第8話【目的と生命】(1)

【応接室扉前】


ここに来るのは、初めてだな。

私の身長よりも大きく、さすが協会と言わざるをえない程、豪華な装飾をされている。

(この先は、お前一人で行け)

とでも言ってるのだろう。

ミフィレン1人見知らぬ土地に置いていくのは心もとないが仕方がない。

奴は依然と私の方へ向き直り、扉を開けている。


着なれないせいかドレスの裾を踏みそうになり、前のめりになる。

面倒くさいが手で捲し上げ、ミフィレンの目の高さまで腰を落とし合わせる。

「ちょっとだけ、中で話ししてくるから、大人しく待ってるんだぞ?」

安心させるため「ニッコリ」笑うがまたも機嫌が悪そうに「ムスッ」としている。下を向いている、頭を「ポンポン」と二撫ですると、扉の向こうへ歩きだす。


【ピーン】とドレスが引っ張られ、危うく転びそうになり、後ろを振り返ると泣きじゃくりそうな顔でこちらを見ており、目元は涙で零れ落ちそうだった。


(そうか...ずっと二人でいたもんな...寂しいよな。)


気持ちを察した私は、小さな手を掴みミフィレンの手に【炎魔法】で【犬】を造ってやった。


魔法に関しては繊細な方だから、ちゃんと燃えない様に調整してある。

よく一人で造っては、寂しさを紛らわしたもんだ。


本物の生き物のように、手のひらを動き回る、事実【魔法】は寂しい気持ちを紛らわせ、ほのかに温かさを与えた。


「パァッ」と明るい表情になり、その小さな体はミフィレンの周りを駆け巡る。


内緒にしてるが、とっておきの副効果として何が有っても守れるようにおまじないをかけておいた。


「ノーメン、犬っコロ、ミフィレンを頼んだぞ!」


小さく手を振る私に、腕を組み無言を貫くノーメンとミフィレンは小さな体に大きな身振りをし快く送ってくれた。


「行ってらっしゃい!」

協会中に響かせる程の声をあげ、私はそれを聞くと中に入り重く硬い扉が鈍い音と共にゆっくりと閉まる。


【応接室内部】

目の前には、いかにも偉そうな老年の男が椅子に腰かけている。

両隣には、いかにもな護衛の男2人が立っており、森で研ぎ澄まされた感覚のせいで殺気が伝わってくる。

ガラス張りのテーブル越しに話しかける

「よく、きた。ニッシャよ、そこへ座れ」


声色は低く、それでいて聴き取り辛かったが何となく対面の椅子へ座った。

お上品とかそこら辺は、わからないけどとりあえず足を組む。


(私の美貌をもってしても鼻を伸ばさないどころか、視線すら送らない。全く、お堅い職業は嫌だねぇ)


このドレス「スースー」して気持ち悪いけどまぁいいだろう。協会の人間だけあって、どこか威厳を感じられる。

着席を見かねて、腰を曲げ前屈みになり両の手を目の前で組みテーブルに肘をつきあわせる。


「それでは、本題へ入ろう。協会は世界の永久の安定を構築するため、総力を上げ大精霊の一部をその身に宿している6人を探している」


ニッシャは興味なさそうに、煙草に火をつけ煙を上に吐きつけるが、元々話何て興味もなく気だるそうな態度をとる。

護衛は、私が相応の態度をとらなかったせいで2人同時に臨戦態勢に入るがそれを止めたのは、他でもない老年の男であり、右手で護衛達に合図を送る。

「まぁ待て、お主達2人はおろか、協会の戦力でもこやつは倒せんよ……フォッフォッフォッ」

冗談なのか誠なのか、読めぬ爺さんの戯言は置いといて……

「んで?何で私を呼んだんだ?精霊探しならお宅らの優秀な部隊とセリエ、ノーメンがいるんじゃないのか?」

右手の煙草で目の前や扉の方を指す。

切れ長の鋭い目で睨み付けると、そいつは深いため息をした。


「緊急事態なのだ。今までは不恰好ながらバランスを保っていたが、あることがきっかけでお前を頼らざるをえなかった」


そう言って珈琲を口に含ませる。

カップを置き「カタッ」という音と共に続ける。


「我が協会には、精霊を現在確認しており、使役者が三人おる。」


消】滅する記憶【シュハメナス】

荒】天を司る【カウラスとチイノス】

そして、ニッシャ、お主の

炎】燃で灰に帰す【レプラギウス】


「この3体は、比較的容易に見つけ保護することができた。」


ニッシャを見つめるがその目には光はなかった。

「私は別に、あんたらに世話になった覚えはないけどな」足に仕込んだ煙草のストックがなくなったが、胸を「トントン」と指で触れると、胸元から煙草が飛び出し挟まった状態で吸いだす。


(通常の人間ならこう、思うだろう。煙草になりたい、と)


そんなニッシャを他所に続け様に話す


残る精霊は、3体であり、その姿や名前は伝記でしか記されておらず存在は確かだがもはや伝説とされている。

時】を司る【セントキクルス】

水】の守護神【イメサリス】

そして……と話をさえぎるように扉が開く。


「ガタン」という音と共に余程重大な事柄なのか顔面蒼白の男が息を切らせながら喋りだす

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