第7話【初めての都へ】(2)
【都の大きな宿屋】
「いらっしゃいませ!!」
大きな声と共に、カウンターで男が立っている。
手際よく、二人部屋をとり部屋番号を入力してある腕輪をはめ、転送魔法で部屋へ向かう。
目の前で次々と消え行く人を見て怯えた表情になっていた。
転送魔法は勿論初めてなので、凄く躊躇している小さな背中を押すと、コケるように顔から突っ込む。
【シュンッ】と清音がすると、小さな体は一瞬でその場から消え、急いで後を追うと外の景色が覗ける5M四方の大きな窓に、それを独り占めできるかの様な、私でも足が届かないベットがあった。
景色は良好、それでいて部屋も広く森と比べたら満点だと思う。
先に着いたミフィレンは、言葉を失ったかの様に呆然と立ち尽くしていた。
目の前で手を振るもピクリともしない、俗に言う目が点と言うやつで、私は、動かぬミフィレンを動かすため喜びそうなことを言ってやった。
「ミフィレン今日はお疲れ様。今は好きな物食べて好きな事していいぞ」
その言葉を待っていたが如く、足早にベットへ飛び込むとゴロゴロとベットを転がり回った。
改めて思うが私の言い方が悪かったな……
ベットには毛皮の毛が大量に付き、自然な毛布になった。
転がり回ったお陰で、静電気により小さな体は毛玉の化身の様になっている。
「はぁ……」小さなため息をつきながら「まずは、風呂と衣類だな」と呟いた。
ベットは任意のボタンを押すと瞬時に新品に入れ替わるのを確認し、毛玉を風呂場に連れていく事にした。
「そういやちゃんとした風呂に入るのも初めてだよな?」
いつもは、私特性の木風呂で自身で温めたたから、加減がわからなくて嫌がってたっけ。
毛玉を優しく取り除き、上から流れ出るお湯で体を濡らすと、余程気持ちいいのか「トロンッ」とした恍惚な表情をしていた。
初めてののシャンプーを行い、イタズラで全身泡だらけにしてやったら満更でもない様子で鏡の自分を見て興奮し、自動温度調節の湯船に浸かる。
足の長い私でも広々とした浴槽で、足を伸ばした私の膝に座り顔を見合せる。
お互いに「お疲れ様」だとか他愛もない会話をした。
簡易的な寝間着に着替えベットに座りこみ、都の景色を眺めながら、いつも通り私の魔法で髪を乾かした。
「本当に、癖が強い毛だなぁ。どっち似なんだろうな?」
私は流れで言ってしまった。
それを気にしたのか。鏡に写るその顔は少しうつむき加減で口を膨らませていた。
眼を盗んで、乾かしがてら煙草を吸おうとしたら、防災システムにより消されてしまったため、仕方なく夕飯も宅配魔法で取り、就寝する。
【翌日】
部屋着では、外へ出れないので、ベットに寝そべりながら二人分の服をカタログで見る。
最近は便利になったものだ、自分自身が壁に投影され着せ替え人形が如く様々なアイテムを身につける事が出来、気に入れば後払いで購入し即着用が出来る。
肩にかかる朱髪は毛先にウェーブをかけ、服装は私があまり派手な物は好まないので、「肩」「へそ」「足」「胸元」が出ている比較的ポピュラーな黒のドレスにした。
子どもの事はわからないので私の趣味にして、髪の毛はいつも通り後ろで結い、上品に見えるように丸い帽子を被せた。
右の【蒼い】瞳と左の【藍色】の瞳、【金色】の髪の毛にちなんで、全体的に藍と蒼にアクセントで金色のラインを入れた。
自分自身を見て余程気に入ったのか、鏡を指差して満足そうに「ニコニコ」していた。
我ながら、良いセンスに感心し、チェックアウトを終え、協会へ赴く。
【協会】
履きなれない、ヒールのかいあってかお陰で+10cmは高くいつも以上に見上げているせいかミフィレンは、首が痛そうな表情をしている。
「コツコツ」と甲高い音が階段により響き渡り、その妖艶さに振り返る輩はその美しさのあまりため息混じりの笑みを浮かべ、その下に目をやると小さな子どもを見て2度目のため息をする。
私は、勝ち誇ったように見下すと視線を独り占めし、沢山の人が行き交う協会では少し怖がっているミフィレンの手を優しく握ると安心したみたいだ。
すれ違う者は、皆協会役員か見学をしにくる者だろう。
豪華なバッチをしているのが役員で、簡易的な名前入りバッチをしているのが見学なんだが、まぁ大体がお偉いさんだろうよ。
常時開放されているため、一般も観光がてらやって来るらしいのだが、私の朱色の髪の毛を見て奥で「ざわざわ」していたが気にも留めなかった。
柱の横で腕を組み何やら、良く見たデカイのが...
あの時、偉そうな事言ってポンコツ具合を遺憾なく発揮した、ボロ雑巾ノーメンさんだった。
(ようやくきたか、早く来い。奥でお偉いさんがお前を呼んでいるぞ。)
と言っているように見える。
人差し指を「チョイチョイッ」と前方へ曲げ、着いてこいと言わんばかりに、足早に歩き始める。
「はぁ~、めんどくせぇなぁ~!!」
太もも辺りのドレスに仕込んでた、煙草を一本咥えながら歩きながらふと横目で見るが、相変わらずミフィレンは無言だ。
余程緊張しているのか、同時に手足を動かし「ギコチ」ない。
私は協会人ではないから、三人で歩いてこの広い協会にある。【応接室】とやらへ向かう。
ノーメンもミフィレンも何も話さないから退屈で、煙草を吸ってまぎらわせた。
「「ケホッ」、ニシャ
不機嫌そうに、睨み付ける。
「なんだ?反抗期か?可愛いやつめ!」
煙を近づけては、嫌がるのを笑いながらやっていたら加減を間違えて目的地へ着くまでの道中、暫く口を聞いてくれなかった。
子ども特有の「アレ」だと思い適当に受け流した。
「それにしても、昔から変わってねぇのなココ。お前、いつもこんな硬っ苦しいところいるのか?」
目の前を、無言で歩くデカイのに話し掛けるがまた無視された。
(まぁ、ここに思い出何て微塵もないけどな……)
そうこうしている内に着いてしまった。
(着いたぞ。ちなみに俺の好物は落花生だ)
と言っているように見えた。表情見えないけど。
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