第11話:黒騎士作ってみた!エリーとウロ子の反応が辛い……

「今から少し人間の国に行こうかと思う。供をせよ」


 玉座の上から、黒い甲冑に身を纏った男に声を掛ける。


「はっ! して、どのような事でわざわざ魔王様が出向かれるのですか?」


 クーッ! いいねぇ……

 全身黒ずくめの剣士……男のロマンだよ!


「ふむ、ちと気まぐれで助けた親子が気になってな。あまり宜しい事になっておらぬようでな……」


 2ヶ月前に助けたチビコ親子の様子がちょっとおかしいんだよね。

 なんか、1ヶ月くらいは順調に生活を送れてたようなんだけど、先月くらいからまた父親が離れたみたいなんだよね……

 それで、様子見てたら10日前くらいからチビコともう一人誰かが移動を始めたんだよね。

 たぶん、チビコとお母さんだと思うけど。

 で5日前に魔国領に入って来た……なんで?

 とりあえず、直轄の部下達には手を出すなと伝えて、スッピンには様子を見させてたけど3日前にお母さんが倒れて慌てて城に連れて来た。

 今は体調も良くなってきてるけど、俺が入るとお母さんめっちゃ嫌な顔する……

 一応あんたら3人の命の恩人なんだけど……辛い……


「それは先日迷い込んできたチビコ親子の事ですか?」

「うむっ、どうやら父親が連れていかれたらしい……そのような事をする輩に何か心当たりはあるか?」


 玉座で足を組んで、肘置きに肘乗せて顔を傾けて手の甲の上に顎を乗せるちょっとダルそうな魔王のポーズで応える。

 どや? 魔王っぽくてカッコいいやろ?


「盗賊や人さらいとなると、奥方とチビコ殿も連れていかれるはず……となると聖教会の手配かと思われます」


 聖教会……たしか魔王を絶対悪として魔族、魔物討伐を推進する過激派だっけ?

 まぁ、こっちからすれば過激派ってだけで、普通の宗教らしいが……

 この世界、聖教会一教らしいんだよね?だから、人間あんなに偏ってるのかな?


「であるか……まぁ、一度助けた命だ……最後まで面倒を見るのがその責任というものだろう」


 そう言って椅子から立ち上がって、マントバサッってやる!

 黒騎士も立ち上がって、フルフェイスヘルムのフェイスガードをおろす。

 めっちゃ絵になってる……

 最強の魔王と、その護衛の黒騎士……カッコ良すぎるやろ?

 エリーとムカ娘とウロ子の溜息が聞こえる?

 さらに、半端痴女と、エセドジッ娘と、ビッチウィッチも頬を赤らめている。

 惚れなおしたか?


「なんなんですかその三文芝居は? 大体なんで魔王様が人間一人の為に動かないといけないんですか?」


 あれっ? エリーたん?


「私はいつもの魔王様が良い……」

「魔王様はどのようにあってもカッコいいですわ……」


 味方がムカ娘だけだった……辛い……


「なぁ、ラン……カイン? お前それでいいのか?」


 あっ、たぶん気付いてると思うけど、黒騎士の正体はイケメン勇者な! 名前はムスカ・ランスフィールドって言ってたけど、やっぱり裏切りの騎士はカインでしょ?

 暗黒騎士ならセ○ル? いやいや、あいつは結局パラディンになっちゃうし、俺は断然カイン派だ!

 色々怒られそうだが、前世の記憶のイメージで名付けさせてもらった。

 ほら、狩猟農耕兄弟のお兄ちゃんだってこんな感じやん?

 全然違うか……ただの嫉妬狂いやったっけ? こまけぇこたぁいいんだよ!


「なんか、勇者様今の方が楽しそうですね……」


 エセドジッ娘が死んだ魚のような眼をしている。

 まぁ、聖教会の僧侶としては魔王城にお世話になるってのは微妙だろうな……


「私は今の勇者の方が好きよ!」


 ビッチウィッチは本命がカインと……

 俺は結局ただのオカズのネタだったらしい……辛い……


「皆、俺はもう勇者じゃないんだ……カインもしくは黒騎士と呼んでくれ」


 しかし、この男ノリノリである。


 ちなみにこいつが来たのが今月の頭な!

 月に一度の聖教会への巡礼の日に逃げ出して来た。

 どうも加護を失った勇者というのは立場が微妙らしい。

 魔堕ちフォールンもしくは怠惰スロウスと呼ばれ周りから蔑まれる対象となるらしいよ。


 そもそもが、騎士や冒険者からの羨望と嫉妬の対象だからなぁ。

 その対象が力を失ったらどうなるかなんて、元人間の俺からしても想像に安い……おっと口調はともかくちょっと心の声までカッコつけてるわ俺。

 まぁ、それでも並みの人間よりは強いからね。

 大体が魔国攻略の最前線に立たされて殺される。

 それはもう俺らじゃなくて、自分とこの国に殺されてるようなもんだと思うけどな。


 それで、3人がどうにかして巡礼までに加護を取り戻す為に毎日来てたらしい。

 けど、結局間に合わなくて途方にくれて決死の覚悟で俺を倒しに来た時に……カインがやらかした……


「俺、別にもう魔王さんの部下でもいいんだけど……」


 3人がすげー喚いてた。

 もうマジうるさいったら無いの。

 耳元で3匹の子燕が餌くれってギャースカ言ってるレベルで喚きたてる。


 まぁ、何回か打診してたし、結構魔族とも仲良くなってたからな。

 それに【三分調理キューピー】で美味い飯も奢ってやったし。

 だからテレパシーで


『今ならお前の為に黒騎士のポジションを用意してやろう……』


 て伝えたら、めっちゃ顔が輝いた。

 即行でさっきの言葉が引き出せたよ。

 やっぱり憧れるのかな?

 裏切りの凄腕騎士……時に人を助け、だがその実は魔王の片腕とか……

 当然加護もなくて弱いから、装備は黒龍の素材に俺が限界まで付与効果を付けて作り上げた珠玉の一品だ。

 さらに本人にも手の甲と背中に、ステータス上昇効果のある刻印を刻んでやった。

 手の甲は意識を込めて発動させるとアルファベットのKを崩したような刻印が光を放ち浮かび上がる。

 ステータスさらに倍々ドン!

 そして背中には龍の翼を模した刻印だ。

 こっちは常時ステータスを大幅上昇してるが、意識を込めると背中に黒い翼が現れて空が飛べるようになる。

 マジ中二病全回で魔改造してやったが、本人が感動の余り涙まで流して喜んでくれたからやった甲斐があった。


 ちなみにビッチウィッチ情報だと、毎晩部屋で鏡の前で無意味に手の刻印を発動させたり、背中の翼を見てニヤニヤしてるらしい。

 そんなに喜んでもらえるとは……

 今度映像を記録できる鏡とすり替えてやろう。


 3人は勇者の目を覚まさせるという名目でこの城に住んでいる。

 本当の目的はどうなんだろな?


 話がめっちゃ脱線した……


 でもさぁ……まだ続けんのかよ? って思った……? ちょっとだけだって。


 でもさぁ、魔王と黒騎士って……やっぱロマンだよなぁ?

 中二病刺激される訳さ!で冒頭の三文芝居になっちった。


「あの、そろそろ向かいませんか?」


 黒騎士に言われてハッとなる。

 そうだそうだ、今はチビコの父親の事が優先だった。


「そうだな……」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る