第25話
客を集めるにはどうするか?
宣伝はもちろん、サービスの充実などなど色々あるが、そのうちの一つ、交通手段をどうするか?ということも考えなければいけないだろう。
この世界には馬車はあるが車はない。
なので基本的に長距離移動は馬車であるのだが、その馬車を引く動物が国によって違ってくる。
人間の国では基本的には馬であり、獣人の国では大型の水牛のような動物であり、エルフやドワーフなどの亜人の国では大型のニワトリのような飛べない鳥である。
では、魔族領ではどうか?ということになるのだが、魔族の移動手段として小型のドラゴンの力を借りている。
ワイバーンは空を、恐竜のパラサウロロフスのような見た目の走竜は馬車を引いて移動する。
今回は人間の国を始め、世界各国から客を招くつもりである。
短距離であればいままでの移動手段で構わないが長距離となれば移動するだけで疲れてしまい温泉を楽しむどころではなくなってしまうだろう。
そのため、長距離移動の手段としてファンタジーの定番であるイメージとしてのドラゴンの力を借りることにしたクーロたちは、ドラゴンの巣へと赴いているのである。
魔族領は広い。
魔族領が魔族領になる前は巨大な魔素溜まりが各地に点在しているため人が住める場所では本来なかった。
初代魔王が生まれたことによりその問題が解決したおかげでそのままその土地が魔族領となったためとても広い。
そのため、ドラゴンの巣、もといドラゴンの生息地を確保出来ているのだ。
ドラゴン自体も空を飛ぶためや大地を走るための強靭な肉体を維持するものの一つとして魔力が必要であり、魔族として魔王の配下にいるため魔力の供給を受けることができ、魔族に属していないドラゴンより強く、また安全な生息地を確保できているため子孫も残せるというメリットが多く、このドラゴンの巣にいるドラゴンたちは魔王の一族に対してとても友好的である。
また、クーロは今代の魔王に就任する前からドラゴンの巣によく遊びに来ていたため長老ドラゴンを始めとても仲が良かったりする。
「というわけで、魔族領の活性化のために力を貸してもらいたいと思っている。
もちろんみなの安全を考慮して魔王として最大の守護の魔法を協力してくれる者に施すし、この巣は外部から接触できないように隠蔽の魔法をかけ、ここにいる皆の安全を約束する。
領内のドラゴンたちに危害を加えようとした者には領内に二度と入れないように処置をし、追い出す。
長老たちを守るための対策は最大限とると約束するので、協力してはくれないだろうか?」
そもそもこの場所自体、冒険者だろうが簡単に来れる場所ではない。
隠蔽の魔術を施すだけで安全面ではほぼ完璧に近いだろう、領内を飛ぶドラゴンに攻撃を加えようとしても空高く飛ぶものにはそう簡単に攻撃は当たらない。
領内を走ったりしているドラゴンはそもそも魔族であり、危害を加えるという行為が自殺行為になると知れば手を出すものもそうそういないうえに、手を出せば正当防衛で撃退できるドラゴンの方が多い。
危険なのは子供のドラゴンと年寄りのドラゴン、あとは妊娠中のや抱卵中のドラゴンなのだが、巣にいさえすれば安全は確保できる。
魔族領に入る際にはきちんと関所を用意し、領内にいる間のみ有効な制約の魔法を魔族の安全のために施す予定なので、危険度はその時点でかなり低い。
問題は交通手段として協力してくれるドラゴンたちが領外に出た時に襲われる可能性があるということだろうが、これ自体は魔王の得意な魔法として守護の魔法を駆使すれば領外で襲われても怪我をしたり、最悪討伐される心配は万が一にもありえない。
長老を始め、集まったドラゴンたちに説明をし、質問に答える。
「うむ、ならば腕の立つものに協力してもらうと良いじゃろうの」
長老ドラゴンはそういうと長い尻尾を地面に二度叩きつける
ビタンビタンッと音が鳴ると集まっているドラゴンの中から三匹が前に出てくる
「クーロのお願いということなら、この俺が協力しないわけにはいかないよな!」
「クーロ様でしょうが、いまでは魔王様なのですよ。まぁ、しかしそういうことでしたら私も協力させていただきます。」
「クーロ様が協力して欲しいって、言ってくれるなら当然です〜」
それぞれ
翼竜、走竜、水竜の若いながらもいずれも腕利きの三匹である。
そしてクーロがよく遊びに来ていたドラゴンの巣での遊び相手、もとい友人たちである。
「シアン、マゼンタ、イエロー!久しぶりだな!!」
クーロは嬉しそうに三匹に向かって笑顔を見せると、
三匹もとい、シアン、マゼンタ、イエローも嬉しそうに尻尾を振ったりしている。
「クーロ殿、まずはこやつらに任せてみようと思う。なにせクーロ殿とは旧知の中だしの。色々とその方がやりやすいじゃろ?」
そういってウィンクをする長老にクーロはありがとうと礼を言えば、昨今の魔族領の過疎化には長老も気にはなっていたと、そしてクーロが奮闘しているのも耳に入っていたのでどういう形でも協力できればとドラゴンの中で話し合っていたということをクーロに伝える。
「長老、みんな、本当にありがとう」
頭を下げるクーロに長老を始め、一緒に来ていたゴウワとシィ、ドラゴンたちは自分たちのトップである魔王がクーロでよかったと思い、そして魔族領の過疎化改善のためにクーロとともに力を尽くそうと気持ちを改めるのであった。
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