二〇

 それが私と少女、綾倉顕子との出会いであった。この時、確かに私の頭脳は混迷の最中にあったわけだが、それにしても、何故私は『少女に近付かない』という選択を取り得なかったのだろうか。想起されたのが三島由紀夫の『奔馬』であるのなら、そのエンディングも同時に思い出されなければならなかったのだ。

『春の雪』の主人公の生まれ変わりと思われたその青年の激烈な死をもって、『奔馬』はエンディングを迎えるというのに。

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