第18話
それから数日後 全ての応募者の身辺調査が済み 面接の日がやってきた
今日から二日間は魔王城内で働く者たちを選定する
その後城下で働くものを決め 研修を行いそれぞれの役割を決めるという段取りとなっている
面接の時間を取るため 通常の仕事はいつもより早い時間に短縮化され
大事な書類のみ終わらせて 改めて今日の面接相手の資料をクーロは確認のため読んでいる
今日面接するのは先日会った狼族の村長夫婦と保留となっていた義賊の頭領と副頭領を含んだ5組ほどの予定だ
1組だいたい1時間ほどを予定している
詳しい話を聞いたり、雇用上の条件や要望を聞くためもあるので1時間という時間をとっている 面接するのはクーロ、エスド、ゴウワ、侍女頭と執事頭 そして護衛としてシィも居る
専用の応接室を用意し、そこにクーロを中心に左右に分かれてそれぞれ座ってシィはクーロの後ろに控えて立つ
まずは1組目 義賊の頭領と副頭領
別の部屋にそれぞれ控えてもらっているため侍女の一人が呼びに行き部屋へ通す形となって居る 義賊の二人が部屋へ通される
緊張した面持ちの男性と女性 二人とも健康的に肌は焼け ほどよい筋肉が付いて居る
戦う者特有の筋肉のつき方だ 服装は貴族のような上品さがあるわけではないが
相手に不快な思いをさせない程度のきっちりとした装いをしている
「初めまして、私が魔王 クーロ・ウ・ニーンだ 今日は色々と話をさせてもらう
よろしく頼む」
そう言ってクーロは立ち上がり二人に座るように促す
「魔王様が面接をしてくださるとは、正直驚いています。
私は【義侠団(ぎきょうだん)】の副頭領をしております アロイヴと申します」
「私は【義侠団】の頭領をしています。ディアーヌと申します」
二人は礼儀正しく挨拶をしたあと椅子に座る
年齢的に若いであろう二人が義賊といえど一つの集団をまとめ上げているといわれると
それだけ突出した能力と求心力を持っているのだろう
「さて、まずは 君たちがなぜ、応募してきたのか?ということなのだが
改めて話してもらっていいか?」
応募用紙には理由は書いてある だが、改めて本人たちの口から聞くためにクーロは質問をする
では、私が とディアーヌが口を開く
「私は魔族領から離れた国の侯爵令嬢でした 今から5年前、無実の罪を着せられてアロイヴとともに追放されました。国の体制に思うところもあり 不正を働く私たちを嵌めた貴族たちに一矢報いるため 義侠団を立ち上げ各地を転々としておりましたが
有名になり過ぎたことによりいくつかの国から目をつけられてしまいました
このまま続けていては最悪も考えられます
そんな折に魔族領での求人募集の情報を知り 人の国にいられないのならば
団員たちを守れるならばと応募した次第です」
人間の国の法律はあくまで人間の国でのものだ
魔族領でその法律は通用しない 罪人の受け渡しも特にしていない
ディアーヌたちを採用後 身柄の引き渡しを要求されたとして応じるつもりのないクーロは ふむ、考えたものだなと思う
採用後の従業員の身の安全は魔王の権力を持って保証する旨を記載していた
魔族領と人間領の法律は別のものだ よほどの凶悪な罪人であればそれなりの処置はあるが ディアーヌたちの身辺調査をした限りでは
強盗大量殺人などなど重大な犯罪を犯したわけではない
たとえディアーヌたちに手配をかけている国から引き渡し要求があったとしてもはねのけるだけの力が魔族領にはある
「団員たちの元の身分は貴族が大半だと記載があったが?」
「貴族の末子や庶子などが主です 立場的にはいてもいなくてもという扱いを受けてまいりました者たちですが貴族の末子に関しては最低限の礼儀作法は習得しております」
それならば貴族など立場の上の者たちに対しての接客などは問題なさそうだなと考えるクーロはエスドとゴウワにそれぞれ視線を向ける
「うむ、某は問題ないと考えてはいるが アロイヴ殿は追放される前は何をしていたのか聞いても構わんか?」
「はい、構いません 私はディアーヌ様の専属の従僕でした
執事としての勉強をしておりましたので雑務全般に関してはそれなりに身につけております」
ほう、それは頼り甲斐がありそうだのとゴウワが頷く
「では、私からは ディアーヌさん 無実の罪を着せられて追放された ということでしたが
どのようなことがあったのか 差し障りがなければ教えていただいてもよろしいですか?」
エスドの質問にディアーヌは顔が少しこわばる
「もし、話したくないということであればお話いただかなくても結構ですわ
それによって採用の合否が決まるというわけではありませんの ただ、どのようなことがあったのか気になる程度ですので」
エスドが補足して伝えれば ディアーヌは一度深呼吸をした後
いえ、お話しいたしますと今度は姿勢を正して話し出した
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