第14話
面接の前、魔王城の城下街にクーロは立っていた
温泉街の進行状況を確認するためだ
エスドとゴウワはそれぞれ別の仕事をしている
もちろんクーロも魔王としての仕事を終わらせてからきている
「一人でもよかったんだがな」
「そうはまいりませんよ なにせ魔王様ですからね」
「だから大丈夫なんだがなぁ」
「魔族なら魔王様に危害を加えようとは思わないでしょうが、今は他族がいつもより多くいますからね 何かあっては俺がエスド様に消されますよ」
「そうは言っても、私とて自分の身を守る術ぐらいは身につけているのだが
シィ お前もエスドも心配しすぎだと思うぞ」
「心配しすぎぐらいがちょうどいいんですよ」
クーロと連れ立って歩きながら話しているのはクーロの護衛のシィ・ノービである
スッキリとした顔立ちに程よい筋肉のついた身体、動きやすい服装に身を包んでいる
護衛としてはもちろん情報収集など諜報活動も得意なシィは面接前の応募してきた者たちを部下とともに身辺調査をしてもいる
普段、魔王城にいるクーロに護衛は基本いらないためほぼほぼ外を走り回っているのだが
クーロがこの度、城下に行くということで護衛としてのついてきたのだ
魔王城城下は本来、魔族が9割を占めているためクーロが一人で歩くことは実は問題がない
魔王とは職業としての意味合いと同時に魔族のなかでは特別な一族を指す言葉でもある
初代魔王の血を引いている者が魔王の一族となるのだが
まず、魔族領は特殊な土地柄であることから説明しよう
初代魔王が生まれるまで魔族領は人族を始め、ほかの種族が住める場所ではなかった
人族はその濃い魔素により命を落とす者もいたという
魔族は魔素に抵抗力があり、またその魔素を魔力に変換して魔術を行使することができる種族のことをいう
かつては迫害の対象であったものたちが少しずつ、のちの魔族領となる土地に追いやられて生きてきた
その魔族の中から特殊な体質を持つものが生まれたのだが、それが初代魔王であった
膨大な魔素を取り込み、それを魔力として魔族に還元することができたのだ
濃すぎる魔素は魔族すら病む原因となっていたため、初代魔王が生まれたことにより
魔族領が魔族が住める土地へと少しずつ変わって行った
そして、初代魔王の子もまた、同じ体質を持つものでその孫も、さらにその孫もと
現在に至る
魔王の一族が絶えれば魔族領は再び人も魔族も住めない、または住むことが困難な土地に逆戻りとなる なので魔族は魔王の一族を特別に扱ってきたのが今なのだが
それを知るのは魔族ばかりで、2000年前に和平を結んで現在に至る人族他は長い時間がすぎたことにより魔王一族の特異な体質を忘れ危害を加えてきたこともあるので
護衛がかならず魔王一族には一人に一人、付いている
一族の人数が多ければ、魔素は無害に近いものとなりまた、魔族への魔力の還元もスムーズに行くため結婚をして魔族領を出た魔王の血筋のものであっても庇護対象となるのだが
いまはクーロの話に戻ろう
シィは周りを警戒しつつもクーロとともに城下町の視察を続ける
至る所で工事が進んでおり、時にはかおみしりと話をしつつ街を回る二人であった
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