第23話
家族用の家に到着する
そこは2階建ての庭付き一戸建てとなっている 日本で言えば同じデザインの賃貸住宅みたいなものだろう
庭は菜園にするもよし、花壇を作るもよし、休日にバーベキューができたり
子供たちの遊び場にすることも好きなように利用できる
家の鍵を開けて 同じように靴を脱いで家の中に入る
「トイレや洗面所、風呂場の機能はアパートと同じだが 広さを変えてある
一階はダイニングキッチンで、冷蔵庫はそこだ 家族の人数を考えて大きくしてある」
もちろん調理器具も一式揃えてあり、食器類は客の分も合わせて10客分用意してある
台所は使いやすいように広々としてあり、密かにディアーヌは使ってみたいという気持ちになっていたりする
一階にはほかに小上がりの和室 これは客が寝泊まりできるように扉が付いていて
収納には客用の布団も入っていたりする
「で、そこがな 書斎となっている
勉強に使用してもいいし、趣味の部屋にしてもいい 二つ作っている、あとは階段の下には収納を作っているぞ」
夫婦それぞれ趣味の時間をとるのに便利だろう?とクーロは説明し
次は二階を案内する
二階には子供部屋として大部屋を一つ、この部屋は壁面にある棚を移動することによって
部屋を間仕切ることができるようになっている
天井にもそのためにカーテンレールを取り付けてあり、入り口も二箇所用意してある
子供部屋の隣には夫婦の寝室だ
下に書斎を作ったので子供部屋よりは狭くしてあり
そのかわり、壁面収納の数を増やしている
「で、そこがな サンルームだ」
お茶をしたりできるようにサンルームも作ってある
日本でいうところの人をダメにするソファを三つ 小さなテーブルを一つ置いてある
もちろんレイアウトは後々自分の好みに変えればいいぞと説明をし終える
「さて、家族用と一人用の家の説明はここまでだが意見を聞くために 一度下に降りようか」
すでに侍女がお茶などの準備を整えているため
下に降り 備え付けのダイニングテーブルに座る 侍女は給仕をするために立っているが
ディアーヌとアロイヴは隣り合って シィはクーロの横へ座る
それぞれの好みに合わせた飲み物を侍女が給仕し終え 一息ついてから
クーロがどうだったかな?と二人に問いかける
「正直いいますと 贅沢すぎる内容に驚いております」
アロイヴが心底驚いたという口調で返事をする
「贅沢かの?わざわざ魔族領にて通いではなく住んでもらいながらの就職だからの
従業員が満足できねば仕事にも影響が出ると思い この設備にしたのだが・・・」
「今まで、食べるのも困る生活をしていたものにとっては天と地ほどの差があるように思います
不満というわけではありません 贅沢すぎる内容に驚くのと同時に ありがたくも感じるのです」
「ええ、アロイヴの言う通り 私たちは追放されたり、自ら国を出奔したものたちの集まりです 平穏な生活などできると思っておりませんでしたし このような家を与えてもらえるとも思っておりませんでした 私たちがいた国の対応と大いに違うところにも驚いております」
そうか、とクーロは少し考え
「だが、ここは私が治める魔族領だ この設備も魔族領では当たり前のことであるし
魔族ではないからといって生活の質に差をつけるのも違うと思う
仮宿舎の方は慣れないものも多いだろうということで最低限の設備にとどめていたが
長く、ここで働いてもらいたいと思っているし
あわよくば、領民となってもらいたいとも思っている
この地で生きていくと思ってもらえれば 魔族として受け入れようとも思っている
まぁ、それはそのうち それぞれの考えで決めてもらえればいいと思うぞ」
ディアーヌとアロイヴはクーロの言葉に、そこまで考えてもらえているとはと少なからず嬉しいと思ってしまっている
ディアーヌは次期国王という立場の王子に無実の罪を着せられて今に至るのである
見た目はディアーヌよりそう歳が変わらないであろうクーロとの差に驚くと同時に
追放されてよかったのかもと思ってしまう
「おお、ところでな ディアーヌとアロイヴはそのうち、夫婦となると聞いたからの
一人用ではなく家族用の家を割り当てたいと思っているが 構わないか?」
思ってしまっている時にクーロの満面の笑みと言葉に硬直してしまう
「・・・・っだ、誰から聞いたのですか?」
アロイヴが頬を染めながら絞り出すように言葉にすれば、お前たちの部下だが?と返事をするクーロ
アロイヴが隣を見れば 顔を真っ赤にしたディアーヌの姿
そういう雰囲気を出さないようにしていたと言うのに まさかの部下の裏切りである
「あとで、家の使い勝手を用紙にまとめてもらえると有難い、私では気づかぬところもあるからな よろしく頼むぞ!」
クーロの言葉にわかりましたと返事をしたはいいものの バラした部下はあとで締めてやると思うアロイヴであった
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