第25話 四神会議

???


 暗い部屋に円卓があり等間隔に4つのイスがある。そのうちの3つにそれぞれ何者かが座り、中央に映し出される映像を見ていた。


「ハッ! 白地の奴やられおったのじゃ!!」


 映し出されていたのはソラと白地の戦闘であった。


「しかも一番の原因はパワーコンバートですね」


「ならばあやつの判断ミスということになるか、いつまでも成長せぬ奴よ」


「じゃが白地はわしらの中でも最弱じゃ」


「そうですね。駆け出しの冒険者に負ける面汚しには後で制裁でもしましょう」


「あやつの苦しむ顔が目に浮かぶわ」


「ガッハッハッハッ!」

「フッフッフッフッ!」

「グァハハハハ!」


 3人がそうして戦闘を分析していると残る1席の隣に扉が現れ白髪の青年――白地が現れた。


「おい、最弱が戻ってきおったぞ!」


「どんな制裁がいいですかね?」


「考えるのも面倒だ、我らでいたぶるのでよかろう」


「......皆さん相変わらず好きですね、このくだり」


 もはや恒例となってしまっているやり取りにうんざりし嘆息しつつ、着席してそう答える白地。因みにどこで覚えたかといえばやはり女神の持ち込んだ漫画である。


「グァハハハハ! すまんなハク。癖になってしまってのう」


「フッ、だが負けたのは事実だろう」


「今まで第一の試練で私が勝ったことなんてないでしょう」


「ガッハッハッハッ! そういえばそうじゃった、そうじゃった」


「それで? 彼はどうでしたか?」


「そうですね......」


「もったいぶらずに早く教えるのじゃ!」


「戦闘に関しては普通ですね。

 今までの者達と同じでまだまだこれからといったところです」


「なんじゃ、今回もか」


「戦闘に関しては、というのは?」


「私が憑依する事を見抜いた速さや正体にたどり着くまでがこれまでで最速でした」


「勘が鋭いということかのう」


「それもあるでしょうが私達の試練は向こうの世界のゲームに多大な影響を受けていますからそれらの知識がかなり豊富なのではないかと」


「なんじゃそれは。そんなこと実戦では役に立たんじゃろう」


「そうとも言いきれませんよ。

 仕掛けや仕組みを直ぐに見抜くことができればその分強化に時間が使えますからね」


「じゃったら次の試練は小細工無しの実戦だけにしてやるのじゃ」


「久しぶりに試練をするのですね?」


「ほうか! 2人目の生還者となるか見物だのう」


「あまり舐めすぎるのも良くないと思いますよ。彼は次の試練がであるあなただと気付いていましたしね」


「気付いたところで実力が無ければ意味が無いがのう」


「その通りなのじゃ!」


「ですが白地の言うことも一理有りますよ」


「そんなことは知らん! 叩きのめしてやるのじゃ」


「ふぅ......こうなったら何を言っても、ですね」


「だな。あまり期待はできんが健闘を祈ろうかのう」


(ソラ......すみません。変なスイッチを入れてしまったようです)


「ガッハッハッハッ! 早く来るのじゃ! うちの試練に!!」


ーーーーーーーー

トッキオ 学校前


 ソラ達はナシヤ町で1泊したあと朝イチで出発し、昼過ぎにトッキオに到着していた。

 今は消費したアイテムの買い出し等を終え、学校へと向かっているところである。

 だがその足取りは重かった。


「はぁ......」


「どうしたですか、ソラ?」


「どうしたもこうしたもあるかよ......

 せっかく貯めたお金がもうすっからかんになっちまった......

 それもこれも、あの鍛冶屋のせいだ!」


「で、でもあれは仕方が――」


「そうだよ、仕方なかったよ......」


 ソラは白地を倒した時にも他の魔物と同じように素材を入手していた。しかしそれを武器に加工できる鍛冶師がこの町には1人しかおらず、頼めはしたがお金が足らず武器が出来上がるまでに稼いでこなければならなくなっていた。

 そしてその保険に持ち金と、


「だからって武器まで取られたらさすがにキツいわ......」


 そう、あの時壊れてしまい買い直したばかりの片手剣も渡してしまい、ソラは残った短刀か素手でお金を稼がなければならないのである。


「でもでも、今のレベルなら素手でもこの辺の魔物は倒せるですよ」


「分かってる。問題はそこじゃないんだよ......」


「?」


 フィンは本当に分からないようでますます困惑し始める。そんなフィンの前に回り込んで、


「このままだと......

 今日の晩飯と明日の朝御飯は無しだ」


 と衝撃の事実を告げた。


「へ~そうなので............え、ええええええ!!」


「な、困ったことになってるだろ?」


「ど、どどど、どうするですか!?」


「考え中......」


「そ、そんな......」


 うなだれるフィンを頭に乗せソラは学校へと歩みを進める。


 でも、実際どうするか......

 食堂が使えたらいいんだけどあれは見習いが旅立つまでの期間限定だって言ってたし......

 アカリさんにたかるか?......いやここはリュウさんに頼んでみるか。


 そして学校が目前へと迫った頃、校庭の方からかすかに笑い声が聞こえてきた。


「この声は......」


 ソラが声のした方を見ると職員室の窓越しに話す2人の人物が見えた。1人は思った通り、


「やっぱりアカリさんの笑い声か。もう1人は見たことないけど誰だろ......」


 その人物は金髪をミディアムの長さで揃えており、ワンピースを来ていることから女性であろうということしか分からなかった。

 ただし、肩に妖精がいることからソラと同じ境遇であることは間違いなかった。

 そして校門をくぐった時、こちらに気づいたようでアカリさんが手を振った。


「おーいフィン。アカリさんが手振ってるぞ」


 そう言われ、何かを思い付いたのかハッとしてアカリへと全速力で飛んで行くフィン。


「ア~~カ~~リ~~!!」


「わっ!......ととっ!」


 アカリは飛んできたフィンを抱き止めた。


「おかえり、フィンちゃん......どうしたの?」


「アカリ~、かくかくしかじかなのですよ~」


 フィンは涙目になりながら必死で現状――といってもご飯抜きになるかもしれないというだけだが――を説明した。

 その説明が終わった頃にちょうどソラがやってきた。


「なるほどね。私に任せなさい、フィンちゃん!」


「ほんとですか!」


「ええ!! 美味しいご飯ご馳走するわ」


「やっっったーーーな~のです~」


 フィンはさっきまでの落ち込みが嘘のように嬉しそうに飛び回り出した。


「よかっ――」

「ソラの分は無いわよ」


「............なんじゃいそれ!!!」


「アッハッハッハッハ!!」


 喜ぶフィン、落ち込むソラ、それを笑うアカリそしてそれらのやり取りを見ていた女性――先程までアカリと話していた――がクスクスと笑い出した。


「ん?あ、なんかすいません。お見苦しいものを......」


「NO problem」


 軽く頭を下げたソラに彼女は首を横に降りそう答えた。


「えっ......英語!?」


「You are Sora! As I heard it!」


「え......ええ......ちょ......」


 その後も畳み掛けるように英語で話しかけてくる彼女にソラは何も返せず頭がパンクしそうになっていた。


「その辺にしてあげたら?」


 その会話をアカリが遮る。


「アカリ、彼女は誰なのです?」


「彼女はレイラ、そしてパートナーのアル。ソラより1年前にここに来たの」


「外国人なのにですか!?」


「外国人じゃないですよ?」


「え......」


「私、日本人ですよ」


 ソラの疑問に対して答えを出したのはついさっきまで英語を喋っていたはずのレイラだった。

 ソラはパクパクと口を動かし何か言いたげにアカリを見るがアカリは肯定の笑みを浮かべる。

 そしてもう一度レイラの方を見ると、まるで「てへっ」と言わんばかりに少し舌を出し頭をコツンとする。


「ええええぇぇぇぇーーーー!!」


 戻ってきて早々懐かしの叫び声が学校中に響き渡るのであった。

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