第20話 リベンジ!!

2日後 深夜


 ジャックの予告した2日後はあっという間にやってきた。


「さて、今日はいったいどこに現れるのやら......」


「以外とソラのところに現れたりする気がするですよ」


「ちょっとフィンさん、怖いこと言わないで下さいよ......」


「そうだぞフィン、それにな?今のは多分フラグになっちまうぞ」


「フラグって何ですか?」


「ん、まぁ簡単に言うとお決まりのパターンってことだな。

 例えば倒したと思ったときに「やったか!?」的なことを言うと間違いなく立ち上がってくるみたいな」


「じゃあ今回のは」


「ジャックがソラを直接狙ってくるというフラグなのですよ」


「なるほどそんなものがあるんですね」


「しかも嫌なパターンばっかりな」


「その通りに動いてしまった方は少し気まずいけどな」


 3人の会話に別の誰かが横から入ってきた。


「えっ?」


 振り向くとそこにはジャックが立っていた。


「うぉぉぉぉぉ!?」

「きゃぁぁぁぁ!?」

「わぁぁぁぁぁ!?」


 3人は驚き悲鳴を上げながら距離を取った。


「いや、そんなに驚かなくても......」


「アホか!夜中に急に後ろから現れたら誰でもビビるわ!」


「そうだ、そうだ!」


「その通りです!」


 ソラのツッコミに大きく同意する2人であった......


「そうか、それは悪かった」


 そう言いながらその手に爪を出現させ、腰を低くし構えを取った。


「悪いと思ってんならおとなしく捕まって貰えると助かるんだけど......」


 ソラはその手に剣を出して正眼の構えを取り、フィンは邪魔にならないように距離を取り、回復魔法の準備を始め、ルパートはフィンのとなりに待機した。


「それが有り得ないことなのは分かっているだろう」


「チッ!わぁってるよ......」


 ちょっと言ってみただけだっての。


「それじゃあ始めるか......」


「ああ......そうだな」


 その直後2人は同時に踏み切り一気に間合いを詰め、


「連撃剣2連・クロス!」

「連裂拳2連・クロス!」


 同時にスキルを放ったが相殺される。続けてソラが上段から切り下ろす。それを手の甲でずらしもう片方で顔を狙う。すんでの所で躱し、切上をする。しかし体を後ろにそらして躱されさらにバク転をして距離を取っていった。


「ふぅ......やっぱ強ぇな......」


 ソラの頬には一筋の切り傷がありそこから血が流れた。


「この間とは違うみたいだな」


 ジャックのフードにも切れ目が入っていた。


「当然だろ、特訓しまくったからな」


 2人は再び間合いを詰め、戦いを続けた。

ーーーーーーーー


「す......すごい......」


 離れたところでソラの戦いを見守っていたルパートは思わずそう呟いた。

 ソラ達が戦い始めて既に10分が経とうとしていた。


「あの......フィンさんは今どっちが優勢とか分かりますか?」


「全く分からないのです......」


「そうですよね......」

ーーーーーーーー

「スパイラルクロウ!!」


 両手を合わせ体を回転させながら飛び、さながら1本の槍のようにソラに向かっていくジャック。


「その技はさっきも見たぜ!」


 飛び上がった後は一直線で方向を変えられないだろうからライン上から外れれば......


「甘いな」


「ッ!?」


 ジャックはソラの手前でその手を開きその横腹を切り裂いた。


「くそっ......」


 切られた箇所を押さえながら膝をつくソラにフィンがヒールをかけていく。

 ーーこのままじゃジリ貧だ......ヒールはおそらく残り2回。対してモンスタースコープで判明したあいつの体力は残り半分......何か決定打が欲しいところだけどこいつに弱点があるのか?......


「このままだとまたお前の敗けだな」


 ジャックが攻撃をしながら話しかける。


「ふざけんなっ!負けてたまるかよ!」


 思考を止めるな!俺に出来ることを考えろ!奴に想定外の一手食らわせるんだ。

ーーーーーーーー

「今のが最後のヒールなのです......」


 魔力を使い果たしふらふらと下降しながらそう言ったフィンを受け止めるルパート。


「ということはもう回復は......」


「一応アイテムがあるのでまだ出来るですがジャックがそんな暇を与えてくれるかどうか......」


「そんな......」


 ルパートは笛を握りしめた。

ーーーーーーーー

数時間前


「えっ援軍呼ばないんですか!?」


「ああ。もし俺達が最初に遭遇したらだけどな」


「どうして!みんなで戦った方が......」


「ん~やっぱリベンジするなら前回同様一対一サシじゃないとな!」


 それに試練のことは言えないし......


「でも!」


「まぁ死にそうなら呼んでくれや」


「そんな......」

ーーーーーーーー

(ソラさんはああ言っていたけどやっぱり呼んだ方がいい......よね)


 ルパートは笛を咥え大きく息を吸い込み、吹こうとしたが、


「吹いちゃダメです!」


 それをフィンが止めた。


「なぜなんですか!このままじゃ......」


「ソラは負けないです!」


「でも実際に今かなり危険な......」


「絶対に負けないのです!!」


「でも!」


 ルパートは服の裾を固く握りしめ今にも泣き出しそうなのを必死で我慢しているフィンに見つめられそれ以上何も言えなかった。


 キィィィン!


「ーーッ!」


 大きく響いた金属音に驚きソラ達の方を向くと、壁際に追い込まれたソラが剣を弾かれたところだった。


「そんな!!」


 そしてジャックは大きく振りかぶりトドメの一撃を振り下ろした。


「ソラぁぁぁぁ!!」


「ぐ......あぁぁぁぁ!」


「えっ......」


 悲鳴を上げ後退ったのはの方だった。

ーーーーーーーー

キィィィン!


「今回もお前の負けだったな」


 ソラを壁際に追い込み剣を弾いたジャックがそう告げた。


「そう思うならやってみろよ......」


「そうだな......あばよ......」


 そしてジャックが大きく振りかぶりその爪を振り下ろした。


「ぐあぁぁぁぁ!」


 しかし切り裂かれたのはソラではなく振り下ろした腕の方だった。それも手の甲から肩口にかけて大きく傷つき、もう使い物にならないであろうことは誰の目から見ても明らかだった。


(くそっ、いったい何が起こった......奴の武器である剣は間違いなく弾いた......だったら何でこんなことに)


「なんか不意打ちみたいになって悪いな」


 痛みに呻き後退りしたジャックに追い討ちをかけるべく間合いを詰めたソラがそう呟いた。そしてその手には短刀ナイフが握られていた。


「俺もさっきまでこいつのこと忘れてたんだわ」


 ソラはそう言ってナイフをジャックの足に突き刺し機動力を削ぎ、


「歯ぁ喰いしばれよ!」


 連続で殴り付けた。


「おららららぁぁぁぁ!!」


 最後の一撃を受けた時、ジャックは反対側の壁まで飛ばされその衝撃で壁は崩れてしまった。

 ソラはジャックの体力が0になったのを確認し近づいた。


「まさかこの2日で本当に強くなってくるとはな」


「油断したなんて言い訳は聞かねぇからな」


「そんなことはしないさ。負けは負けだからな」


「......これで試練はクリアなのか?」


 これが試練であり、倒すべき敵がこのジャックであるならば必ずそちら側の者であると思っていたソラはそう尋ねた。


「どうだろうな......フッフッフ」


「何がおかしいんだよ、敗者ならおとなしく勝者の問いに答えろよ」


「心配しなくてもすぐに分かるさ......」


「なんだよそれ......」


 その直後ジャックが魔物を倒した時のように霧散し始めた。

 LEVELUP19→20

 ソラはレベルが上がったのを確認しフィン達がいる方へ向かおうとしたがあることに気付き足が止まった。


「は?!......これはいったい......」


「ソ~ラ~」

「ソラさ~ん」


 ソラが足を止めている間にフィン達の方がこちらへとやってきていた。


「おう回復ありがとな、フィン。助かった。ルパートも、最後まで笛吹かずにいてくれてサンキューな」


「いえ約束でしたし、フィンさんにも止められましたから」


 普段からあまり役に立てず誉められることの少ないルパートは少し照れながらそれを隠すように笑い、頭をかきながらそう答えた。


「ソラ、ソラ!」


「ん?」


 フィンはよほど嬉しかったのかハイタッチの構えをしており、ソラはそれに応えて喜びを分かち合った。


「......そうだ、先に縛っちゃいますね、ジャック」


「あ、それなんだけど何でこいつ消えてないの?」


 そう倒されたジャックはその身に纏っていたコートだけが霧散し体はその場に残っていた。


「何でも何も魔物じゃないんだから消えるわけ無いじゃないですか」


「あ......」


 そうか......倒すべき敵だから魔物だと思い込んでたけどそうじゃないこともあるのか。ていうか魔物は障壁があるから入ってこれないんだった......

 そんなことを考えている間にルパートが鞄からロープを取り出し、ジャックを縛ろうと近寄るが突然その動きが止まった。


「どうした、ルパート?」


「......ソラさん、本当にこの人がジャック何ですか......」


「あたりまえじゃん、お前らも見てただろ?」


「ですが......この人は警備隊の3番手、レックスさんですよ!」


「はぁ!?」

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