第3章 第2の試練
第29話 港町ネクルメ
「我が魔力を糧として炎よ宿れ。 エンチャント
ソラの持つ武器、
「連続剣3連・デルタ!!」
さらにスキルで三角形を描くように切り裂きもう一体も撃破したソラ。
「ふぅ......」
「ソ~ラ~!」
白虎刀をしまい一休みしようとしたソラを離れた場所にいたフィンが呼ぶ。
「どうした~フィン!」
「見えたですよ!」
「見えたって何......が......」
フィンの言ったことの意味に気付いたソラは駆け出し、丘の上のフィンの隣へと向かう。
そうして見えたのは――
「これが港町ネクルメか」
ーーーーーーーー
港町ネクルメ
WEDN日本地区の南方はその半分近くが海になっており、そこにある多くの島々で形成されている。
ネクルメはそれらの島々と本島とを結ぶ港の1つであり、故に大きく発展を遂げた町でもある。
「ほんとのホントに無理なんですか!?」
「はい、申し訳ありませんが只今ピーカン島行きの船を出すことは出来ません」
「でもいったいどうして――」
「ロックタートルという魔物のせいなんです」
「ロック......タートル?」
「ご存知無いですか?」
「確か亀型の魔物で大きく隆起した甲羅が特徴的だったはずなのです」
「その通りです」
「よく知ってたな。で、その亀が一体何を?」
「ピーカン島にある火山の噴火が近くなると流れ出す溶岩で甲羅をさらに分厚くするために島の周りに集まってくるんです。
高ければ高いほどモテるので彼らも必死なんです」
「孔雀のきれいな羽とか鹿の大きな角みたいなものか。でもそれだけなら討伐すればいくらでも――」
「集まってくることが問題なんです。
ロックタートルがたくさん集まることでその隆起した甲羅が海流を乱し海が荒れるんです」
「マジっすか......」
「はい、荒れるだけなら良いんですが所によっては大きな渦が発生することもあるんです。
なので危険すぎて引き受けてくれる方がいないんです。私共としてもそんな危険な依頼は受けかねますから。
噴火はおそらく1ヶ月以内に起こりますのでそれまでお待ち頂くしかないですね」
「......なんてこったい......」
ーーーーーーーー
宿屋
「参ったな......」
ネクルメから出る船は大きく定期便と依頼便に分別される。定期便は決まった時間に決まった場所に向かう物であり、無人島であるピーカン島行きは無いためソラ達は依頼便を頼むことになった。
この依頼便は冒険者ギルドの依頼と同じ様なもので、運航ギルドが船乗り達との仲介を行っている。違うのは――
「まさか危険すぎて受け付け出来ないとは」
難易度の高い物は受け付けをしないということだ。もちろん船乗りの安全のためであるがその結果、ソラはピーカン島へと向かう手段を1つ失うこととなったのである。
尤も、噴火が終わりロックタートルが居なくなるまでではあるが......
「どうするですか、ソラ? 噴火を待つですか?」
「確かにそれも1つの手だけどさすがに1ヶ月近く待つのはなぁ......」
「じゃあ探すですか?」
「......そうなるよなぁ」
ギルドに頼れない以上ソラの取れる手段は2つ、自分で船を出すか、直接船乗りと交渉するかである。だが船を操縦するような技術は持っていないので実質後者のみである。ただし――
「リスクもあるけど仕方ない......か」
そうもちろんリスクが付いてくる。ギルド所属であれば身元や適正な料金、腕前等が保証される。
しかし、フリーであればそれらは存在しない。船乗りではない者、法外な料金を請求するもの、お金だけ貰って姿をくらます者等々。
それらを自分の目で見極めることが必要となる。
「出来るですか?」
「出来なきゃ1ヶ月待ちなんだ。やるっきゃねぇよ」
ーーーーーーーー
翌日 夜
「見つかんね~」
丸1日かけてギルド周辺、港、酒場、情報の有りそうな場所で聞き込みを行ったがその成果はゼロだった。
「ソ~ラ~、本当に見つかるですか~?」
「た~ぶ~ん~」
そのまま眠りにつく2人。
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さらに翌日 夜
「今日もダメか~」
そう言いながら本日8杯目のジュースを飲み干すソラ。
「マスターお代わり!」
(ジュースしか出してないはずなんですが......)
「ソラ! やっと見つけたですよ!」
「おうフィン。お前も飲むか?」
来たばかりのジュースをフィンに向けるソラ。
「あっ、ありがとです――じゃなくて! こんなところで何してるですか!」
「見ての通り飲んでるんだよ」
ソラは未だに情報が手に入らず、ヤケのみをしに来ていた。フィンは一緒に部屋に戻ったソラがいなくなったのに気づき探していた。
「明日も聞き込みするですから早く帰って寝るですよ」
「まぁまぁそう言わずに、ほら飲んで飲んで」
マスターからストローを受け取りそれを差したタル型のジョッキをフィンの口に押し込む。
「うまぁ~」
チョロいな。
「さてと。マスター昨日頼んだことどんな感じっすか?」
「昨日の今日ですからまだなんとも」
「ですよね」
嘆息しつつジュースを飲み干すソラ。
「何を頼んでたですか?」
「ん? 情報提供のお願いだよ、報賞金付きのな」
「報賞金?」
「良い情報くれたらお金をあげますよってこと」
「そんなお金有るですか?」
「一応な」
「じゃあ、今日はもう帰るですよ」
「まだいいじゃん、お前だってまだ飲みかけだろ?」
「何がですか?」
そう言って見せてきたジョッキは既に空っぽになっていた。
「おま......早くね?」
「ほらほら、帰るですよ。マスターさんお会計なのですよ」
「かしこまりました」
「まだ飲み足りないのに......」
ぶつぶつと文句を言いながら会計を済ますソラ。
「それじゃ、また来ます」
「ありがとうございます」
「早くするですよ」
「そう急かすなよ」
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次の日
今日も今日とて聞き込みをしていたが見つからなかった2人はお昼ご飯を食べていた。
「こうなると裏町に行くことも視野に入れないといけないかもな......」
「でもそこはリスクがさらに高くなるって言ってなかったですか?」
大都市等の裏町は治安が悪いことが多いがここも例に漏れず、チンピラやヤクザの様な表に居場所を無くしたもの達が集まっている。故にガセネタやボッタクリ等の確率が高くなる。
「それでも聞き込みしてないのってもうその辺しかないし仕方ないかな」
「ソラが良いなら良いですけど......」
そうして話していた2人に声がかけられる。
「ああ、いたいた」
「ん? あれマスター?」
「お二人ともこんにちは」
「こんにちは」
「こんにちはなのです」
声をかけてきたのはソラが昨夜行っていた店のマスターであった。
「買い出し中か何かですか?」
「それもありますがお二人を探していたんですよ」
「じゃあもしかして――」
「はい、情報提供者が来ましたよ」
「やったですよ、ソラ!」
それを聞き、フィンは喜ぶがソラはそうでもないようでマスターに問いかける。
「その情報提供者、信用出来そうですか?」
「......そうですね。私としては信用しています」
冷静に尋ねてきたソラに対し少々驚きつつも答えるマスター。
「もしかして、知り合いか何かですか?」
「ええ、まぁ古い付き合いの1人です。裏町で情報屋をしているので信憑性も高いと思いますよ」
「マスター......本当にありがとうございます」
予想以上の展開に深々と頭を下げて感謝をするソラ。
「別にそれほどの事では......」
「いいえ、ちょうど今から裏町に行こうとしてた所で、それがマスターのおかげで行かなくてすみそうなんです。本当に感謝しかないです」
「ありがとうなのです」
「......そうでしたか。それで、すぐにでも会いますか?」
「はい、お願いします」
「では先にお店で待っていてください。呼んできますから」
「分かりました」
そうして分かれようとしたところで、1つ疑問がわいてくる。
「そういえばどうしてここが分かったんですか」
マスターはフィンの方を指差し、
「妖精を連れた少年は今この町に君たちだけなのですぐに分かりましたよ」
「あ......なるほど」
慣れて当たり前になってたけど妖精って転生者にしかいないんだったっけ......
「それではまた後程」
2人にお辞儀をしてから去っていくマスター。
「行ですよ、ソラ」
「あ、おう」
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