第32話 VSロックゴーレム
「......みやぶる!」
レイはロックゴーレムが動き始める前にみやぶるを使い2人でそのステータスを確認する。
「うそ! Lv.50!?」
現在サクラのレベルは48であり僅差ではあるが負けている事になる。
「避けて!」
サクラがステータスに驚き隙を見せた所を狙いロックゴーレムが近くの岩を投擲する。
「ありがとう、レイ」
レイの呼び掛けで迫る岩を躱したサクラは続けて攻撃へと転じる。
「......ウォーターボール!!」
直径2メートルはある水の塊が生成されロックゴーレムへと向かい、命中する。
腰の辺りに命中したロックゴーレムは下半身が崩れその衝撃で上半身も崩れていく。
「え......終わり?」
まさかの結果に呆気にとられるサクラ。
「そんなわけ無いでしょ、気を抜かないで」
だが、冷静に状況を見ていたレイがたしなめる。
「体力が全然減ってないわ、すぐ復活するわよ」
その言葉の通り崩れた岩が集まり元の形へと戻っていく。
「我が魔力を糧として水よ――ッ!」
サクラは元通りになる前に攻撃をしようと詠唱を始めるも既に完成していた右腕による岩の投擲で阻止され、その間に体が完成する。
と同時にサクラへと向かって走り出す。
「レイ、あれお願い!」
「ええ!」
サクラはそう言うとロックゴーレムを見据え、レイはその場から離れながら詠唱を始める。
「我が魔力を糧として彼の者の素早さを強化せよ。 スピードアップ!」
ロックゴーレムがサクラの近くへと迫りその勢いを乗せ肘を突きだし倒れこむ。
しかしサクラはレイによって強化されたスピードでそれをなんなく躱し後方へと回り込む。
直後、轟音と共に地面が抉られる。
(とんでもない威力。一撃でも喰らったらまずそう)
「我が魔力を糧として水よ数多の氷の礫と成りて降り注げ。 アイスニードルズ!!」
サクラの頭上に20センチほどの長さの先の尖った礫が次々に現れロックゴーレムへと飛んでいく。
ロックゴーレムは両腕を体の前で横にしてそれを防ぐ。
「これもあんまり効いてないわね」
「大丈夫、ただの足止めだから」
サクラはそう言うと氷の礫がなくなる前に次の魔法の詠唱に入る。
「我が魔力を糧として岩よ彼の者へ飛来せよ。 ロックブォラーレ!」
サクラの頭上に今度は岩の塊が出現する。ただし、通常の倍近い直径4メートルほどの大きさで、だ。
「まだ......もっと......」
しかしそれでは終わらない。サクラはさらに魔力を注ぎ込み、6メートル近くまで岩を大きくする。
「ただぶつける以外の考えがあるのよね」
「うん」
「じゃあ、やっちゃいなさい!」
その言葉にサクラは1つ頷き、ロックゴーレムへと杖を向ける。
「いっけぇぇぇぇ!!」
岩は一直線にロックゴーレムへと飛んでいき、正面から激突する。
ロックゴーレムはその衝撃で少し後ろへ押されはするが耐えきり再びサクラへ狙いを定める。
「まだまだぁぁぁぁ!」
サクラは岩を操り続けて何度もロックゴーレムへとぶつけていく。そのたびにロックゴーレムは少しずつ後ろへと押されていく。
「これで......ラスト!」
そう言って放った一撃がロックゴーレムに当たりさらに後ろへと押される。そしてバランスを崩し後ろへと倒れていく。だが、そこは扉があった側でありつまり倒れる先は――
「バイバイ」
火口の中、溶岩だ。
ロックゴーレムが溶岩の中へ落ちその衝撃で溶岩がサクラ達のいる高さまで跳ね上がる。
「やった......かな?」
その場にへたり込みそうつぶやくサクラ。
「相変わらずとんでもないことをするわね。こんなの思いついても誰もやろうとしないわよ、普通」
「えへへ。うまくいって良かったよ」
「今のところは、ね」
レイは魔力回復液をサクラに渡す。
サクラはそれを受け取るが飲みはしない。
「もう終わったしこれは残しておこうよ」
魔力回復液は市販もされてはいるが製造の大変さからその値段は効果の1番低い物でも5,000円とそれなりに高価な物である。
魔法主体の者達にとって必需品ではあるができるだけ消費したくないというのが本音だった。特に魔物討伐報酬があまり高くないエリアで活動する者達に取ってはなおさらだ。
「敵の反応がまだ消えてないのが気になるの。もしかしたら登ってくるかも知れないわ」
「考えすぎじゃない?」
「ボスの時は考えすぎがちょうどなの」
「は~い」
会話を終えレイはロックゴーレムが落ちていった方へ確認をしに行き、サクラは回復液を飲み始めた。
レイが火口を覗き込むとちょうどロックゴーレムの体が半分ほど溶岩の中に沈んだ所だった。
(少しずつ減っているけれどまだ半分以上体力が残ってる。反応が消えないのはそのせいなのね)
「登ってきてる?」
「いいえ、まだ沈んでるわ」
(それなら全部飲まなくてもいっか)
サクラがそう思った直後――、
「構えて!」
レイが振り向きそう叫ぶ。そしてその後ろには一辺が30センチほどの立方体の石が浮かんでいた。
「まだ飲んでなかったの!? 早く飲んで杖を構えて!」
サクラの隣へ戻ってきたレイが慌てながらそう言った。
「わ、分かった」
サクラは急いで回復液を飲み干し、杖を出現させる。
「ねぇ、何なのあれ?」
「恐らく――」
そこまで言いかけたその時石が発光を始める。すると、ロックゴーレムの体だった岩が次々と石の周りへと浮かんでくる。
「ロックゴーレムの核よ」
「核?」
「本体みたいなものよ、もっと早く気付けば良かった。あの体はそこらの岩なんだから中心となる核があって当然なのに」
2人が話している間にも続々と岩が浮かび上がりロックゴーレムの体が再編されていく。しかも一度下に落ちたことにより所々にまだ溶岩が付いたまま。
「あれはまずいわ。サクラ、奴が動き出す前に攻撃を! 早く!!」
「わ、我が魔力を糧として水よ数多の氷の礫と成りて降り注げ。 アイスニードルズ!!」
サクラの使える魔法の中で最も早い氷の礫による攻撃がロックゴーレムの核へと飛来する。
だが結合前の岩がそれらの礫を防ぎ1つとして核へは届かない。
「ならせめて水系の魔法で溶岩だけでも落として!」
「我が魔力を糧として水よ数多に分かれ彼のものに飛来せよ。 ウォータリアス!!」
拳ほどの大きさの水球が次々と生成されロックゴーレムとその周囲の岩へ飛来し、命中する。だがその瞬間瞬く間に蒸発する。
全弾を打ち終わる頃にはその蒸気によりロックゴーレムの姿が見えなくなってしまう。
しばしの静寂が訪れ、サクラは汗を拭い固唾を飲む。
「――ッ!」
その直後、蒸気を振り払いロックゴーレムは着地し同時にサクラへと迫り腕を振るう。
バックステップで後方へと下がりそれを回避するサクラ。だが、
「あウっ......!」
ロックゴーレムの体に残っていた溶岩が飛び散り、サクラの足に付着し焼き焦がしていく。
立っていられなくなりその場で膝をついたサクラをロックゴーレムは逆の腕で狙う。
「いけない! 我が魔力を糧として彼の者を守護せよ。 プロテクト!!」
レイの魔法がサクラの防御力を上昇させた直後、ロックゴーレムの拳がサクラへと炸裂しその体は後方の壁へと激突、その場に倒れこむ。
「サクラ!」
レイはヒールを唱えながらサクラへと飛びよる。サクラはプロテクトのお陰でかろうじて生きてはいるが瀕死の状態であり、動くのも困難な状態だった。
レイは連続でヒールを唱えようとする。
だが、今はまだ戦闘中であり敵から目を離した以上、敵の攻撃が回避できない距離に迫っていることは必然であり――
「ふんっ!!」
助っ人が入ることなど完全な想定外だった。
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