第4話【ある小さな絵描きさん】(2)

「おい、お前等、何故ここへ来た?」


楽しい時間を無下にされた女は男達を睨み付ける。男は、軽快な口調で口早に話し出すす。

「何故って貴女が必要だからですよ残念ながらね?」


僕達でも対処出来る事案とかなんとかかんとかペラペラとしゃべる小柄。

そんな小柄を尻目に大柄は、無表情かつ無口であった。


 無口で大柄な男、【ノーメン】は顔がない、事実誰も見たことがないのだ。

顔はお面の様な無地で覆われていて足元まである、長いコートを羽織っている。

 先程からこのおしゃべりな男、名は【セリエ】と言う。

髪や眼は琥珀色と翠が綺麗なグラデーションになっていて本人も気に入っている。

ニッシャとは犬猿の仲でありお互いに罵倒し合う


特に【ニッシャ】が超が付くほど嫌いなのは言うまでもない。

気絶したミフィレンをそっと横にし寝かすと、様子を伺う雨の音に負けずに広い洞窟内に響く程の声量をだした。


「もう2度と関わらねぇ、って言っただろ?帰んな!協会のジジィやババァ共に伝えとけ!」


痺れを切らしたのか、ようやく口を開いたのは大柄な男【ノーメン】だった。


「ニッシャおかしい魔力安定していないな。後ろの子どものせい……か?」


小柄からはニッシャでよく見えないが、ノーメンからはミフィレンが丸見えだった。

隣でクスクス笑うセリエは流暢に話し出す。

「へぇ、こんな森の中にいると思えば男作って、子どもと過ごしてるたぁ、お前も中々乙女だねぇ。んで?旦那はどこだ?まさか食われちまったのかい?」


挑発に耐えきれないニッシャは、言葉に殺意を込める

「てめえ、もう一度その人形おもちゃ私に壊されたいのか?」

少しだけ顔がひきつり出しながらニッシャの眼をみる


「冗談はこの辺にしといて。今のこの国の状況知っているか?」


「そんなもの、私は知らぬ。戦争だろうが勝手にしてろ」

突き放すように投げ捨てる。


「まぁまぁそう、固いこと言うなよ。お前さんには悪い話じゃないはずだ、また前みたいに暴れてくれればいいのよ?」


やれやれと軽くため息を吐くと、一瞬で目の前へと詰め寄ると右の拳でセリエの顔面ど真ん中を捉える。


勢い良く飛ぶセリエは激しい音を森中に轟かせながら、幾本の木を薙ぎ倒していた。


「魔法は使わないでおいてやる。本当に私に用があるなら。こんな人形使わねぇで直接来な!!そうしたら相手してやるよ」

一瞬で数Mを移動し、尚且つタバコを口に咥えるニッシャ。

指で火をつけ一息つくと。


「んで?……これでも私を連れてく気か?」


さすがのニッシャでも見上げる形になる。

仲間が吹っ飛ばされても微動だにしない男ノーメンは、奥にスヤスヤと眠るミフィレンを見ながら


「ニッシャ、やはりおかしい子どもが原因か」

セリエ、ニッシャには目もくれず、小さな声で呟いた。


何かを察したニッシャは切返しノーメンの前に立ちはだかった。

「やめろぉぉぉお!」

遮るニッシャを横目に、無惨に響く指の音は小さな命を軽く見てるように、幼い少女の姿を消した。


「てめぇの、その魔力久しぶりだな、私を怒らしたらどうなるか知った上だろうな?」


ただデカイだけではない、その体躯は見た目の圧力だけでなくニッシャに実物以上の圧力をかけていた。

ニッシャは後方へ飛び下がり一定の距離を取る


「ニッシャ、お前こそ私を嘗めるな。」

ぼそりと、呟いた。

(あいつの、魔力が昔と変わらなければあれは。)


〔ノーメン〕=〔魔力-消行記憶ただ消える者


「お前の魔力は、自分の魔力貯量分を瞬時に消し去ることが出来る。つうもんだよな?それなら私を先に消さなかったのがそもそもの間違いだよな!」


ニッシャは、右手で前方を凪ぎ払うように振り抜くと炎が生き物の様に縦横無尽に動き回り、ノーメンに襲いかかる。


無駄だと言わんばかりに、炎は着弾前に消失する。

消えた炎の中にはニッシャが中から現れノーメンに向かい渾身の一撃を放つ。


鈍い音が響き渡る。

その音はニッシャの右手が使えなくなったのを知らせるようだった。

「てめぇ、相変わらず硬てぇな」

折れた右手を庇いながらも目の前の巨体を捉える。

(残るは左のみさてどうしたものか。)

「抵抗するなら容赦はしない、力づくで連れてくぞ。」


まだ傷が癒えないに+プラスして折れた右手と、相手は危険度だけなら、上級ともとれるノーメン。


(今の私に出来ることはを使うしかないよなぁ、だが時間がねぇ)


【Ⅱ速まで】〔10:00〕


戦闘態勢に入った両者、だが事態は意外な結末を迎えることになる。


ノーメンは背後から一直線に、電撃を喰らう。

その一撃に倒れ、雷鳴が轟き、闇夜の森を照らす雷のその先にはアイツがいたのだ。


高電圧ハイボルテージ雷尾兎ラビット〕=【危険度level-Ⅲ】


(並の兎達よりも、幾回りも大きく、かつ、魔力貯量が多いためその電力だけで都市の年間電力を賄えるとされている。

突然変異による進化で兎を統べる王にして、この森には存在しないはずの危険度level-Ⅲの超危険種である。)


「おしゃべりくそ野郎と無口巨人がきて、お次は、兎かよ……」

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