第33話 VSロックゴーレム 2

「ふんっ!!......く......うらぁぁ!」


 サクラ達の前に現れた人物がロックゴーレムのパンチを受け止め右側へと弾き、続けてスキルを発動する。


「飛剣2連!!」


 その手に持つ剣を縦横に振ると2つの三日月型の斬撃が十字に重なりロックゴーレムへと炸裂する。


「フィン! 時間稼ぐから回復任せた!」


 そう言うと男はロックゴーレムへと駆け出した。


「すぐに治すですよ。我が魔力を糧としてかの者を癒せ ヒール!」


 その様子を見て突然の事に驚いていたレイも気を取り直し回復魔法ヒールを唱える。


「う......」


「大丈夫ですか?」


 後頭部を押さえながら起き上がるサクラ。


「フィン......ちゃん? どうしてここに......」


「無事で良かったのですよ」


「足の方も大丈夫?」


「うん、大丈夫だよ。レイ」


 溶岩で火傷していたところを触り治っていること、痛みが無いことを確認しそう答えたサクラ。


「私......」


「壁に頭をぶつけて気を失ったの」


「そっか......ッ! ロックゴーレムは!」


 戦闘中であったことも思い出したサクラはロックゴーレムへと目線を向ける。そこには、


「ソラ......さん?」


 ロックゴーレムの攻撃を紙一重で躱しながら攻撃を加えていく男――ソラがいた。

ーーーーーーーー


「サクラちゃんはもう大丈夫ですよ、ソラ!」


「りょ......う、かい......っと」


 体がデカイおかげで攻撃は当てやすいけど回避をミスれば致命傷だなこれは。

 頭を狙う拳をしゃがんで躱し、逆の拳を白虎刀で受け流し、踏み潰さんとする足をサイドステップで回避、そして攻撃を加える。


「これは不味いな......!!」


 背後から迫る拳を地面、ロックゴーレムの足と2段ジャンプで回避する。拳はそのまま足へとぶつかりどちらも崩れてしまう。


「ラッキー!」


 その隙を使いソラはサクラの元へと移動する。


「ソラ! 攻撃のチャンスなのに何で逃げるで「チョップ」ぷぎゃ!」


 こいつは何を見てたんだよ......

 フィンを黙らせたソラはサクラへと向き直る。


「あの、ありがとうございます」


「おう、無事で良かったよ。でさ、アイツどんだけ斬ってもダメージ入らないんだけど何か心当たりある?」


「......レイ、分かる?」


「おそらく、核を攻撃しないとダメなんだと思うわ」


「核?」


「30cmぐらいの立方体の物があったんです。レイはそれが核だって」


「なるほど......てことはもしかしてアイツの体その辺の岩がくっついてるだけだったり?」


「そういえば......」


 サクラはロックゴーレムが現れた時のことを思い返す。


「どうりでダメージ入らないわけだ。ちなみに場所分かる?」


「そこまでは......」


「じゃあ適当に攻撃するかあるいは......」


 そこまで言いかけてソラは先ほどのロックゴーレムの様子を思い出す。


「なぁ、魔法でアイツの体バラバラに出来るか?」


「それなら出来ると思います」


「んじゃそれでいこう。時間稼ぐから準備できたら合図よろしく」


 そう言うとソラは再びロックゴーレムへと駆け出した。


「ひどいのですよ、ソラ!」


 未だに額を押さえるフィンがソラに追随しながらそう怒る。


「悪かったって。それよりお前も準備して待っててくれ、合図したら頼むよ」


「......仕方ないのですよ」


「ありがとな」


 ソラがロックゴーレムの間近まで来ると崩れた部位がもとに戻り丁度立ち上がった所だった。


「悪いけどもう一回バラバラになってもらうぜ

 我が魔力の糧として氷よ宿れ。 エンチャントレグラス!!」


 白虎刀の刀身の周りに小さな氷の礫が現れる。だがソラが魔力を内側へと集中させることで消え、その冷気により周囲の空気が白くなっていく。


「エンチャントレグラス・型式氷雪ver白虎刀ヴァイティアル


 ロックゴーレムが連続で足踏みをする。土煙が立ち込め、ソラの姿が見えなくなっていく。


「ソラ!」


 唐突にロックゴーレムの攻撃が止まり、次第に砂煙が晴れて行く。


「まずは右足からだ」


 そう言ったソラの隣には凍りつき地面に固定されたロックゴーレムの右足があった。


「どんどん行くぜ!」


 ソラは続けて左足へ向かうがロックゴーレムの両拳が襲う。

 それらを躱し、受け流し左足へと攻撃を行っていく。とはいえ相手は岩であり今のソラでは傷を付けるだけだった。だが今はそれで充分だった。なぜなら――


「おらららぁぁぁ!」


 ソラの付けた傷が凍りつき出し、徐々に広がり他の傷からのものと合わさり足を氷付けにし、その場に固定する。

 負けじとロックゴーレムは足を動かそうとするが上手く行かず拳で氷を砕こうとする。


「させるかよ! release!」


 ソラが内側へと集中させていた魔力を解放する。瞬く間に刀身の周りに小さな氷の礫が現れる。


「おらぁぁぁぁ!」


 ソラが剣を振るとその小さな氷の礫がロックゴーレムへと飛んでいく。量は多くないが気を引くには充分だった。そして――


「ソラさん!!」


 サクラからの合図にソラはすぐさまロックゴーレムから離れる。


「我が魔力の糧として水よ集いて彼の者に飛来せよ ウォーターボール!!」


 最初に放った物よりもさらに倍以上の大きさの水の塊がサクラの頭上に生成され、ロックゴーレムへと飛んでいく。


 それに気づいたロックゴーレムは受け止めようとする、が相手は水であり当然上手くはいかない。さらには氷で足が固定され上手く踏ん張ることができず膝の部分が外れ後ろへと倒れその衝撃で体が崩れる。そして、再び体を集めようと核が浮かび輝き出す。


「見ーつけた」


 だがそれによりでソラに見つかってしまう。


「我が魔力を糧として炎よ宿れ エンチャント・フレイム 型式紅蓮ver白虎刀ヴァイティアル


 ソラの魔法により真紅に染まった刃が核へと振り下ろされる。しかし、


「くっ!」


 わずか数センチほどしか斬れていない。ソラはそのまま剣を押し込んでいくが半分まで斬ったところで異変が起きる。

 核の輝きが強さを増し、集まろうとしていた岩が動きをやめ、と同時に硬さが増し刀が止まる。


「フィン!」


「任せるです! 

 我が魔力を糧として彼の者の魔の力を強化せよ マジックアップ!」


 フィンの魔法でソラの魔力が強化され、それによりエンチャントの出力がさらに上昇していき、ついには刀身が青く染まっていく。そして――、


「ハアアアァァァァ!!」


 核が両断される。

 刹那、力を失った核はその場に落ち、塵となり消えていった。


 LEVEL-UP ソラ40→42

       サクラ48→50

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