第16話

クーロはもふもふの子犬もとい子狼を前に少し緊張しつつ近づいて行く


「こんにちは 何か、探しているの?」


威圧感のでないようにまた、警戒されないようにクーロは口調を変えて話しかける

実はオロオロとしていた子狼は話しかけられてハッとしてクーロを見る


「お姉ちゃん、だあれ?」


そして首を傾げてクーロを見上げて一言


「お姉ちゃんはこの街の住人だよ 何か探していたの?」


「えっと・・・、お母さんたちのいるところがわからなくなっちゃったの」


そういってしゅんっとしてしまう子狼にクーロはかがんで視線を合わせる


「そっか、ならお姉ちゃんたちが連れて行ってあげようか?

シィ 場所はわかる?」


「もちろんですよ」


シィに聞けばすぐに返事が帰ってくる クーロはどうする?と子狼に聞くと

子狼はいいの?と表情が少し明るくなる


「もちろん 迷子は見過ごせないからね」


笑顔を見せれば笑顔で返してくる子どもにクーロは立ち上がり

ヨイショッと子供を抱き上げる


「シィ、どっち?」


「こちらですよ 俺がかわりましょうか?」


子供を抱くのを変わろうかというシィに大丈夫だと返すクーロ

その後はシィが先導して狼族の宿泊場所へと歩いて向かう


その間に子狼の名前を聞き、この街には少し前にきて 前の村ではどうだったとか

何気ない会話をする


子狼の名前は ココといい 前の村では作物の育ちが悪く、また猟場が山火事により焼失してしまったため食糧難が続いていたこと

魔族領から物資の支援が来てはいたが本来、来るはずの他領の支援が来ず

困窮していたところにこの募集がかかったため 村の総意で村全体で応募をしたということを拙い言葉で説明してくれるのを、そうかそれは大変だったねとクーロが相槌を打つ


たしかにそのように書類にも記載があったのと魔王としての仕事の決裁書類にも狼族のいくつかの村へ支援した内容のものがあった


シィもうなづくので、嘘ではないのだろう

ココを抱き上げて子供特有の肉付きの良さが無く、毛並みも悪いことから

よほど切迫していたのだろうと クーロのなかでは狼族は採用方向へ天秤が傾いている


そうして雑談をしながら歩いているうちに狼族の宿泊場所へと到着しましたよとシィがクーロへ告げた





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