第19話

5年前、ディアーナはまだ侯爵令嬢でアロイヴはディアーナ専属の従僕だった頃

当時、王侯貴族が通う学校に在籍していたディアーナは 侯爵令嬢という立場も責任もある身分であり、そして次期国王候補の第1王子の婚約者でもあった


地位も立場も上であり、学生として貴族として見本となれるようにと

幼い頃からさまざまな教養、教育を受けてきたディアーナはまさに次期国王にふさわしい婚約者であると周りが認めるほどだったそうだ

これはアロイヴが胸を張って自信満々に答えていた


シィの部下が調べてきた内容にも人格、人望ともに周りから信頼される令嬢であったという資料もあがってきている


さて、では何があって今に至るのか ディアーナが話を続ける


学園の最終学年になったとある日、とある男爵の庶子である娘が見つかりそのまま3年生として中途入学してきたのが始まりだという

年齢的なものと、学園に通っていたという肩書きが欲しいだけなのだろう

貴族としての礼儀作法は最低限も最低限、勉強もできるわけではない

ただ、今後、どこかの家に嫁ぐ際に学園に通っていたという肩書きがあれば嫁に行きやすいということなのだろうと周りもディアーナも当初はそう思っていた


思っていたのだが、その男爵令嬢が次期国王である王子にちょっかいをかけ出したところから色々とおかしな方向へ転がり落ちていくことになったという

まず、男爵令嬢が王子に学園の同じ学生だからとはいえ気軽に話しかけたりするのが問題だったのだが、それをディアーヌはきちんと説明し、注意をした


だが、日々が経つにつれ 王子を始め、王子の周りにいる者たちの様子がおかしくなっていった いままではディアーヌの話をきちんと聞き、次期国王としての振る舞い等完璧だった王子が 授業を立場を使っていかない日が増え

しかも男爵令嬢を伴って王侯貴族専用のサロンに王子の側近候補のものたちとともに入り浸るようになった

それはさすがにいけないとディアーヌは王子にも注意をしていたのだが

その王子さえ、ディアーヌの話を聞かなくなるどころか、邪険にしだしたという


危機感を覚え、どうにかこうにかできないかとディアーヌとアロイヴ

そしてディアーヌとともに危機感を感じていた学園の友人や協力者が働きかけていたのだが、学園の卒業パーティの時に事件が起こったという


王子がディアーヌとの婚約を一方的に破棄をすると宣言したこと

そしてディアーヌが男爵令嬢に危害を加えていたという やってもいない罪をでっち上げられたそうだ


さらに王子はその男爵令嬢と新たに婚約を結び、未来の王妃を害したディアーヌには厳罰をということになったが、家族に迷惑をかけるわけにはいかない そう覚悟したディアーヌは国外追放という形でアロイヴとともに侯爵家から絶縁してもらったとのことだ


最初のうちはわけのわからない展開に混乱はしたものの、落ち着いてみればあの男爵令嬢がきてから色々おかしくなったこと

以前から国内の一部の貴族が不正を行なっている可能性があったこと

そしてその不正を働いていた貴族と男爵令嬢の実家とのつながりがありそうだったということ


国内の貴族の人間至上主義に対して改革をしていかなければと密かにディアーヌは次期王妃として地固めをしていたこと


そういった諸々のことを考えて 操りやすい男爵令嬢とその男爵令嬢にコロリと騙された王子を国のトップに据えて その貴族たちが良からぬことを企んでいるのだろうということに思い至り


ならばとアロイヴとともに、そしてディアーヌが追放されたことにより、国内に危機感を感じていた当時の学園の友人や協力者(貴族の末子や庶子が多かったらしい)の協力を得て 【義侠団】を立ち上げ、各地で問題のある領地を転々として今に至る


とディアーヌは話終える


「それは大変な苦労をしたのだな しかし、そなたらの国からの客、その男爵令嬢というやらも来るかも知れんが 対応するのは大丈夫だろうか?」


ゴウワが尋ねる

「はい、それは覚悟をして参りました そういうこともあり得るだろうと」


ディアーヌの返事に ならば問題なかろうとゴウワは頷く


「そうですわね そういった事情があるのであれば姿変えの魔術もありますし わたしくも問題ないと思いますわ」


エスドもにこりとほほえみ そして侍女頭をみる 侍女頭も頷き 問題ないと思いますと返事をする


むしろ元、侯爵令嬢 しかも王妃候補だったという立場から考えれば教養、礼儀作法なんら問題はないだろう むしろ人間族に対する礼儀作法に関しては魔族よりずっと詳しく対応も完璧だろう


執事頭も礼儀作法に関しては彼女の協力は有難いですねと賛同する

シィの部下が調べてきた内容と違うところもなく 嘘を言ったりごまかしたりすることもないので問題ないと納得する


「それならば問題ないだろう 君たち義侠団を採用させてもらおうと思う

ただ、向き不向きもあるだろうからまずは仮契約 いわば試用期間というやつだな

その後、一人づつ聞き取りをし、それぞれの配属先を決定すると同時に本契約をさせてもらうとうことでどうかな?」


クーロの言葉にディアーヌとアロイヴはもちろんですと返事をする


「従業員の安全を確保させてもらうのは雇用主の責任と考えている

全員、姿変えの魔術と守護の魔術具をこちらから提供させてもらおうと思う

姿変えの魔術は制服に 守護の魔術具はそれぞれつけやすい装飾具に施す予定とするとして 本契約の前に二人には改めて本契約の契約内容を確認してもらうために話をさせてもらおうと思う かまわないか?」


「はい、問題ございません それどころか寛大な配慮 ありがとうございます」


「では、今日の面接はここまでとして 7日後までに制服の採寸などの連絡をさせてもらう

提供している施設にてもうしばらく待機してもらうことになるが 必要なもの足りないものがあれば遠慮なく部下に言いつけてくれ」



そうして義賊【義侠団】の面接は終了となったのだが

ディアーヌの話にでていた男爵令嬢が今後、客としてくることになるのだが

それはまだ先の話である









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