第24話 第一の試練終了

 ソラは安堵と共にその場に倒れた。


「終わったぁぁぁぁ~~~」


 そこへフィンがやってくる。


「回復はいるですか?

 あと1回ぐらいは使えるですよ」


「いや、大丈夫。ありがとな」


「えへへ~」


 ソラに頭を撫でられ喜ぶフィン。

 ソラが体を起こすと白地の体が既に霧散し始めていた。


「まだ消えるなよ?質問に答える約束だ」


「......」


 立ち上がって近寄りさらに問い詰める。


「おい!!」


 しかし白地は答えること無く完全に霧散した。


「約束は守るんじゃねぇのかよ......」


「ちゃんと守るよ」


 ソラが悪態を付くとどこからか声が聞こえ、さらにーー


「うわっ!?」

「ひゃっ!?」


 白地が消えた場所から光が広がり、2人は思わず目を瞑る。再び開いたその時、辺りは一変していた。


「一体何が......」


「真っ白なのです......」


 先程まであった壊れた建物や道、というより町そのものが全て消え去り、扉が1つ存在するだけの真っ白い空間と成っていた。


「第一の試練クリアおめでとう」


 後ろから声をかけられ振り替えるとそこには、


「お前、誰だ?」


「フィンも知らないのですよ」


 雪のように白い短髪、和服で身を包んだハンサムな青年が微笑みを浮かべながらこちらを見ていた。


「これを見れば分かるだろ?」


 青年の後ろからゆらゆらと揺れる尻尾が顔を出し彼はそれを指差した。その尻尾は白と黒のしましまで......


「そのしっぽ......お前まさか、白地か?」


「ソラ、白地は大きい虎なのですよ。この人のわけがないですよ」


「私としてはこっちの姿でもいいんですよ、妖精さん?」


 彼は先程まで戦っていた虎の姿に成り、フィンに顔を近づけてそう言った。


「いえ、人間の姿で大丈夫なのです」


 冷や汗を大量に流しながらフィンが答えると、白地は青年の姿へと戻っていった。


「ふぅ」


 精神的に疲れたフィンはソラの頭に乗る。


「それで?

 さっきの言葉と現状を察するにクリア報酬の受け渡し的なイベントってことでいいのか?」


 白地が青年の姿に戻るのを待ってソラが問いかけた。


「ソラ、君は察しが良くて本当に助かるよ」


 やっぱりそうか......


「それじゃあまずはこれを」


 白地が白い水晶玉をソラに渡す。


「試練をクリアした証だよ」


 白い水晶か......結構綺麗だな。

 とりあえずしまうか、重要な物っぽいし。


「ブフッ!!」


 ソラが冒険者ブックを取り出すと同時に白地が吹き出した。


「おい......」


 ソラが白地の方を見ると顔を逸らすが笑い続けている。


「す、すまない......話には聞いていたが実際に見るとやっぱり......」


「よしそのまま笑ってろ。斬ってやる」


 ソラは冒険者ブックから新しい剣を取り出して斬りかかった。だがーー、


「笑ったのは謝るよ。でも今の君じゃ私には勝てないよ」


 白地は片手、それも指先だけでソラの剣を受け止めた。


「は!?......手加減してたってのか......」


「当然だろう。ここは第一、レベルもまだまだな駆け出しの君たちに本気で相手なんて出来るわけないじゃないか。

 そんなことしたら瞬殺だよ、しゅ、ん、さ、つ」


 正論なだけに反論できねぇ......


「ちなみに私は10分の1の力しか出してなかったからね。手加減というやつさ」


「勝ったのに勝った気がしねぇよ......」


「あ、そうそう消えた傷、あれも手加減だよ。たとえ他人の体でもダメージは全て本体が受けるってね。

 まぁ最終戦までにほとんど回復しちゃってたけど」


「もういいよ。それより報酬をください......」


 ソラはなかなかにショックだったのか項垂れていた。


「あはは......まぁ何はともあれ君は勝ったんだから元気出しなよ、な?」


「だったら教えるんじゃねぇよ......」


「ごめんごめん。それじゃあ報酬の続きだね。

 次はこれだよ」


 白地は服の中から3本の巻物を取り出した。


「これって確か......」


「魔法書なのですよ」


「その通り!

 でも、あげられるのは1人1つまで。まずはソラ、君からだ」


 赤、青、黄色......それ以外に違いは無いみたいだし悩むだけ無駄か......


「んじゃ赤で」


 ソラは赤い巻物を取り、中を確認する。


魔法・エンチャント(フレイム)

 武器に炎属性を付与する。

 魔力の量次第で炎を出現させることも可能。

 熟練度ボーナス

 持続時間の上昇


「いいじゃん」


 なかなか使い勝手も良さそうだし(フレイム)ってことはそれ以外にも有りそうだし。


「次はフィン、君だよ」


 白地が服の中から別の巻物を3本取り出した。因みにご丁寧に妖精用の大きさになっている。


「黄色がいいのです!」


 白地が黄色の巻物を差し出しフィンが受け取って中身を確認する。


魔法・マジックアップ

 対象の魔法の威力、効果を上昇させる。

 熟練度ボーナス

 効果、持続時間の上昇

 関連魔法の習得


「バフが来たのはありがたいけど今のところ使いどころがほとんどないな、これ」


 巻物を横から見ていたソラがそう言った。


「じゃあ役にたたないですか?」


「すぐにはってところだな。

 もしかしたらこの先俺が攻撃魔法覚えるかもしれないし、魔法使いが仲間になるかもしれないだろ?」


「なるほどなのです」


 それに熟練度で関連魔法が習得できるのが肝だな。パワーアップみたいなのが早めにきてくれるといいんだが......


「とりあえずは熟練度を上げないとな」


「頑張るですよ!」


 ソラに敬礼をするフィン。


「ふぉっふぉっふぉっ。まぁ頑張りたまえ」


「そこはソラも敬礼するですよ~!」


「ふぉっふぉっふぉっ~」


 ソラが架空の髭を摘まみながら偉そうに答えたことに反抗するもどこか楽しげな2人。

 白地は優しい笑顔でそれを見守っていた。


「ふふっ。そろそろ続きを始めてもいいかな?」


「あ......すいません、お願いします」


「すいませんなのです」


 揃って頭を下げる2人を見てまた少し笑ってから白地は話を続けた。


「最後の報酬は次の試練の場所だ。

 冒険者ブックのマップのページを開いてくれるかい?」


 ソラが冒険者ブックを開くと白地が地図の中の1点を指で押さえた。


「今度は南か......」


「そう。トッキオから南へ行ってさらに海を進むとピーカン島という火山島がある。この島の溶岩の洞窟というダンジョンの最奥に第2の試練の入り口がある」


「今度は直球で恐ろしい名前が出てきたな」


 溶岩かぁ......水か氷のエンチャントが欲しいところだな。ギルドで聞き込みでもしてみるか。


「ソラ!ソラ!」


「ん?」


「水着を買わなきゃなのですよ」


「......」

「......」


「そこかーーーい!

 珍しく考え込んどる思とったら水着のことかーーーい!」


「海に行くなら水着は絶対に必要なのですよ!」


「遊びで行くんじゃねぇんだぞ......」


 溶岩を何とかする方法を考えとるんかと思ったのに......


「あ~1ついいかい?」


「なんじゃい!!」


「海の中にもダンジョンはあるから持っておいて損はないと思うよ」


 白地からの情報にソラは言葉を失い、フィンは胸を張る。そしてーー


「......分かったよ、俺の負けだ。帰ったら買ってやるよ......」


「イエーーーイ!!」

ーーーーーーーー


「さて、報酬は以上だ」


「ありがとうございました」

「ありがとうなのですよ」


「準備ができたら後ろの扉から出るといいよ。

 惑わしの森の前に繋がっているから」


「最後に聞いていいか?」


「何かな?」


「最初の試練は西で白虎だった。だとしたら次の南はか?」


(彼はやっぱり......)


「それは自分で確かめて見るといい。

 何があるか分からないからこそ冒険は楽しいんだからね」


「それもそうか......」


 これ以上は聞き出せそうにないか......

 嘆息してソラは扉へと向かいドアノブに手をかけてこの試練のことを振り返る。


「白地!」 


 なんだかんだあったけどとりあえず、これだけは言っとかないと気がすまない。


「バーーーーーーーーカ!!」


「えーーー!?」


 呆気にとられる白地を尻目にソラはフィンと共に扉から出て行った。


「......ふっ......あっははははは!!

 何かと思ったら最後の最後まで......あはははは!

 本当に小物何だか大物何だか......」


(少し期待してみようかな......)


 白地は新たに扉を出現させ去っていき、それと同時に先程までの白い空間が消滅する。

ーーーーーー

惑わしの森 入り口付近


 何処からともなく扉が出現しそこからソラとフィンが出てくる。


「うわっ、まじで惑わしの森の前やん......」


「ソラ!手加減されたからってさっきのはひどいのですよ」


「いいんだよ。多分あいつも対して気にしてないだろうし」


「それでもですよ!」


「へいへい......ていうかさ......」


「どうしたですか?」


「めちゃくちゃさみぃ......」


 ソラ達が試練を受けている間に12月に入り季節は冬となり辺りには真っ白な雪が降り積もり始めていた。


「ソラ......それは口に出したら余計寒くなる奴なのですよ......」


「すまん......」




 第一の試練これにて終了

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