第6話【初めての都へ】(1)

これから、都へ行くわけだがその過程は長い道のりで私なら魔法を使用すれば直ぐなのだが、「あれ」は魔力を高回転させる分、身体能力を飛躍的にあげるのだが

体への負荷が凄まじく2速以上はあまり使いたくない。


だが、小さな絵描きさんはそうは、いかない。

毛皮のリュックに食材と日用品をいれたのを持たしてある。

小柄なせいか、リュックが大きく見える。リュックが背負ってやってるって感じだな。

兎が余程遠くまで飛ばされたのか入り口付近までの一直線上は灰になり少し粉っぽい。

巻き添えを喰らった物も多いだろう。

ミフィレンが先へ先へ歩くなか、私は立ち止まり、黙祷を数秒し、また歩き続けた。

歩きづらい獣道が人口の遊歩道になっていた。

住み処から、2時間ほど歩いた頃には、よたよたと右へ左へおぼつかない状態だった。

当たり前だろう、大人でさえ根を上げるこの距離をまだ年増もいかない子どもが歩いているのだから。

(毛皮から、顔をだしている滝魚がこんにちわしているのは一先ず置いといて)

1つ結びの髪の毛がゆらゆらと揺れていた。


暖かい日差しが森を照らし、木漏れ日が気温を下げ涼しさを感じながら二人は歩く。

あの出来事以降静まり返ってしまったのか小さな動物達の鳴き声や吹き抜ける風の音しか聞こえない。

通常なら、こんな小さな子と真っ昼間に出歩けないのだが今はそれを楽しんでいる。


「疲れた」とか「足が痛い」等文句も言わず良く歩くものだが、どこにそんな小さな体にパワフルさがあるのやら……


道中、木陰になっている小さな切り株に座り、ミフィレンに持たせたお手製、木製水筒で水分補給をし、道中に食料調達ついでに滝で汲んどいて助かったよ。

柄にもなく「ぷはーっ」とか言ってしまったが、こんなに歩いたのは、久しぶりで体が水分を求めていたのだと思う。

私のと同サイズの水筒を持ちそれを見て真似するお前は本当に可愛かった……ちょっとバカにしてる感じで誇張してるのがムカつくがそれも旅の思い出にしまっとこう。

そこで、ミフィレンの腹の音が鳴り、顔を見合せ、含み笑いをお互いにした。


「朝からなにも食べていないな。腹が減ったから、食べようか」


リュックから、日持ちさせていた生肉と滝壺にいた魚を二人分取り出す。


生肉は、縄張り争いの中で怪我をした猛獣を仕留めたものと魚は、滝水が綺麗なお陰で、小さな魚達が集まり比較的楽にとれたが、途中ミフィレンが水に向かって手を振ってたのだが何かいたのか?


【調理開始】小さな火を右手から出し、味付けをした食材を左で添えるように挟み込み、わずか2秒で焼き物の完成だ。

最初の時は、火力を間違えて大量の炭を量産してたっけな、私も器用になったもんだ。

アツアツの肉と魚、森に生息している野草を摘み取りミフィレンの木皿へ盛盛り付け、簡易的だがお子さまプレートのようにした。


(本当は外で料理をすると、匂いが周囲に広がり猛獣が寄ってくるのだが今日は大丈夫みたいだ)


手掴み一口で魚を丸々「ボリボリ」食べる私を見て、また真似をしたが骨が詰まったのか「ケホッ」と咳き込んでいた。

それを見て笑う私とトマトのように真っ赤になる顔で腹がよじれてしまうほど爆笑した。


本当に食いしん坊で、持ってきていた食材の4割はミフィレンのお腹へいき、しまいには、私のご飯をも眼を輝かせ見る始末。

食欲があるのは良いことだと思うが協会に行くはずなのに、半ばピクニックの様だった。

幸せな昼食が終わり、再び歩き始め一時間が経った頃、やっと森を抜けることができた。

ここからがまた長いのだが、そこから都へ続く山道をず~っと歩き続ける。

森のように日陰がないため森に生息している大きな葉っぱを日傘変わりに使う。

一息休んでは、進むを繰り返し

陽も暮れニッシャの火だけが街灯代わりになったころ。次第に疲労が見えてきた。


小さな背中を後方で見守る私は、いきなり止まった事に驚いた。


「ん?ミフィレン?まさか……」

私は立ち尽くす、小さな背中からぐるっと正面へ回り込むと、頭が「ガクッ」と下に向いていた。

バックは落ちないようにしっかりと両手で持っている(えらい!)


片膝立ちになり、顔を照らし耳を澄ますとスヤスヤと眠っていた。


やれやれと一息つき、背中に背負って歩くことにしたがお昼ご飯をたくさん食べたせいか、少し重くなっていて背中で成長をしみじみ感じていた。


都までは残り30分程。

魔法を使えば、5秒ほどで着くのだが気持ち良さそうに眠る横顔を見ていたら、案外歩くのも悪くはないかなって。


到着するまでの間色々感慨深かった。

これまでのこと、何故滝にミフィレンがいたのか、このまま一緒に居ていいものなのか。疑問は尽きなかった。


そうこうしているうちに約5年ぶりとなる。

私の故郷である都【シレーネ】へ着いた。


5年前よりも都市開発が進んでおり、夕方をピークに商店街は活気に包まれ、見上げるほどの建造物が立ち並ぶ。

「しかし、相変わらずデケェ建物だな」

奥には一際大きな建物、【魔法協会】が見える。


スヤスヤと眠っていた子は先程とはうってかわって、音にびっくりし起き上がるとニッシャの目線と同じように見えた、そこには見たことない、灯りや建造物の数々が視野一杯に広がる。

活気や食べ物の匂いに心を踊らせると、道中の疲れも相まってか私の左肩に滴るヨダレが地面へ「ポタポタ」と垂れる。

「こらこら。またお腹すいたのか?このいやしんぼめ!!」

左頬をつつくと、「ニシシッ」と笑いだす。

初めて、森の外へでたミフィレンは先程の疲れた表情が嘘のように、まん丸笑顔で眼を輝かせた。

「さぁ、いこうか!!」

ゆっくりと歩き出し、協会へは、後日としてまずは疲れを癒すため宿を探すことにした。

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