第13話【避難所への道行き】(1)

激しい瓦礫の崩れる音に驚き、訳もわからず泣き始める子を抱き締める。「ぺたり」と尻餅をつき只、目の前の惨状を見つめるしかなかった。


「決してあなたのせいじゃないわよ」

そう言って小さな背中を撫で、先に進むようにうながす。

小さな命を守るため、自らをかえりみず繋いだ生命のバトンはこれからもずっとこの先、託されるでしょう。

さっきまで生きていた尊い「命」、そして救われた「命」そういった事を教わった気がした。


「ありがとう。ごめんなさい……」

理解ができず、涙すら出なかった。

後悔だとか、そういった感情が遅れてやってくる。

涙は頬を流れ、「ポタポタ」と赤子へ落ちる。


「おーい!!何してるのー?」


聞き覚えのある声が後方より聞こえる。

「アイナ!何で泣いてるのー?先いこ?」


後ろから声がし、振り向くと魔力マナにより足だけが燃えているニッシャに小脇に抱えられたミフィレンの長い髪が地面に向かい揺れている。

「ニッシャ!頭に血が昇るよー!」

抱えられながら「くるり」と回り、手招きをしている。

崩れた柱から、アイナの後方まで小さな火のレールが伸びていた。

粗方あらかたの現在位置がわかっていたため、【火速炎迅かそくえんじん-初速-】を使い救出したのだ。


「お前も、中々勇気あるじゃねぇか!!良くやったなミフィレン!」

頭を撫で、褒めると顔を赤くして小さな手で、顔を隠す。


老婆がアイナを介抱し、立ち上がる。

「これで涙拭きなよ!」

ミフィレンは小さな花柄のハンカチを渡すと「レッツゴー」と言って避難所の方を指差す。

「あなたには呑気過ぎて泣けてきたよ......」

老婆の手を借り、涙を拭うと小さく笑って歩き出す。


【協会魔法壁マジックウォール前】


「くそっ!!応援はまだかー!!」

隊員達の怒号が飛び交う中、一人、また一人と着実に人間が減っていく。


【精鋭隊200人→177人】


【討伐隊300人→198人】


「まずは確実に倒せる軍隊蜂アーミービーをまとめて拘束し炎魔法で焼き払え!!全部隊、隊列を整え襲撃に備えよ、バラバラになればこちらが不利だ!!一体ずつ着実にに潰すぞ!!」

【部隊長】クラスが精神感応テレパシーを使い伝達を行う。



「奴等は完璧な組織で動いているが所詮虫だ!!何処かで群れを統率する女王を無力化せよ!!」


合図と同時に数名が詠唱えいしょうを唱えると地中から植物が折り重なり1つの巨大な手が現れ大きく凪ぎ払うが、軍隊蜂アーミービーは全軍一斉に特攻し、その姿はまるで1つの生物かたまりの様に植物の隙間を通り抜け部隊へ襲いかかる。


「ババババッ!」と羽と植物が擦れる音が辺りに鳴り響く。

先頭がすり抜けた途端に、有象無象の蜂達は道に迷ったように「ぐるぐる」と空中を旋回し始めたのだ。

あるじを失った奴隷どれい達は、女王クイーンの後を追うように霧散むさんしていく。

女王蜂クイーンビーは他の蜂達に比べ約1.5倍、体が大きい。

それを利用し、【入り口】、【出口】は植物の交わりが大きく、中央は狭めていたのだ。

勢い良く特攻した蜂たちは、巣のあるじたる女王クイーンを置き去りにしたのだ。

よって、突入された段階でその隙間を無くし、植物達が織り成す檻は女王蜂クイーンビーその物を無力化に成功したのだ。


第2陣が炎魔法で焚き付け植物が親指を立て「パチパチ」と燃え上がるその様は少しではあるが隊員達の心に【勝利】という【希望】が見えていた。


「やったぞ!作戦成功だ!」

隊員達が喜ぶのも束の間だった。



「大変です!!部隊長!!前方より物凄い速さで何かが接近しております!!」

探知ディテクションを使うが、「前方」、「上空」と激しく燃え盛る物体しか視界に入らず、困惑する隊員達。


「違う!下だ!!下に何かいるぞ!」

地中から、巨大な2ついのハサミが現れる。

部隊は、地中から死蠍デススコーピオンが出てきたことにより散り散りになってしまう。


隊列を組み直せ!と言う合図もむなしく「ぐるり」と一蹴し、全長11Mもあるその体は横一線に隊員達を吹き飛ばすと地面に激しく打ち付けられる。

全身を強打し気絶する者、内臓を損傷し血反吐ちへどを吐く者がいた。

そんな中、諦めてない者がいた。

「くそっ!!反撃の狼煙のろしをあげるぞ!いくぞお前ら!!」

意気揚々いきようようと高々に腕をあげる!

上がらない!?地面についた、手足は何かに捕まれたようにビクともせず、叫び声をあげる隊員達は一体自分に何が起こったのか理解出来ずにいた。


地面から静かに現れたのは、劇毒ポイズン蜘蛛スパイダー、その自慢の糸を、周囲へ張り巡らせ獲物じゃくしゃが掛かるのを「ジッ」と待っていたのだ。

「ジリジリ」近づき恐怖のあまり泣き叫ぶものもいた。

捕食は一体ずつ糸を綺麗に巻き付け、消化液を体内に流し入れる。そうすると獲物の体内は「クリーミー」な流動体になり丈夫な骨でさえ、食べやすいとされていて獲物は背中に備蓄する習性を持つ。

その糸の粘着性と汎用性もあり【攻撃アタック】【防御ディフェンス】【トラップ】と用途は様々である。


前方に死蠍デススコーピオン、後方は劇毒ポイズン蜘蛛スパイダー

男達は、前へ進まなければいけなかった。

【精鋭隊】177人→140人(捕縛23)


【討伐隊】198人→128人(捕縛37名)



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