクファルは革鞄に入れる。
「ご友人、お祭り好き、商売熱心、詐欺師、色々と引っ切り無しに訪問して来るでしょう。ご宿泊先はどちらで? 一般の宿はお勧めしませんが」
「ルサレヤ館長宅です」
「ならばそちらで対処してくれるでしょう」
「甘え足りないのでお願いしておきます」
「さてご自分の影響力、理解されましたか?」
「世界に冠たる魔神代理領の大宰相の頭を、考えるまでもなく縦に振らせられる」
「変えられる力を持つ強き者が出来ることです。魔術や魔族など関係なく、魔なる教えの根幹は強い力、その一点です」
「分かります」
■■■
ルサレヤ館長邸へ戻る帰り道は、足が浮いたような感じでちょっと恐かった。帰り道、建物、草むらの陰にいって立小便をしたらいつもの倍は臭かったような気がする。
門では、ニクールの次にイシュタムの名を継いだギーレイ族の真っ黒犬頭が「おめでとうございます」と出迎えてくれた。どうやら普通は承認されないこと等無い、といった様子。
「お兄様」
アクファルから革鞄を手渡される。空にはスライフィールの竜が飛んでいる。船団が入港して伝令に回っている様子だ。
「行って来い」
「はい」
使用人に庭へ案内される。お茶の用意が整っていて、誰か道中、我々の行方を見ていたかのようだ。
涼しい、垂簾が垂れて水の流れる石の建物が眼の端に映るが……。
柱が四つ、蔓草が絡んで出来た日除けの屋根、折れそうな細工の卓に、向かい合わせの椅子。片方にはルサレヤ館長が翼をだらっと下げて座っている。
「戻ったな。あっちに移るか?」
「いえ」
「あれは体を壊すから良くないんだ。まあいいか、承認の文書は?」
「はい」
革鞄から出して、額縁に入れた文書を見せる。部屋に飾る物を手渡すのが、ちょっと変な感じ。
「承認文書なんぞ本当は要らんのだ」
「そうなんですか?」
「追認の文言を大宰相が現地に出し、それから広報を行うのが慣例」
「昔の話でしょう?」
年寄りの話は長いと思い、向かいの椅子に座る。文書を返して貰う。
「良く分かったな」
「だって……」
「だって?」
「年寄りが、これが正当だ、と言うことは大体昔のことでしょう」
「そうだな。承認文書を発行しだしたのはここ五百年ぐらいのことだ。継承権争いをしている共同体の国の、こちらが正統と認める方に発行したのが最初だ」
「俺の帝国連邦がそうなりかねないと?」
「お前の帝国連邦は違うかもしれんが、代々の遊牧国家はそんなもんだろう」
「ああ、確かに」
「ましてやお前の帝国連邦は大仰な名に恥じない規模だ。目印代わりの何かは必要だろう」
「影響力を自覚しろと言われました」
「千年以上悩まされ続けた北の遊牧帝国域をほぼ制覇して来たのだから新参だろうが当然だ。お前は、バルハギンの登場以来我々魔神代理領が待ち望んでいた強き者だ。魔なる教えとしての強き者の素質が無いことが悔やまれるな。都合良くは何事もいかん。あまりしゃべると長くなるな、年寄りはこれだからいかん。ベルリク=カラバザル胸張っていいぞ」
「その胸を張れる影響力を今使いたいと思います。ルサレヤ館長、仕事を辞めてウチに来て魔導師になって下さい。魔なるお導きをしてくれる先生が欲しい」
「魔導評議会には入っているから魔導師だが、これはお前に何かしてやれる仕事じゃないぞ」
「魔なる法でウラグマ総督が処理してきた面倒をやって下さい」
「それは魔法官の仕事だな」
「じゃあ魔法官やってください。魔導師と違いが良くわからないんですが」
「立法が魔導師だ、地方に配置してもしょうがないぞ、勉強不足め。お前が欲しいのは行政の魔法官の方だ。まだ区別がついてなかったのか」
「そんな不出来な俺を導いてくれる先達がいたらなぁ」
「しかしなぁ、図書館……」
「俺が死んでからにしてください」
「代わりがなぁ……」
「年寄りなら誰でも良いんでしょう?」
「良いには良いんだが、格がいる」
「名誉館長、実務者は別。館長代行に格がいるならまだ一ひねり」
「ああ、その肩書きがあったか。魔法官を紹介しよう。いるぞ、いくらでもこの婆さんの代行がな」
「ババアが良い。信頼出来る官僚が今、いくらでも欲しいんです。兵隊はいる、でも官僚が足りない。何より教育係が足りない」
「教育は年寄りの仕事だな」
「余生とは言わないが、十年、貴女が欲しい」
「ふうん、貴女が欲しい? ふーん、ほーお?」
「愛する者よ、お前は謀っているのか? 出会いからの仕掛けは全て私の臓腑に突き刺さっている。これを抜き去るにはお前の手が必要だということも!」
「はっ! 良く一句まで覚えてたな。良いぞ」
「良いなら早く返事しろよ」
「何を言うか、今決めた。お前が口説いたんだぞ」
久々に翼デコピンを食らい、椅子から転げてのたうち回る。
復帰して、立て直した椅子に座る。
「ニクールの黒旅団だけだと人数足りないから、そっちの奴隷騎兵と合体させましょう。その体だけじゃなくて兵隊も目的なんです」
「黒旅団? そのままだな」
「夜戦得意の黒んぼ軍団、単純で格好良くて好評ですよ。作戦でも超便利」
「イシュタムとガロダモの連携は問題無いだろう。そうか私だけじゃなく兵隊も欲しいのか」
「図書館の椅子擦りにぶら下げておく光り物にしてはそちらの奴隷兵は豪勢です。何より、噛み付く先も無いのに牙を研がせるのは拷問です」
「ん? そうか、そうだな」
ルサレヤ館長が明後日の方角に、顔を逸らして「気がつかなかった」と言いやがった。
「気がつかない? まさか、嘘でしょ」
「いや、本当だ。分からなかった。目から鱗だ」
ルサレヤ館長らしからぬ隙の多い、間の抜けた面が見れた。
「竜もどきだけに?」
「うるさい」
「分からないって、どういうことですか。ちょっと、可哀想にも程がありますよ」
戦いの訓練を受けた戦士が、活躍することなく老いて引退するなんてのは魂への犯罪に等しい。
「飯は毎食出てるし高給取りだ。戦いも無いし環境も良くて死ぬ心配はほぼ無い。訓練して疲れた、さっぱりという顔をして不満なんかあるとは思わないじゃないか」
「くぁっ! この糞女が! 男が武器持って訓練して人一人もぶっ殺せないなんてどれだけ苦しいか想像しただけで憂鬱だ! 糞婆が! この何百年で一体何人の男を潰して来た!?」
思わず大声が出て、使用人や獣人奴隷の顔がチラチラと遠くに見えた。
「でも、そういう奴ばかりじゃないだろ?」
「今、彼等に聞いて来ますか?」
「止めろ、止めろ。繊細な乙女心がもたない」
「割と平気ですね、良くそんな台詞が吐ける」
「お前、本を読んで面白いと思うか?」
「物によりますが」
「使わない知識を得ても楽しいだろう」
「そこまで読まないんですが……それを兵隊に当てはめて考えてたという呆けをかます気ですね」
「呆けとは何だ。もう少し先だ」
「ということで竜跨隊も連れて来てください」
「話が違うが良いだろう。全部じゃないぞ」
「違くありません。取れる作戦の程度が違います」
「揚げ足取るな」
「アクファルですが結婚する気がないからクセルヤータは別に下さい。アクファルが死んだらそのまま戻って結構」
「んー、待て歳の頃……はいいか。説得は直接してくれ。入港の報せがさっき来た。クセルヤータもいるだろう」
「既にアクファルが話をつけに行ってます」
「何だ、もう拐かしに動いてるのか」
立って隣へ行き、手を取る。
「私も、今日は貴女を攫いに来ました。今度は私が誘って連れて行きます。仕事も私が命じます」
「ガキんちょがもう大人気取りか」
翼の手で頭を掴まれ、下げられる。立っていられないので膝を突く。顔が、ルサレヤ館長の膝の上。
「大きくなったな。これだけはいくら歳を取っても見ていて面白い」
頭を撫でられる。
「総統さんがお困りのようだから仕方がない」
■■■
ルサレヤ館長――正式に役職をつけたら魔法長官――の次は、ベリュデイン総督に挨拶である。
相変わらず、比較すれば質素な彼の屋敷を訪ねると、筋肉毛むくじゃらの黒獅子ガジートが門で暑苦しく待ち構えており、そしてデカい声を出す。
「グルツァラザツク総統閣下ァ! おめでとうございます!」
「これはガジート殿、お久しぶりで、ありがとうございます。承認が取れたって知ってたのですか?」
「まさか、否認されるわけがないではありませんか。あなたの帝国ですよ? 誰が認めないとお思いですか」
「そんな事もあるのかと」
「そういう事もありますが、それは大体国家の体裁も整っていなかったり、虚偽が多かったりと不備だらけの申請の場合だけです。承認は既にご出立の前に確定しているのですよ。既に国内で調査官や魔導師の方々が事実確認のために動き回っていましたでしょう」
「なるほど、確かに。内偵くらいはしますよね」
「おっとこれは失礼、門前で長話とはいけません。総督が中でお待ちですぞ! ささ、どうぞ遠慮は無用です!」
屋敷の使用人に案内され、応接間に行くと肌の青いベリュデイン総督が待っていた。
「どうぞ」
「失礼します」
静かにベリュデイン総督の向かいの席に座る。
機嫌が悪いわけではなさそうだが、静かだ。ガジートみたいに騒がれても困るが。
「新大陸の呪具、参考になりました。後は運用方法と量産方法の研究次第ですが、将来役に立つと確信します」
魔都に到着して大宰相邸に向かう前にルサレヤ館長に聞いた呪術の道具の感想が比較しておかしい。冷めている? いや知っている?
”博物館の収蔵品目録に同じような物は無い。図書館に似た論文はあったが実用化していない”
”なるほど”
”物質の世界を表層とする考えは肯定するか?”
”考えたことは無いですが、考えるまでも無いということで否定しておきます”
”魔術使いが感じる魔の流れは?”
”目に見えなくても照らせば光が、肌に触れなくても温度がありますね。私の感覚にそこが無いのでしょう”
”その感じるところが物質、つまり肉体に無いとしたら?”
”未発見を疑います”
”目に見えるものだけが真実というのも真実、というのは哲学的なこと。もっと実際的なことだ。前置きは捨て、あるかもしれない、”
”では疑いが残りますね”
”魔の世界というものがある、としている。魔族化した者ならば全ての者が感じる。そこには何故か色があって、暗闇の中に赤色がある。それだけだが、それほどでもある”
”それが物質の世界の裏?”
”さあな”
”引っ張ってそれですか?”
”この道具に触れるとその魔の世界を感じる。さて我々はその世界を、魔族の種から継承するその一時以外に感じられない。もしかしたら魔族の種になる時もあるかもしれないが、そこからは口が利けない以上は推測だ。さて、この道具を作った連中は我々にとっての恐ろしく貴重な体験をほぼ常に出来ているということでもある。この使い捨ての道具程度で、だ”
”探求すると世界が広がりそうですね”
”そういうことだ。魔導評議会の連中が今、お前が持ってきたあの杖に蝿みたいに集っている最中だ。見れば笑える”
会話を思い出すにそう、未知の、とんでもない宗教的大発見なのだ。実用品としても価値はあろうが、まずそこに興奮しなければ魔神代理領の魔族ではないだろう。
「わざわざ我が方に贈って頂き、ありがとうございます」
「いえいえ、まず送るべきはそちらと思っていましたよ」
グラストの秘術か?
「それはどうも、嬉しい限りです」
だが素直に喜んでいる顔。全ては知らないか。
「隠し事をしても仕方がありません、言います。ベリュデイン総督は多少、元から知っておられますね。そちらの秘術として」
あまり驚いた顔をしなかった。
「グラストのある氷土大陸。氷と土の大陸です」
土は当たり前で、氷。氷? あまりに寒いと海すら凍りつくという。ザロネジ湾が凍ったおかげ海が海ではなくなり、ランマルカ海軍が撤退してオルフ人民共和国はあっさりと首都を放棄したわけだが……。
「……ははぁ、新大陸と繋がっていた時期があるんですね。物は発掘ですか?」
「ご明察。世界は広いようで狭いこともありますね。驚異的です」
「ではご期待に添えなかったようですね」
「いえ、他所の”生きた”物は初めてみます。感謝しています。これでまた狭かった世界が広がりますよ」
「それは良かった。ウチのチビ共が黒焦げになって拾ってきたものです」
ベリュデイン総督が困った顔をする。あー……軽い冗談に聞こえないか。
反応に困るようなことではないと言おうとしたら、先にベリュデイン総督が口を開く。
「ダーハル大宰相、立派な方です」
うーん。
「長く再選されているようですね。前々回はその場にいました。今年も再選されたそうで」
沈黙。
「気懸かりなことでもおありですか、総督」
沈黙の後、返事は別の話題。
「グラスト魔術戦団が欲しいそうですね。お手紙にはご遠慮なさった書き方をしておりましたが、遠慮は無用です。分かります、欲しいのが当たり前です。欲されぬような役立たずを作った覚えはありません。秘密は明かせないが、その秘密を扱う者達をそちらに、言わば支部を置きます。課程は教えられませんが、結果をご活用ください。アリファマを派遣します。かの者は一から秘術を習得しております。そちらで育成出来ます。勿論のことながらこの巨大な魔神代理領、一枚岩ではありません。秘密が秘密であることはご寛容を」
一気に、一方的にそう言ってまた沈黙。目線も合わせず、俯き加減。
「失礼ですが、何かお悩みでも?」
「物は多重の構造である方が強い。一枚岩ではいけませんとも」
「はい、場合によってはその通りだと思います」
これは、魔神代理領的な革命でもやらかそうということだろうか。しかし、こう喋り方がおかしいと調子が狂うな。
「妖精自治区の軍管区化も成りましたし、私の方も自由に出来る帝国が手に入りました。昔よりは遥かに多重構造ですね」
「お願いがあります」
「はい」
「五年後の定期御前会議にて、大宰相に私を推して頂きたい」
ここでその話を振るか!? 心臓に悪いにも程がある。国家承認を得た以上、五年毎の定期御前会議に自ら出席するか代理人を立てて、開催直後の大宰相の解任と再選を行うのだが、早くも派閥への取り込みが始まったのか。
「勝算ありますか? そもそも魔神代理領で選出時にどう争うのかも良く分かりませんが」
戦争はしたいけど政争は、それも半分は他人事の事態に頭を突っ込むのは面倒という感じしかしない。自分の意見を通す時に反対者をブチ殺せないというのが、たぶん非常に苦しい。
「先の大戦、アッジャール朝の侵攻、ザシンダルの乱、アレオン紛争、レスリャジンの東征、タルメシャ戦争、そして近い内に龍朝天政との決戦。普通の兵士はかなり、以前より揃いました。ですが私の目指す魔族の数を増やすことは指針が示されるところまで来ましたが全く叶っておりません。確かで強力で驚異的な強き力の、やれば出来るはずの結集が成っておりません。目標へ近づくには大宰相になるしかない」
ここでそんな追い詰められている、みたいな声を出されると困る。
「その意見の反対派は魔族を増やすことが不要、害悪とすら考えていますね」
「ええ。必要とその反対派が意見を変えるのはきっと、前と前の戦争以上に血を流すような時なのでしょう。もしかしたら滅ぶ直前かもしれないし、滅んでから再起しようという時かもしれません」
帰りてぇ。
「それに匹敵する何か、政治的な影響が無いと駄目ですね」
「そうです」
「それは大宰相になる程度で実行出来ますか?」
「きっと駄目です。他の宰相も派閥の者にして、魔導評議会も説得しないと」
「ベリュデイン総督、敗北とか大損害とか、想定がいきなり悲惨です。魔族の増加の必要も無く勝つことを大前提に動いて、最悪の場合はそれしかないと、色々な状況を想定して準備し、後は時が来ることを待つしかないと思いますよ。あなたの秘術も、最悪の未来のためではなく、強き者の使命としてこれからのために作り上げたんでしょう。魔族の増加以外で打てる手、反対派と協調出来るところは全てやっておくしかないでしょう。別に戦争に反対だとか、過剰な軍縮を訴えているわけではないのでしょう」
ベリュデイン総督が初めて今日、自分と目を合わせた。目が充血している。何て暗い男なんだ。どうして十倍は歳のいっている奴を慰めないといけない?
「偉大なるイレイン様より力を継いだのにこの体たらく……」
目を合わせられての独り言とは強烈。
「……今日のことは忘れて下さい」
「はい」
「アリファマの派遣はお約束します。これは忘れないで下さい」
「はい」
疲れた。ルサレヤ館長になでなでして貰った気分が台無しだ。
ベリュデイン総督邸からの帰り道で、異様な雰囲気の男がややフラつきながら行く手を遮った。日はもう傾き、夕日の逆光で大まかな姿しか見えない。
「おい、俺が分かるか?」
「誰だったけかなー?」
そう返すと、何とその男は歌いながらゆっくりと、おもむろにズボンを脱ぎ始めたではないか!
足が三本全部が太いぃ
蛇がのたうつ、肉のー棒
ホイヤサ、ヤイサッサーサーノ、ホイヤッサ
根から黒くて先ちょが赤いぃ
たまらん臭さの、亀あーたま
ホイヤサ、ヤイサッサーサーノ、ホイヤッサ
寒けりゃ縮んで暑くてデカいぃ
皺がたくさん、お金こぶーくろ
ホイヤサ、ヤイサッサーサーノ、ホイヤッサ
足出し足引き、たっぷり歌い。
下げたり上げたり、ねっちり脱ぐ。
「その歌、お前……」
「おちんこちんこ音頭、覚えていたか」
いや聞いたこともないが。
「大通りでその蛇みたいなチンポ放り出すなよ……」
ここは街中。行く道の人々が目を逸らし「きゃー」とか「うわー」とか。凝視し「まー」とか「おー」とか。反応は面白い。
「ファスラおッにーちゃん」
「よお旦那、こりゃ偶然だ。運命の出会いだな。シゲの阿呆が港をうろついていたから会いに来たぜ」
シゲがアマナ行きか近くまで行く船を捜すと言っていたが、ファスラに捕まったか。運が良い。こいつならアマナの師匠のところまで行かなくても良いかもしれない。
「シゲは?」
「特訓中だ」
「船で?」
「おう、船だ。いくら魔都の運河とはいえ、揺れるからな。丁度良い」
「立ってるだけで船は疲れるからな」
「そういうこった」
何の特訓か、体の均衡感覚でも鍛えればあの弱った筋骨もマシにはなるのだろう。
頭上から風を分ける音が鳴って、クセルヤータが素早く、足音高く着地。首にはアクファルが跨っている。
「お兄様」
アクファルが珍しくも薄く笑っている。クセルヤータがデカい頭を下げて一礼。
「これからお世話になります」
「いいんだな」
「はい」
クセルヤータの誘惑に成功だ。
「よお! お尻ファルちゃん。シゲがフラれたってことはまだ処女なのかよ。何なら俺に掘らせろ」
アクファルがファスラを無視して空を見上げ、視線を逸らしたと同時にファスラへ腕輪型銃の暗器を発砲。
「おわっとぉ、俺じゃなきゃ当たってるぞ」
ファスラが余裕に避ける。そのほぼ直後にクセルヤータが羽ばたきながら跳躍して空へ。そして尾先がファスラへかするように振り上げられ、これも骨の抜けたような姿勢で避ける。シゲに必要なのはコレだろう。
「何だよ飛び蜥蜴め、拳で犯すぞ」
「凄ぇ量の糞掛けられんじゃねぇの?」
「まあな。お、そうそう、竜の垂れた糞に混じる珈琲豆って高いんだぜ。奴等、煙草吸うみてぇに口で転がすんだ」
両手を口に当てて声を遠くへ飛ばすように。
「アクファル! 船にあれ持って来い!」
と声を掛けておく。
「あ? それうんこだろ」
一つ、棒が膨らんで
二つ、お玉がぶら下がり
三つ、穴が開いていて
四つ、縮れ毛生えている
五つ、同時にやっつけて
六つ、数える暇も無く
七つ、道具で縛り上げ
八つ、裂いたは下の膜
九つ、過ぎたらもう手を出し
十の指で掴むよおっぱいぱーい
歩きつつズボンを穿きながら歌うファスラの卑猥な数え歌を聞き、ファスラがズボンの中から取り出した体温を感じる小瓶の酒を飲みながら、ファスラ艦隊旗艦ファルマンの魔王号が着岸している岸壁へ行く。
相変わらずというか、憎たらしいくらいに傷一つ無い船だ。あの時の東大洋遠征でも傷が無かった糞垂れ船へ舷梯を上って甲板に上がる。
目に入ってくるのは、海水の入った桶を頭の上に置き、両手で支え、爪先に踵を甲板にしっかりつけつつ腰を膝の位置まで下ろし、汗塗れで小刻みに震えているシゲがいた。羽虫が数匹肌に張り付いたまま。これが特訓か?
「てめぇ力み過ぎなんだよ、お産でもしてんのか。それ止め」
ファスラが言うとシゲが桶を下に下ろす。
「抜け」
シゲが刀を抜く瞬間に、ファスラが刀を抜いて刃を顎に当てて髭を少し剃り上げる。
「人殺すなんて力要らねぇんだよ。包丁一本ありゃガキでも殺せら」
教育方針を見せてくれるらしい。意外と律儀。
シゲが下がって刀を抜き切るが、その間にもファスラは刀の背で脳天、首、脇、太もも、踵まで軽く連続で叩く。
「ようは早く、適確、それだけだ。今時隙無く甲冑で固めてんのなんていくらいるんだよ。そもそも隙無く固めるなんても無理な話だけどな」
特訓のせいか体が震えて動きが変なシゲが、刀でファスラへ殺す勢いで斬り付けるが全て寸で避けられる。その避ける姿も何というか、風に吹かれる糸、木の葉のように力が無い。
「お前よ、まな板の上で肉切るときに両手全力でぶった斬るか? 斬るんじゃねぇ、切れ。骨まで斬って砕いて力自慢か? 肉じゃなく血管神経に腱、そこが切れりゃ生き物なんざただのお人形よ」
脱力してフラフラしつつファスラはシゲの全力の斬撃を全て避ける。わざわざ素手で刀を腹を払って見せる余裕がある。
「相手の動く先に刃先当てるだけで致命傷だ」
ファスラの指がシゲの両目に当たる。シゲは思わず目を瞑りながらも止まらず横薙ぎに刀を振るが、しゃがんで避けたファスラがシゲの膝の裏を殴ってよろめかせる。
「派手にバッツン斬り殺すのは威嚇か手抜きか下手糞だ。骨まで切って刃こぼれさせたら間抜けだろ」
最後にファスラはシゲの髪を掴んで甲板に叩きつけ、稽古終了。失神したシゲに先ほどの桶の海水をブチ撒けると起き上がる。
「先は長ぇなシゲよ。北征巡撫の顔面ぶった斬った程度じゃ糞にもならねぇ。首斬らねぇとな」
ファスラが手刀で己の首をトントン叩きながら船縁に跳んで、片足で立って揺れることもなく小便をする。放尿中に上げた片足をグルグル回す余裕すらあり、立つ足は微動だにしない。見せてくれるじゃないか。チンポと小便は余計だが。
小便が終わる前にアクファルとクセルヤータが岸壁へ着地。クセルヤータが手に持つのは綱で纏めた木箱が八つ。アクファルは書類を入れた革鞄である。
「おーいアクファル! また俺のおちんちんちんちんちん見に来たのか?」
勿論無視したアクファルは、クセルヤータの頭伝いにそのまま船に跳び乗ってファスラに革鞄を手渡す。
「何だいこれ?」
手についた小便をズボンに拭いながら、ファスラは革鞄の中身を改める。
「それは……あの、何とか兄さん」
「ハゲ」
「ハゲ兄さんとルー姉さんへの手土産だ。マトラ製の火器の設計図。あの箱は見本品だ」
ナレザギーの会社の連絡船に預けようかと思っていたが。
「マジかよ」
鼻クソ穿りそうになった指をファスラは寸で止めた。
「こいつは普通輸出しないが、俺が個人的にやる。セリンの、俺の親戚のためだ」
ファスラが改まって、体側に手をつけてお辞儀。とても躾が良く見える。
「感謝する」
こいつが改まると気持ち悪い。下げてから上げたその面が嫌に真面目で笑える。
「シゲ、お前もその一人だぞ。忘れるな」
「お、おう」
シゲは座ったまま、失神から目覚めたばかりで何やら意識が朦朧としている。
「お前もまだ若いがいつまでも若くない。それに長生きする生き方をしていない。嫁は早めに見つけろ」
シゲの脇に腕を入れて立たせる。まだフラついている。
「今生の別れになるかもしれんが一つ言える。近い内に魔神代理領と龍朝天政は衝突する。そうなれば俺達はラグトの方から奴等と戦うことになる。その時、お前らは南か東か、そっちで何をする?」
「うー、たぶん、奴等と戦っているかも、しれん」
「ならば身体は離れても何時でも蒼天の下で繋がってる。いいかシゲヒロ、兄弟、お前の残した爪跡は俺の軍とその伝統が滅びるまで生き続けることを忘れるな。首狩隊のことだ。いいか? お前はこっちで永遠に生きるぞ」
潮に汗臭いシゲの体を抱く。
やっと頭が戻ったか、シゲは「ヌァー!」と泣きながら抱き返して来た。
「うるせぇなぁ」
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