第7話


「クソがッ!!」

 前回同様、俺は煮え切らない思いを口にした。が、教室だった。


「「「えっ?」」」


 クラス内の視線が俺に集まる。


『あほー!! ぷっ』

『ごめんなさい……』

 笑いながら妖精さんにデコピンされた。


 〝パチンッ〟


 ──十秒前に戻った。


『テイク2いくぞ!』

『でも、どうする? 〝いやです〟だよ』

『〝机ドンからの耳つぶ〟さえ決まればいけるじゃろ』

『そんな単純な話なのか……。なんか違う気がする』

『何を弱気になっとる!! やるんじゃリク!!』

 相変わらず妖精さんはノリノリだ。


 杉山からの飯の誘いを断り、北村と出会さないよう調整し、七組に向かった。


 ──到着。さて、どうするか。ドンッして逃げられたら終わりだ。いや、考える必要は無いか。やり直せばいいんだ。


 〝いやです〟が割と応えるのかもしれない。


『よし行ってこいリク!』


 取り巻きのモブは安定のフルシカトで、二見の机を最短距離で目指した。


 そして、目の前に到着。やる事は1つ。


 〝ドンッ〟


「ひゃあッ」

 慌ておののく二見。俺が顔を近付ける前に……立ち上がり離れてしまった。

 これは、怯えてる? のだろうか。なんだこの違和感……。



『なんてこった……』

 ガッカリした声の妖精さん。



 〝パチンッ〟


『ねっ? 妖精さん? 俺、言ったよね?!』

 ガッカリする妖精さんに、俺は冗談交じりに言った。



『すまん、リク……! ……くそくそくそくそーー!』

 妖精さんが悔しがるのは久々だ。二見、予想の斜め上をいく。



『あの子、怯えてるような気がするんだけど』

『いや、男慣れしてない若しくは人見知りとかじゃろ。逃げられないよう〝壁ドン〟〝股ドン〟からの〝耳つぶ〟でいくぞ!』


 3つだと……? それは許されるのか……?

 しかし、プランを提示されれば実行するまで。深く考えたらダメだ。


 だが、妖精さんの楽しそうな顔を見ると、本当に最適解なのか、疑わしくもなる。でも、楽しんでくれてるなら……いいかな。


『おーけい。プランを遂行する!』




 ──しかし、壁ドンチャンスが訪れない。

『昼休みはダメじゃな。壁ドンともなると、シュチュエーションが大切だからのう』


 白石の後ろに隠れるような子だ。一人っきりになる事は稀なのでは無いだろうか。



 ──予想は的中。まさかの学内ノン壁ドンチャンスで予想外の苦戦を強いられた。


 ここ三日、妖精さんが二見に張り付き動向を探っていた。が、一人になる事は無かった。



『もう、学内は諦めよう。帰宅を狙うか。後をつけて場所は調べておく。どうじゃろか?』

『任せるよ! いつもありがとう」

「戯けが! 壁ドンの練習でもしとれ! エア壁ドンじゃ!!」


 あいも変わらず妖精さんはノリノリだ。



 ──そして、俺たちは三日前の放課後に戻る事にした。



 〝パチンッ〟

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