第8話:イケメン勇者様御一行様がしつこくて辛い

「魔王様、勇者です!」


 この声はエリーたん?

 ちょっと若い気がするけど、帰って来たんだねー!

 お帰りー!


「うむっ、参るぞ!」


 俺が扉を開けると蛇の尾が見える……

 Oh……ウロ子……


 鱗とウロボロスかけたんだよ?

 説明させんな、恥ずかしい!

 なんか、ラミアの上位種らしいけどね……


 まぁいいや、取りあえず今は勇者が先決だね。


「ちなみに男? 女?」

「男です」


 あっそ……

 なんか、どうでも良くなってきた……面倒くさいなー……

 男かぁ……じゃぁ、ゆっくりでいいや。

 全員にテレパシーも送っとこ……


『適当に遊んでやって差し上げなさい!』


 よしオッケー。

 それじゃ玉座の間に行く前に、昼飯でも食ってくかね?


「先に食事を済ませてから行こうと思うのじゃが、供をするか?」

「よっ……余裕ですね。是非ご一緒させて頂きます」


 という事で食堂に移動っと!

 指をパチンと鳴らす! もちろん、ウロ子も連れて。


「相変わらず凄いですね……基本的に魔法耐性高いのですが、有無を言わさず私まで一緒に転移されるなんて」

「ん? そうか? 転移魔法ってそういうものじゃないのか?」

「……はぁ」


 なんだその気の抜けた返事は?

 普通は出来ないものなのか?

 対象と転移先を選んで発動するだけじゃないのか?


「強制的に転移させられるということは、いきなりマグマに落とされたり海の底に沈められたりするわけですから、一応レジストの対象にしてるんですけどー」


 ふーん……よくわかんね。

 まぁいいや、今は飯だ!

 という訳で、本日のビックリドッキリチートマジック!

 えっ? 料理長が居るだろって? 嫌だよ? ゲテモノ料理しか出てこないもん。

 一応美味しいけどね……見た目って重要じゃん?

 だから魔法作った!

 それに、エリーが居たら魔力栄養バランスがとかいって、料理長の料理しか食わせてもらえないの……辛い……


「【三分調理キューピー 】!」


 一瞬だけどね……

 ちなみに、俺が食べたい物が出てくる。

 今日は百蘭のラーメンにしてみました。


「いきなり食べ物が……本当に魔王様はでたらめですねー」

「まあ、魔王じゃからな。ほれ冷めぬうちに食うぞ」


 ズルズルズル……美味しい……

 やっぱり、日本料理サイコー!

 拉麺は中華? それは諸説ありだ!

 日本のラーメンは日本料理だ!


「変わった料理ですね……物凄く美味しいですけど魔力栄養素は0ですね……」


 そうなの? まぁ、美味しいならいいじゃん。

 魔力栄養素とか俺要らないし……

 という事で美味しく頂いた辺りで状況を確認してみる。

 勇者来るまで、あと約30分かー……


『お前らもう少し可愛がって差し上げろ』


 これで、1時間は持つかな?


「ウロ子……わしは少し寝るから1時間経ったら起こしてくれ」

「はぁ……」


 ウロ子に若干呆れられてるっぽいが、別に今更野郎の勇者とかどうでもいいしね……


「そういえば、魔王様はエリー様のお膝で寝られるのが好きだとか? 私の膝……使われますか?」


 若干嫌そうね。

 ていうか膝どこ?

 まぁ、厳密には太ももだけど……


「いま何か失礼な事考えてませんでしたか?」

「いや、別に……考えてたけど? 太ももどこ?」


 やべっ、誤魔化そうかと思ったけど好奇心の方が勝ってしまった。


「えぇぇぇ……まぁ下半身蛇なんで太ももありませんけどね。取りあえず蜷局巻くんで丁度いい高さの位置に頭乗せてください」


 ですよねー……

 てか可愛い女の子なのにねー……蜷局巻くとか……蛇丸出しだねー……

 はっ! 閃いた!


「大魔王様! コイツです!」


 おいっ! てか何故そんな突っ込みが出来る?

 さらに大魔王居たのね……俺より偉いんだ……ふーん……


 で、何を思いついたかって?

 コイツ上半身は美少女なんだよ!

 今まで見た事ないくらい、綺麗な女の子。

 マジ海外の美少女レイヤーさんが本気出した感じを素でいってるの。

 で、蛇の部分に頭置くじゃん? 下半身がギリギリ視界から消える範囲で……

 下から美少女を見上げるの……

 割と乳もあるし……結構幸せな景色じゃね?


「なんか、壮絶に嫌になってきたんですけどー」

「むっ、気にするな。どれ、ちょっと試してみるか……」


 あえて蜷局を巻かせずに、横向きに座らせて腰の下に頭を置く!


「そこ……微妙な位置です……」


 んっ? 敏感な場所だったか?

 つっても蛇の性事情なんてよくわからんし、興奮はしない……てか、思った以上に良い!

 景色もだが、太い蛇の尾に頭を乗せた事無かったから気付かなかったけど、柔らかくて冷たくて気持ちいい。

 ああ……景色を堪能したい気がするが、この枕最高だわ……

 すぐに眠気が襲ってくる……


「魔王様……そろそろ……」


 あっ、えっ? 寝てたの俺?

 てか微妙に頬がピンクに染まってて超可愛いぜ!


「これ、思った以上に恥ずかしいですね……エリー様凄いです。きっとお嫌なはずなのに……」


 おいーー! 本当? それ本当に? 俺マジでショックなんだけど。

 いっつも、正座して膝ポンポンしてどうぞってやってくれるのに、嫌々だったとかマジ辛いよ?

 嘘だよね?

 パワハラとセクハラのダブルパンチしてないよね?


「そっ……そうか? わしは凄く気持ちよくて、久しぶりに良く寝れたが……」

「そうですか? それはよござりましたね……」


 なんかそっけない。


「まぁ、また機会があれば、やらせて頂きます。」


 顔赤いけど……そんなに嫌だったのかなぁ。

 でもまたやってくれるみたいだし、いっか。

 これは病みつきになるわ……


 ということで、魔王城玉座にワープ!


「相変わらずですね……」


 膝枕のまま転移したら呆れられた。


 おー扉が豪快に開いたなー。

 丁度良かった。


「魔王! お前を倒しにって、お前は何をしてるんだ!」


 あれっ? 半端痴女か……


「うわー……そんなんでも良いんですかぁ?」


 エセドジっ子に汚い物を見る目で見られてる。

 ご褒美ですか?


「そんなに追い詰められてたなんて、やっぱり童貞だったのね……」


 ほざけビッチウィッチ!


「くそっ、こっちは必死でここまで辿りついたというのに、余裕だな……」


 やっぱりイケメン勇者御一行だったのね……


「うむ、ご苦労!【強制送還リパトレイション】」


 面倒くさいしこいつら口悪いから要らね。

 とっとと、戦士と僧侶と魔法使いを送り返す。


「良く来たなお笑い勇者」


 なんか二回目とか、もう対応面倒くさくなってくるよねー。

 あっ女勇者ちゃんは別ね……

 最近来てくれないけど……心折っちゃったかな。


「くっ……三人をどこにやった!」


 焦ってるなー。

 どうしようかなー?

 本当の事言おうかなー……嘘ついちゃおうかなー……そうだ嘘ついちゃおっと!


「ん? うちのオーク部隊の詰め所に放り込んできた」

「魔王様サイテー……」


 えっ? ウロ子? そんな目でみないで……興奮しちゃう……まぁ蛇には興奮しないけど。


「きっ、貴様! なんて事を!」

「ふっ……さっさと助けに行かないと面白い事になっていると思うぞ……」


 イケメン勇者がこっちを睨み付けてくる。

 てか、完全に心折ったと思ってたのに意外とタフね君たち。


「とっとと場所を教えろ!」

「えー……やだー……」


 なんで、教えて貰えると思うのかなー?

 勇者って魔王に何を求めてるんだろ?


「くそっ、魔王覚えておけよ!」


 イケメン勇者が慌てて出ようとする。

 そうは問屋が卸しません。

 魔力を使って扉を閉める。


「おいっ! 魔王!な んて事を!」

「お前は、わしを倒しに来たのじゃろ? ならばわしを倒せばいいじゃないか……まぁ、わしを倒したところでオーク共は止まらぬがな! はっはっはっはっは!」


 俺が馬鹿笑いしてると、斬撃が飛んでくる。

 おお、3日しか経ってないのに結構進歩してるなぁ……

 まぁ、絶対魔法障壁があるから平気だけど。


「早く倒さねば、3人の嫁ぎ先が決まってしまうぞ!」

「くそっ! くそっ!」


 すげーな。

 こんな短期間でこんなに成長するもんなのか勇者って。

 まぁ、それでも雑魚だけど。


「何故だ! 新たな加護まで手を入れて来たっていうのに……」


 あぁ、加護とかあるのね……

 そーだ、それならちょっとからかっちゃおっと!

 魔法障壁に罅入れてっと。


 ピキッ!


「魔王様っ!」

「ば……馬鹿な!」


 いいねー、ウロ子ちゃんまで焦ってて、なんだかんだ言って心配してくれるのねー。

 でもゴメンねー、もうちょっと付き合ってねー。


「ふっ、どうやら無駄では無かったようだな! 全てを斬り裂け! ブレイブスラッシュ!」


 魔法は分かるけど、必殺技って名前言う必要あるのかな?

 ここだとばかりに必殺技放ってきてるけど、そういうのってとっとと最初っから撃てばいいのに……

 コスパ悪いのかな?

 取りあえず幻惑魔法掛けてっと……


「なっ……なんだこの力は……わしが……わしが防ぎきれぬじゃと?」


 どうこの迫真の演技?

 ハリウッドからスカウト来ちゃうかもー、どうしよう? 魔王と俳優の兼業って結構大変かなー?

 っと、そうそう身体が真っ二つになった映像をウロ子とイケメン勇者に見せてっと。

 ついでに扉も開けたげる!


「ぐわぁぁぁぁ!」


 さらに苦しそうに口から血とか吐いちゃったりして。

 ついでに下半身は灰にでもしちゃいますか……


「魔王様ー! 魔王様! 魔王様! 魔王様! いやっ、返事してください!魔王様!」


 どんだけ呼ぶの?

 ウロ子可愛いよー、ウロ子……


「くっ……今は生死を確認している暇はないか……そこの魔族! お前も後で必ず滅ぼしてやる!」


 カッコよく酷い事言うねー。

 悪の親玉倒したら殲滅戦ですか?

 本当に救いようが無いクズだな勇者って……

 まぁ、俺ならこの状態でも生死の確認は怠らない! キリッ!


「待て勇者! 貴様は絶対に許さん!」


 勇者こっちも見ずに出てったねー……

 めっちゃ焦ってるねー……


「魔王様……」

「何?」


 ウロ子涙ポロポロ流して可哀想に……よっぽど嫌な事でもあったんだねー。


「えっ? ってキャー!」


 普通にウロ子を抱きしめてポンポンしてたつもりだったけど、良く考えたら幻惑魔法解いて無かったわ。


「上半身だけなのに、なんで生きてるんですかー!」

「あっ、ゴメン」


 俺が幻惑魔法を解除すると、ウロ子がポカンとしている。

 ウッシッシッシ! ドッキリ大成功! ってやりたいところだけど、もう一人のターゲットがそろそろ大広間の扉開けそうだから、このタイミングで良いかな?

 えいっ!


「えっ?」

「おう、忘れものか?」


 勇者が心底驚いた顔をしてる。

 ウケる……メッチャ焦ってる。

 そうだよねー、こんなとこでゆっくりしてる訳にはいかないもんなー。

 ちなみに、大広間の扉と玉座の間の扉を一時的に繋げてみました。


「貴様死んだのでは無かったのか?」

「なんじゃ、あんなショボい攻撃で倒せたとでも思ったのか?」


 俺が両手を振って無傷ですアピールをすると、勇者がワナワナと震え出す。

 怒ってもどうしようもない力の差があるって分からないかなー?


「騙したのか?」


 いやいや、勝手に出てったんじゃん。

 いや、あれは完全に騙してますね……はいすいません、騙しました。


「ほれほれ、そんな事気にしていてよいのか? 3人が心配じゃないのか?」

「くそが、うぉぉぉぉぉ !全てを斬り裂けブレイブスラッシュ!」


 すげーなー……怒りの度合いでも威力って変わるんだ。

 さっきとは桁違いだねー。

 そしてその技名【ブレイブスラッシュ】だと思ってたけど、もしかして【全てを斬り裂けブレイブスラッシュ】なのかな? ダッサ……まじダサいなおいっ!


「魔王様!」


 ウロ子が間に割って入る。

 あぁ、ダメだウロ子たん……いくらショボい攻撃とはいえウロ子たんが食らったら鱗の2~3枚は取れちゃうよ?


「よい、この程度避けるまでもない」


 俺はそういってウロ子を後ろに下げる。

 そして当たった瞬間に吹っ飛んで見せちゃおっと……


「なにっ? さっきとはまるで威力が……見誤ったか……ばかなー!」


 あとここで幻惑魔法発動っと!

 今回はウロ子にも楽しんでもらえるよう、勇者だけにかけとこうか。

 身体が霧散して核っぽいのが弾ける映像にしよう!


「あれっ? こ……今度こそやったのか?」


 イケメン勇者が自分の手を見て不思議そうにしている。


「はっ、そんな事より戦士! 魔法使い! 僧侶! すぐ行くからな!」


 そういってイケメン勇者が部屋を飛び出してった。

 アイツ馬鹿だろ?


「あのっ……魔王様? 説明してもらえますか?」


 うおっ……ここにも怒れる人が居た。

 こっちはヤバい……勇者なんかとは桁違いに強いからな。


「あぁ、幻惑魔法を掛けてわしが死んだように見せただけじゃ」

「では先ほども?」

「うむ……」

「私にまで? なんで?」


 うわぁ、これメッチャ怒ってるわ……


「あっ、ちょっと待って勇者が大広間に着くわ……」


 取りあえず大きい声でウロ子を制止してっと。

 もう一回ワープっと!


「ッ……馬鹿な! 馬鹿な! 馬鹿な! 馬鹿なぁぁぁぁ!」


 バカバカ失礼な奴だな……あと馬鹿はお前だ!

 てか真面目な奴を揶揄っても思った程、面白くなかった……


「んっ? まだ居たのか? 流石にもう手遅れじゃろ?」


 俺の言葉にイケメン勇者が膝をつく……

 なんかブツブツいってるし怖いなこいつ……

 てことでサヨーナラー!


「【強制送還リパトレイション】」


 うわっ、勇者が信じられない顔をしてこっちを見たけどメッチャ目が血走ってる。

 怖いわ!

 あっ、消えてった……


「ま・お・う・さ・ま?」


 ハッ……背筋に悪寒が……

 てかこっちも目が血走ってる。


「えっと……面白かったじゃろ?」

「ぜんっっっっぜん面白くなんてないですー!」


 ウロ子の声が魔王城をこだまして沢山の部下が集まった。

 その後エリーも帰って来て、正座で説教される羽目になりました……

 ウロ子には、心の底から謝ってチョコレートパフェ出して許してもらいました。


***

次の日……


「魔王! よくもっ! よくもっ騙したなぁぁぁぁ!」


 イケメン勇者また来た……

 てか魔王に立て付く怖さ叩き込んだはずなのに、こいつ馬鹿なのか?

 てか、3人もよく付いてくるよなぁ……


「【強制送還リパトレイション】」


 部屋入った瞬間に送り返したら、すっげービックリした顔してた。

 めっちゃ面白かった……その日の夜にイケメン勇者また来た……なんなのこの鋼の心……

 それから、こいつ等しょっちゅう来るようになった……女勇者ちゃんのポジションがイケメン勇者になった……辛い……


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