〇の中に入る文字

ただの柑橘類

〇の中に入る文字

 朝六時。

 パッと目が覚め、俺はベッドから身を起こす。ついついこの時間に起きてしまうのは職業病と言うやつだろう。

 気持ちのいい朝だ。二階から降りたら、今日の朝ごはん何食べようかな。

 部屋を出て、階段を駆け下りて居間のドアを開ける。

 そこには何ら変わらない家族の姿がそこにいた。俺の家族は妻が他界していて、俺と娘だけだ。

 だがしかし、今日は何故か祖母も来ていた。

「おはよう」

 声を掛けても誰も反応しない。それどころか、二人とも顔を俯かせており、その表情はなにも見えない。ただ一つ、暗い雰囲気に包まれていることだけは明白であった。

 俺は普段席の暖まる暇もない生活を送っているため、娘は基本択捉の鎮守府か祖母に預けている。それが昨日、俺が仕事から帰ってきた時大喜びして「パパおかえり! おひげもおかえり!」と明るく言っていたはずなのに。

「おーい、返事しろよ」

 試しに近くに行き、娘に声を掛けても反応無し。なんなんだ?

「つーか、なんでばあちゃんが帰ってきてるんだよ? 滅多に来ないくせに」

 とりあえず俺のことを無視してくるこいつらはほっといて、妻に挨拶でもしに行くか。

 今から和室へと移動する。

 今日はやけに開放的だ。和室も、トイレに続く廊下のドアも、ほとんどのドアが開いている。どうしてなのか疑問に思いながらも、俺は和室に向かった。

 部屋には、見慣れた妻の仏壇があった。

 ……しかし、俺は一つの違和感に疑問を持つ。

 なぜ、


「あぁ、そうか」


 俺は全て気づいてしまった。


「俺は昨日〇〇〇んだっけ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

〇の中に入る文字 ただの柑橘類 @Parsleywako

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ