第二章最初の旅 天上のボビンレース
旅の決まり事
学校から帰って、私はミミミと話していた。
「糸に関係した旅? 」
「そう、糸ちゃんは僕を「作ってみたい」と思ってくれたから僕はここにいる。糸ちゃんも何となくだけど、手芸が楽しくなってきているんだろう? 」
「うん、他のマスコットを作りたいと思ったけど、もうミミミみたいにはならないだろうから。だったらミミミのお布団とか作ろうかなって」
「僕の布団? 糸ちゃんのベッドがあるのに? 」
「だってお母さんが天気のいい日にはお布団を干すでしょう? お母さん雑な所があるから、ミミミがそのまま二階から落ちたりしたら大変」
「ハハハ、それはきっと大丈夫、そうなったら目が覚めるよ。今まで二回お布団をお母さんが干したけれど「ミミミちゃんはちょっと机の上にいてね」って言ってくれたんだ、あやうくまた返事をするところだったよ」
「だったら机の上に何かあったらいいかな、かたいから」
「糸ちゃんは本当に優しいんだね。ありがとう」
そしてもう一つ聞きたいことがあった。私は昼休みに学校の図書館に行って、久重さんの本と、まよいながらインド数学の本を借りてきた。そして教室で久重さんの本を読んでいると、礼が
「何勉強してんだよ糸、お前最近ちょっと変だぞ」
成績は私と同じくらいだけれど、とにかく感が良いのだ。
「別に何もないよ、それよりも見て、これ弓曳童子っていって、久重さんがつくったんだよ! 」
「ひさしげさん? 知り合い? 」
「いや・・・・・明治の人だから」
「会ったことがあるみたいに言うなあ、へー・・・電気のない時代にか・・・すげー、サッカーで言ったらメッシだな、神だよ」
「自分は神だって言うくせに」
「うるさいな、本物の神なんだよ、メッシは」
ぷいと行ってしまった。その礼の姿を見ながら
「もし、メッシにサッカーを教えてもらうことができるなら、きっと私より礼の方がふさわしいよね、プロになりたいと思っているもの。だったら、久重さんや、ミミミの側にはもっと・・・」
そう考えた。
私はミミミに聞いてみた。
「ねえ、ミミミ、どうして「私」になったの? もっとえらい子はたくさんいるでしょう? 」
するとミミミは
「じゃあ、糸ちゃん、例えば久重のような子供がいて、久重といっしょにいたらどうなる? 」
「きっと色々質問して・・・そうか! すごいものができるよね」
「正解! その子には発明の力があるのに、きっと久重もついつい手助けしてしまうと思うんだ。するとそれは「その子の発明」ではなくなってしまう。こうなってはいけないんだよ。
わ・・僕にしても久重にしても世界の知らないところはたくさんある。手芸の世界は僕も良く知らない、だからその旅をして僕も新しい発見をしたいんだ」
「そうなんだ・・・」
「これから旅が始まる。今はいろいろな事が簡単に調べることができるけれど、できれば糸ちゃん、そうやって調べることは「一つの旅が終わってから」にしてほしい、いいかな? 」
「うん」
「それと、これは僕も気を付けるけど、体調の悪いときは言ってね、中止するから」
「ハイ」
「それと、旅の中では僕とはぐれないこと」
「ハイ」
「帰りたくなったら、素直に言って、すぐに戻るから」
「ハイ」
「旅の目的地は、僕か久重が大体決めるからね、それはちょっと秘密だよ、楽しみにしておいて」
「ハイ!!! 」
「糸ちゃん、今日の体調は? 」
「最高です!!! 」
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