第12話【進行する恐怖】(3)

煙草を吸い終えると、おもむろに立ち上がる。

「待て!ニッシャ!こんな状態でお主どこへ行く!」

止めようと、護衛を使い扉の前に立ち塞がる。

「どけ!!邪魔だ、私は煙草買いにいきたいんだ」睨みを利かせ、護衛は崩れるように気絶する。

「やはり、昔から変わっていないな。好きなことをして自由奔放に生きそうやっていつもお主は真っ直ぐな瞳をしていたな」

懐かしそうに私を見ると、少し微笑んでる気がした。

「無事を祈るぞ。ニッシャ」

扉が自動で開き私は、ミフィレンを探すため外へ出る。

仕込んでいた煙草を再び吸うと

お祭り騒ぎのような協会内外へ、繰り出す。

「さぁて、一暴れするか~」



【協会内部広場】


(こいつ化け物か……)

息を切らせひざまずくノーメンは、目の前の2匹の死闘を見守るしかなかった。

本来、攻撃役アタッカーに向いてないノーメンは、主力になれず獄炎猟犬ヘルブレイズハウンドのサポートをするしかなかった。


だが2匹の激しいぶつかり合いにより完全にタイミングを、見失ってしまった。

正面からの攻撃は全て、牛刀で防御ガード反射リフレクションされてしまうため、あの、牛刀一本で〔攻〕〔防〕〔反〕全て賄えてしまうためとても厄介であった。


(どうにかしてを使えぬようにし、死角から攻撃せねば……)


牛人ミノタウロスは両手を使い、大振りで斬りかかる。

それを避け、一定の距離を保っていた。

(指を咥えてただ見てるわけにはいかないな)

咄嗟に何かを思い付いたノーメンは、あろうことか獄炎猟犬ヘルブレイズハウンドを消したのだ。


突然目の前に消えた強敵に、一瞬静止したかに思えたがゆっくりとその巨体はノーメンへ向かってくるのだ。


立っているのも、ままならないほど「フラフラ」であったが正面から立ち向かう決心をした。


お互い満身創痍な状態であったが、おそらく次の一撃が最後だと直感でわかっていた。

(さぁこい。もっと近くに!!)

その意思が伝わったのか、ゆっくりと向かってくる。


両者の距離が、およそ牛刀4.5Mの攻撃範囲内、渾身の力で振りかぶり頭上に差し掛かる寸前、ノーメンは右手で受ける。

獄炎ヘルブレイズの籠手ガントレット】、牛刀の遠心力+牛人ミノタウロスの力+熱量が加わり直撃せずに溶解したのだ。

使い物にならないと、気付き後方へ投げ捨てる。

「ドスン」という、鈍い音がした瞬間、両腕を振りかぶる牛人ミノタウロス。ノーメンはそれに合わせ、両手ガントレットで拳を合わせる。

両者の周りには鋭く燃え盛るような衝撃波が立ち、瓦礫や水が舞い上がる。


均衡する力だが圧倒的な体格差、それに加え疲労もあり徐々に押され始める。

両足の「ミチミチ」と骨が軋む音がわかる。

全体重をかけられ、巨大な岩石のようにその身にのしかかる。

威力を上げようにも、先程の火力で大部分は消費してしまった。それに加え、獄炎ヘルブレイズ猟犬ハウンド魔力マナを使いきる訳にもいかなかった。


地面に、背中が合わさりそうな程押されたところで奥の手を使うことになる。

最大火力フルパワー獄炎×ヘルブレイズ電磁加速砲レールガン


あの時第2話参照の攻撃は、幾倍にも膨れ上がり牛人ミノタウロスの肉体に穴をあける。

稲妻は体中を駆け巡り、獄炎はその巨体を燃やし尽くしていた。

「ヴォォオ」と悲痛な叫び声が聞こえたがやがて鳴き止み。

巨体のど真ん中を貫く一筋の光が降り注ぐ。

ノーメンはこれを予想し上空へ、炎雷えんらいを逃がしたのだ。

使いどころを間違えれば、都が吹き飛んでしまうため、それを避けるためギリギリを狙ったのだが予想外に苦戦を強いられてしまった。


(柄ではない、闘いかたをしたが存外悪くないかもしれん)

指も動かないほど消耗したため、しばらくは都外おうえんにいけそうもなかった。

握った拳を開くと、小さな子犬が眠っている。それを横目に一息つくと静かに目を閉じた。


獄炎ヘルブレイズ猟犬ハウンド】と【人】、相容れない二人だが、その意味勝利は大きく、その眼前にはどこまでも広がる蒼天が広がっていた。



【協会内非常通路】


避難所へ向かうミフィレン達は、ゆっくりではあるが着実に目的地まで近づいていた。

小さな体だが、ニッシャ譲りの熱いハートは健在だ。


「お嬢ちゃん、娘達を助けてくれて、ありがとうねぇ」


聞き取りづらい声が前方から聞こえ、それを小さく頷き反応する。

良いことをして、褒められ「ニッコリ」まん丸笑顔をしたら、抱いている赤子が丸顔を見て「ケラケラ」笑っていた」

うっすら髪の毛が見えるほどの頭を撫でると、「すやすや」眠ってしまった。

山の天気のような、赤子にもうすでに、お姉ちゃんの様に接していた。


魔法壁マジックウォールが一瞬消えたことにより、もはや協会内部は安全とはいえず、いついかなる災害が起こらないとは限らないのだ。迅速な対応と確実な判断を誤れば死に直結するこの場面で、誰一人として、戦闘員がいないこのメンバーは自殺行為とでもゆうだろう。


「おばあちゃん!まだ着かないの?」

疲労がつのり小さな足は想像以上に進まず、怪我をしているアイナに代わり赤子を抱き走る。

轟音ごうおんが後方から聞こえる。

ノーメン達がいる広場の方から、鋭い衝撃波が襲いくる。

後方が次々と斬撃の痕が付き2人はミフィレンの「伏せて!」という声を頼りに、体を小さくした。


先程の衝撃で柱は耐久度の限界を迎えたのか、ミフィレンめがけ倒れてくる。

咄嗟とっさに前方にいるアイナへ赤子を投げ渡すと崩れるように転び、倒柱とうちゅうに巻き込まれてしまう。

判断が少しでも遅ければ、犠牲者は二人だった。


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