第3話【ある小さな絵描きさん】(1)
【森の入り口付近】
森では天候が荒れやすく、まるで侵入者を拒むように吹き荒れている風で対象を押し返していた。
ローブを頭から羽織る二人組は、目の前に現れた生物によって阻まれていた。
身長差は凸凹となっており、横の男が小さく見えるほど背の高い男は生物達を見下ろしていた。
〔|
(天候が悪化すると住み処からでてくる、体長はおよそ、30cm程と森の中では小柄だが、主に群れで行動し体内で作り出される電力により、強力な脚力と尾を持ち大型魔法生物をも一撃で倒す。体内の電力により危険度が変動するⅠ~Ⅱ)
森の小さな生物は侵入者を、拒むように連なっており、呆れ口調で小柄が横にいる大男に話しかける。
「やれやれこんな、入り口付近にもいるとは、一体中では何が起こってるのやら……ねぇ?ノーメンさん?」
「……」
聞こえているのか、いないのか、無言だった
無愛想な顔ではなく、事実顔は真っ白なお面で隠れていて表情は読めない。
「ん?ねぇ?ノーメンさん?聞いてる?おーい!」
小柄は、一方的に話し掛けるが相手にされていないようで、それを見兼ね、先に仕掛けたのは兎達の方だった。
強力な前足で一羽が二人組へ突進きたが突然空から小さな雷が一羽を直撃する。
雷を体内で発電する兎にとって雷など...許容を越えたその小さな体は醜くパンパンに膨れ、激しい風に乗って飛ばされていった。
驚いた仲間の兎たちは、一斉に飛びかかってきたがほんの一瞬だった。
兎は二人組へたどり着く前に、忽然と姿を消す、大柄は兎をまるで一筆書の様に指で空をなぞっただけだった。
「おや?兎さん達はどこへやら?」
クスクスと笑う小柄を他所にノソノソと大柄は先に進む。
「では行きますか」
大柄を追いかける小柄の二人組は森の奥へ消えていった
【森の洞窟内】
例の豪雨でびしょびしょになった。
私達は住み処へ帰り、濡れた体を乾かしていた。
雨は全てを洗い流してくれる気がした。
嫌なことも、目を背けるんじゃなくて
なんかこう心が洗われるというか。
小さな椅子に座らせ、私はあぐらをかきながら、濡れたミフィレンの髪の毛を乾かしてる最中だ。
髪の毛が「もしゃもしゃ」だったのが雨でサラサラになっていた。
先程受けた背中の傷は、消毒し応急措置で魔法で炙ったんだが、凄まじい痛みで苦痛の表情を浮かべたが、小さな顔が心配しているのを見て少しでも励まそうと笑って乗り切ってやったよ。
しかし、私以外誰も傷つかなくてよかったよ。
ミフィレンが取ってきてくれた小さな花はあとでネックレスにするとして、さてどうしたものか……
そんな考えの私を他所に、地面に落書きをしており、鼻歌混じりで地面を指でなぞっていた。
小さな肩に顔をのせ絵を見つめる。
夢中で絵を見つめるその顔は幼いせいも相まってか私には勿体ない位キラキラ光っていた。
「ニッシャ!これニッシャ!」
指を指したその先には芸術とかそこらへんの感性が皆無なもんで、人らしきなにかが描かれていた。
うちの子は発育がいいし、感性も優れているとかなんとか
親みたいな気持ちになった。
(私にも、子どもがいたらこんな感じなのかな……)
「おー良くできたね。ミフィレン!私こんな感じに見えるか?」
顔を伺いながらその横の
どうみても、私の等身がおかしかったり
自分で言うのもなんだが、長さが自慢の足が3本あったり、毎日の手入れで光沢があり痛みには無縁な朱髪の毛はしまいには1本だったりしてた。
それと、決して実物は裸ではない断じてない。
そんなことはいいとして少し不思議なのは、私の後ろにモヤモヤみたいのが有ったこと位だがその場は黙っていた。
その横に指を向ける、小さな人らしきものが描かれていて、2つの絵は同じように笑っており、口が裂けるほどの笑顔だった
「じゃあこれはミフィレンだね!」
私は目を合わせ描いた絵の様にニッコリと笑う
「そうだよ、可愛いでしょ?」
それに釣られ満面の笑みで返す。
いつもと変わらず笑い声が響き渡る。
(あー、幸せだなぁ)
降りしきる雨のなか黙々と進む二人の男達は、ようやく目的地へとたどり着いた。
猛獣達は、よそ者を追い出そうとしていたがただならぬ魔力に警戒をしていた。
「おやおや、ノーメンさんあそこに人が住んでいそうな洞窟がありますね」
小柄は指を指した。
その先には、ニッシャ、ミフィレンがいる住みかだった。
いち早く気づいたのは、他でもない、まだ幼く魔力も開花していないミフィレンだった。
「ニッシャなにか来る!!気をつけて……」
少女は大量の強力な魔力を体に受けたのか、【魔力酔い】を起こしていた。
雨が森中を包み込み、雷鳴が洞窟の前に落下する。
そこに立つのは二つの人影、閃光と共に現れたのはあの、二人組だった。
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