第10話【進行する恐怖】(1)
「大丈夫だ問題ない。我々は通常通り任務をこなそう」
〔
(完全迷彩のその体長は5Mであり、猛毒を含む尾と針は6M程ありここまで大型なのは稀である)
〔
(数万匹の手の平サイズが塊で群れをなす。その中に1匹いるとされる女王が軍を統率している。)
〔
(主食は主に虎やその他猛獣である。劇毒酸性の液体を吐き、耐熱耐冷性の糸はどんな炎でも燃えず、どんなに冷えようと凍らない。その耐久度およそ10tと超強高度である。)
〔
(環境の変化により突然変異したとされる。全長4Mと大柄であり、完全肉食で強者の血肉を吸収したことにより、文字通り鋼の肉体を手に入れた)
【協会内部広場】
ノーメンにとって非常事態でも、態度は依然変わらず只、与えられた任務をこなすのみ。
【ミフィレンを任せたぞ。】
だが、今のところ「犬」の方が役に立っているな。
(やはり、己が可愛い人間ばかりだ。自身の保身の事しか考えられない愚かなものしかいない)
人混みに巻き込まれ足を怪我したらしい女の子が、赤ん坊を抱いたまま動けないようだ。
そんな中、自身も怖い筈なのに同じ目線に合わせたのが、ミフィレンだった。
「大丈夫?私ミフィレン!あなたは?」
肩に犬が乗った状態で座り込む女の子に手をさしのべる。
手を握り立ち上がると同時に「犬」がミフィレンとアイナを行き来する。
不思議な事に、小さな擦り傷などが治ってゆく。
「私、アイナ。お母さんと一緒に来たの。
あなた優しいんだね。この魔法のお陰で不安が和らいだわ、ありがとう。」
持ち前の明るさと魔法の温かさもあいまってか、落ち着きを取り戻す。
外部では、危険生物襲来で協会内部に常駐する、部隊が出払っている。内部に先程の喧騒はなく荒れた広場は静寂だった。
ノーメンは腕を解き小さな3人へ歩きだす。
(ミフィレンは任されたが、あの小さいのは誰だ。任務に支障がなければいいが)
その時だった、広場上空の吹き抜けの
【協会内部広場】
(僅かだが気づいたのは協会でも数名である)
その一人である、ノーメンは数秒を見逃さず、落下する【それ】が着地する寸前にミフィレン含む子ども3人を消し、15M程離れた、己の足下まで移動させた。
噴水は破壊され大きな水飛沫と視界を
〔
(全長は
なぜ、
ノーメン程の実力者ならば、互角または勝利することなど容易い筈だがそれが出来ない状態に陥っている。
だが無限ではない。
消し去りその事実を保持することができるだけだ。
保持するために消費される
ミノタウロスの
ノーメンの
(ここでやるしかないのか。だが被害が甚大になるやもしれん)
この場において戦闘のスペシャリストたる、ノーメンだが、その戦い方は地味で相手の攻撃を一時消し去りそして解放するという至ってシンプルな戦い方だ。
そんな思考を巡らせるなか先に動いたのはまたも、ミノタウロスである。
(ミシッミシッ)という、瓦礫を踏みつけまるで飴玉を粉砕したような音を響かせる。
一歩、また一歩と徐々に追い詰める姿は、どちらが獲物で誰が狩人かを瞬時にわかる状況であった。
そんな中、唯一立ち向かったのはあの【犬】だった。
小さい体ながら、必死に喰らい付く
。だがその巨体の前ではたかだか子どもの手のひらサイズの犬など蚊ほども思っておらず、素通りをする。
負傷
無力な赤子
子犬と
そんな状況で守りつつ、倒すのは可能なのか。
一瞬の気の緩みも許されない中で、考えを巡らす。
咄嗟にノーメンはニッシャから受けた
受けた攻撃魔法は、保持された分、加算され元の威力よりも格段に破壊力が上がる。
地面が燃え上がり天にも昇るその勢いは凄まじい爆発音と共にその体を包み込む。
だがその攻撃でも怯まず燃えながらも進行を止めない。
「ジリジリ」と皮膚の焼けるような臭いが立ち込めるなか、恐怖の塊がゆっくりと確実に近づいていく。
絶望の表情は、見えずとも心では既に負けていたノーメンだった。
(俺もここまでか……)
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