第6話


 ──退屈な時間を終え、俺たちは昼休みを迎えた。


『飯抜きで行くぞ! ドンッチャンスを見逃すな!』

『オーケイ!』

 妖精さんは相変わらずノリノリだ。これから二見を攻略する。


 俺はクラスメイトの杉山に飯を誘われるも断り、7組に向かった。昼休みが始まったばかりの為、廊下は生徒で溢れかえっている。もちろん御構い無しだ。


 よし、居た。二見、あの子だな。



「あっれー? やのちゃんじゃーん!! どしたの?」

 げっ、こいつはチャラ男の北村。1年の時同クラでまぁまぁ仲が良かった。7組だったのか……。


「ちょっとね」


「おいおいおいおーい! 水くさいじゃんか! 女か?! このクラスの女子のIDなら教えてやるぜ!」

 そう。何気にいい奴だから、付き合いづらい。


「大丈夫。自分で聞くから」


「へ〜!! やのちゃん格好良くなったよなぁ! で、誰なんだよ!」

 俺の体を突きながらチャラそうに聞いてくる。いや、ほんとチャラい。


「くすぐったいからやめろー!!」

「やめねーぜ! ほーらほら! やのちゃんはここ弱いもんなぁ〜?」


 当然やめるわけもなく、北村はしつこく聞いてきた。まぁ、こういう奴だから。折れるなら早いほうが良い。


「はぁ。二見さんだよ」


「はっ?! おいおいおいおい、ちょっとこっち来い!」

「ちょ、北村ぁ!!」


 俺は廊下に連れ出されてしまった。なにごと?


「やのちゃん! やめとけ!! 確かに格好良くなった。イケてるよ!! イケてるけど、二見さんはやめとけ!」

 さっぱり意味がわからない。どう言う意味だ?

 と言うか、北村、声でけーよ!! おまえの声、クラスにまで響いてるぞ……。勘弁してくれ……。



 妖精さんが口を開く。

『身の程を知れって事じゃないか』

『あーー』



「忠告ありがとう。でも後悔はしたくないから!! 粉砕しようが撃沈しようが行くよ!」


「やのちゃん……。おぉやのちゃん。そこまで二見さんの事を……!!」

 いや、だから声でけーよ……。


「ちょっと北村!! ちほがどーかしたの?」


 ほらみろ。白石の取り巻きが来てしまった。やり直すか……。



『続行じゃ!!』

『了解……』



「えっ? べ、べっつに〜。お、俺学食行かないと!」

 北村は逃げるようにその場を去ってしまった。北村……ほんとチャラ過ぎだろ。



『さすが北村じゃ! 予想通り!』

『まさかここまで読んでたのか?』

『なわけっ!』

 だよね……。



「ねぇ、聞いてるの? ねぇ?」

 取り巻きのモブがなんか言ってるようだ。


「えっ? なに?」


「無理だから! あんたじゃ無理! 帰った帰った!」

 このモブ、白石の時も似たような事言ってたよな。相手にするだけ時間の無駄だな。


 俺はクラスに入り一直線に二見の座る席まで向かった。

 俺の事を止めようとするモブを振り払いながら。


 二見の前まで来た。



『手筈通りにやるのじゃ!プランを遂行せよ!』



「二見さん。お話がありま──」

「いやです。ごめんなさい」

 慌てた様子で白石の背中に隠れてしまった。


 えっ? なんだこれ?

『妖精さん?!』

『リク、これは予想の斜め上じゃぞ! 面白い! 続行じゃ!!』

『了解』


「ごめんね。怖がっちゃってるから、帰ってもらっていいかな?」

 チッ、白石か。


「いや、俺はただ二見さんの事が──」

「あー! その先は君の為にも言わない方が良いかな? もう帰ろっか? ねっ?」

 白石てめぇこの野郎……。



『ここまでじゃな』


 〝パチンッ〟



 ──俺は昼休み開始に戻っていた。

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